フリーランスの経費はどこまで認められる?独立1年目でも迷わず簡単に節税できる

フリーランスであれば、経費をうまく使って、なるべく税金を安くしたいですよね。

ところが、そんな思いとはうらはらに、「経費って、どこまで認められるの?」と頭を抱える人が多いのも事実です。もしかしたら、この記事を読んでいるあなたも、その1人かもしれません。

実は、経費の考え方は非常にシンプルで、一度覚えてしまえば一生ものです。

そこで今回は、フリーランスの強い味方である経費について、基本的な考え方から実践的な内容まで、分かりやすくお伝えします。

記事を読み終わるころには、経費や節税の知識が自然と身に付いていますよ。

フリーランスの経費は節税対策になる

フリーランスは、経費をうまく活用することで節税できます。なぜなら、所得税は売上に対してかかるのではなく、経費などを差し引いた所得に対してかかるためです。

同じ売上100万円でも、経費を全く活用しない人は100万円分の税金がかかりますが、経費を使えばその分税金が安くなります。

「経費を使う」
売上 100万円
経費 0円
→税金 100万円に対してかかる

「経費を使わない」
売上 100万円
経費 50円
→税金 50万円に対してかかる

経費を正しく活用することは、立派な節税対策です。

事業に関係する費用は経費にできる

経費は、物事を行うために必要となる費用という意味です。(Cambridge Dictionary 日本語-英語辞典より引用)

つまり、フリーランスにとって、事業を行う際に必要な費用は経費と言えます。例えば、得意先を接待するために支払った交際費、移動時の交通費、仕事で使うソフトを購入した際の消耗品費などです。

事業に関係する費用であれば、経費になります。

経費にできる代表的な項目

経費に対してさらにイメージが湧くように、代表的な項目を列挙します。

項目 概要 具体例
通信費 インターネットや電話などにかかる費用 Wi-Fi
携帯電話
サーバ使用料
ドメイン使用料
切手 など
広告宣伝費 事業を広めるためにかかる費用 インターネット広告
チラシ制作費 など
旅費交通費 仕事をするうえで発生する移動費 バス代
電車代 など
接待交際費 取引先や仕入先との食事・外出にかかる費用 食事代
お土産 など
消耗品費 日々の事業活動をする中で消耗していく安価な物品にかかる費用 文房具

いす など
減価償却費 高額で長期にわたって利用できる物品の購入にかかる費用 PC
仕事で利用する車 など
租税公課 事業にかかわる税金を払った費用 収入印紙
個人事業税 など
業務委託費 外注さんに業務を依頼した際に支払う費用 ホームページ制作費 など

次に、経費に関して押さえておきたい、2つのポイントを紹介します。

絶対に押さえておきたい「家事按分」

家事按分は、フリーランスが絶対に押さえておきたい経費の概念です。プライベートと仕事の両方にまたがる費用を切り分けて、仕事に関わる部分は経費にできる仕組みです。

例えば、毎月8万円の家賃を払っているフリーランスデザイナーのAさんがいたとします。
Aさんは自宅で仕事をしており、仕事部屋は家全体の25%を占めています。この場合、家賃8万円のうち、25%の2万円は仕事部屋のために払っているとみなされ経費にできます。

労力をかけずに経費を増やせるため、フリーランスは絶対に押さえておくべきです。

見逃しがちな「開業準備費用」

開業前にかかった費用も、経費として認められます。開業前であろうと、事業に関わる費用であることに変わりないためです。

例えば、名刺代、インターネット接続の工事費、パソコン代などが挙げられます。

経費として認めてもらうためにも、領収書や請求書は保存しておきましょう。

経費になるかはあなた次第

結局、経費になるかどうかは、あなた次第です。なぜなら、その費用が事業に関係しているかどうかは、当事者であるあなたしか知らないためです。

ただし、何もせずに経費として認められるわけではなく、ルールに則って申告する必要があります。

次章では、経費が認められるために必要な、5つのステップを解説します。

フリーランスの経費が認められるための5ステップ

フリーランスの経費が認められるためには、確定申告をする必要があります。この章では、確定申告の手順を5ステップで解説します。

確定申告について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
フリーランス1年生の確定申告の教科書「経費と控除」が最大のカギ

①領収書・レシート・請求書を保管する

初めに、領収書・レシート・請求書などの資料を保管します。これらは根拠資料と呼ばれ、確定申告をするうえで欠かせません。開業すると決めたその日から、根拠資料を保管する癖をつけると良いでしょう。

②帳簿をつける

①で集めた資料を根拠に、売上や支払いなど日々の取引を記録していきます。個人の家計簿のように、日々のお金の出入りを記録するイメージです。5ステップの中で最も労力がかかる作業ですが、会計ソフトを使うことで大幅に効率アップします。

買い切り型の弥生会計や、サブスクリプション型のfreee会計、Money Forwardクラウドなどがおすすめです。

③確定申告書類を作る

帳簿がつけ終わったら、いよいよ確定申告書の作成です。この時も、会計ソフトを使うことで簡単に書類が作れます。

④税務署に提出する

書類が完成したら、税務署に提出します。「税務署へ持参」「郵送」「e-Tax」などの提出方法があります。確定申告書を提出する際には、根拠資料として、控除証明書や源泉徴収票などを添える必要があります。

⑤期限内に納税する

期限内に納税すれば終了です。例年、所得税の納税は3月15日までとなっています。(令和2年分の確定申告は、コロナ禍の影響により4月15日まで延長)

なお、非常に稀なケースですが、フリーランスにも税務調査が入ることがあります。審査結果によっては、当初経費に入れていた費用が認められず、後から追加の納税を求められることもあります。

フリーランスの経費処理は他人に任せることもできる

経費処理に慣れていないフリーランスにとって、日々の取引を記録していく作業は想像以上に大変です。中には、「自分はこんなことをするためにフリーランスになったわけじゃない」と憂鬱になってしまう人もいるかもしれません。

そんな方は、帳簿づけの作業を第三者に依頼する記帳代行がおすすめです。

代表的な依頼先を3つ紹介します。

税理士に任せる

税理士に記帳代行を依頼するのは王道です。文字通り税金のプロであるため、正確な処理が期待できます。また、税理士の独占業務である「税務署類の作成(ここでは確定申告書の作成)」や「税務相談」も受けられます。

デメリットとしては、専門家に依頼することになるため費用が高くなりがちです。また、税理士との相性が合わないこともあります。

クラウドソーシングサービスを利用する

クラウドソーシングサービスを利用して、経費処理に詳しい人に記帳代行を依頼することもできます。税理士に依頼するよりも安価で対応してくれる可能性が高いです。

一方、自分に税金の知識がない分、本当に任せて良い人か判断しにくいことが懸念点です。

家族に手伝ってもらう

記帳代行を家族に手伝ってもらうことも可能です。例えば、夫がフリーランスで、妻がその経費処理を担うケースが考えられます。

経費処理に慣れていれば問題ありませんが、経験や知識が無いと苦労する可能性があります。

フリーランスの経費に関するよくある質問

ここからは、フリーランスの経費に関するよくある質問に回答していきます。

領収書やレシートがもらえない(紛失した)場合はどうすればいい?

領収書やレシートがもらえない(紛失した)場合は、利用明細による代用や、出金伝票を使う方法があります。出金伝票とは、現金で取引をした際に、支払ったことを記録しておくメモ書きのようなものです。

支払いをした客観的な証拠があれば、領収書が無くても大丈夫です。

関連書類はいつまで保存しておけばいい?

確定申告に関する書類一式は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から、7年間の保存義務があります。

例えば、2009年度の確定申告書は、2010年3月15日が提出期限となります。この場合、提出期限翌日の2010年3月16日から2017年3月15日までは保存義務が生じます。

経費に上限はある?

経費に上限はありません。事業に関係する費用であれば、申告できます。ただし、明らかに売上と経費のバランスがおかしい場合、フリーランスでも税務調査が入る可能性があります。

経費を差し引いて赤字になった場合はどうすればいい?

青色申告の申請を出していれば、損失分を翌期以降に繰り越すことができます。その場合、損失申告をする必要があります。

例えば、2021年度の事業年度で100万円の赤字が出たとします。翌年、100万円の黒字が出たとしても、前年の赤字分を差し引けるので所得税は0円になります。

また、損失は最大3年間繰り越せます。

経費の取引日はいつにすればいい?

取引日は、支払いをした日にするのが望ましいです。クレジットカード支払いの場合、支払い日と引き落し日が異なるため、注意が必要です。

例えば、2021年12月20日に商品を購入しクレジットカードで支払いをした場合、取引日は2021年12月20日とします。

節税を極めたいフリーランスにおすすめの対策3選

節税に意識が向き始めると、もっとできることはないか?と思うようになります。そこで、さらに節税を極めたいフリーランスに向けて、おすすめの対策を3つ紹介します。

①青色申告の申請

青色申告の申請は、フリーランスの王道の節税対策です。「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出することで、下記のようなお得な仕組みを活用できます。

最大65万円お得「青色申告特別控除」

青色申告を申請し、かつ確定申告書の提出をe-Taxで行うことにより、最大で65万円の控除を受けられます。

少しの手間で大きな効果が得られるため、確定申告書を提出する際は、青色申告の65万円控除一択と言っても過言ではありません。

家族へ支払った給与が対象になる「青色事業専従者給与」

家計の収入源が同じである配偶者、親族に支払った給与を所得から控除できます。つまり、家族に給与を払いつつ、支払う税金を安くできる仕組みです。

制度を利用するには、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

家族に事業を手伝ってもらっている場合、検討の余地があります。

経費にできる上限が増える「少額減価償却資産の特例」

青色申告を導入することで、パソコンや机などの資産を購入した際に、30万円未満まで一括で経費にできるようになります。なお、白色申告の場合は10万円未満までしか経費計上できません。

仮に25万円の備品を購入したら、青色申告なら満額の25万円が経費にできますが、白色申告なら99,999円までです。

赤字分を翌年の収入から差し引ける「繰越控除」

最終的に赤字が出た場合、青色申告の申請をしている事業者は、最大3年間は赤字を繰り越せます。そのため、翌期に利益が出た場合、相殺して税金を安く抑えられます。

例えば、2021年に50万円の赤字が出たとします。2022年は70万円の黒字が出たとすると、50万円は差し引かれるため、20万円分の税金に節税できます。

②控除の利用

節税を考えるうえで、もう1つカギになるのが「控除」です。控除とは、国が定めた14項目について、該当する金額を所得から差し引いて良いとされているものです。ただし、控除はフリーランスに限った内容ではなく、条件さえ満たせば誰でも当てはまります。

今回は、代表的な3つの控除を紹介します。

実質2,000円の負担で返礼品がもらえる
「ふるさと納税(寄附金控除)」

ふるさと納税(寄附金控除)は、実質2,000円の負担で返礼品がもらえる制度です。本来は居住地の自治体に払う住民税を、好きな自治体に支払うことで、返礼品が届きます。

例えば、ふるさと納税の上限が5万円の人が満額利用すると、48,000円分は本来支払うべき住民税の金額から引かれます。そのため、実質2,000円で、返礼品がもらえる分は得をすることになります。

最大12万円が控除できる「生命保険料控除」

生命保険、介護医療保険、個人年金保険のいずれかの契約をしていた場合、その金額の応じて最大12万円まで控除可能です。

保障を取りながら節税にもつながるため、忘れずに申請しておきましょう。

家族分も含めた医療費が差し引ける「医療費控除」

医療費控除は、家族分も含めて、年間の医療費が一定額を超えると使える控除です。特に、自身も含めて家族内で医療費を使うことが多い場合は重宝されます。

③法人化

所得が一定レベルを越えてくると、法人化を検討してみても良いでしょう。個人事業主として支払う税金よりも、法人として支払う税金の方が最終的な手残りが多くなる可能性があるからです。

一概にこの金額になったら法人に切り替えるべきというラインはないため、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

賢く節税し使えるお金を増やそう

フリーランスは、経費をうまく活用して節税ができます。

経費は、事業に関係する費用のことです。経費になる・ならないという明確な基準は無く、あなたが事業に関係する費用だと自信を持って言えるなら、それは経費です。

ただし、正式に経費として認められるためには、以下の5ステップが必要です。

  1. 領収書・レシート・請求書を保管する
  2. 帳簿をつける
  3. 確定申告書類を作る
  4. 税務署に提出する
  5. 期限内に納税する

また、経費処理に関しては、自分でやらずに誰かに頼む方法もあります。

  • 税理士に任せる
  • クラウドソーシングサービスを利用する
  • 家族に手伝ってもらう

お金のことを気にせず、事業だけに集中したい人は、誰かに頼むのも1つの手です。

いきなり完璧を目指すと大変ですので、まずはできそうなことから始めてみてくださいね。