フリーランスになった途端、急に高くなったと感じる健康保険の金額に驚いている方も多いのではないでしょうか。
実際、お金の知識がない状態でフリーランスになると、急に負担が重くなったと感じる方は多いものです。
しかし、もしかしたらその負担を軽減できる可能性があることをご存じでしたか?
今回は、フリーランスに関係する国民健康保険をテーマに、会社員との違いや、フリーランスが取れる選択肢、保険料を安くする方法などについて迫っていきます。
記事を読み終わるころには、具体的な対策も理解できているかと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも健康保険とは
まずは、健康保険とは何なのかについて説明します。
病気や事故に遭った際の医療費負担が軽減される制度
健康保険とは、日本の社会保険制度の一環で、病気や事故などに遭った際に本人の医療費負担が軽減される仕組みのことを指します。
例えば、医療機関を受診すると実質負担が3割で済むのも、健康保険の仕組みがあるからです。
会社員や個人事業主・フリーランスなどから徴収される社会保険料などが財源となり、いざ健康被害に遭った際は国から補てんをしてもらえます。
私たち日本人が充実した医療サービスを安価で受けられるのは、健康保険のおかげです。
日本は国民皆保険制度を取っている
日本は国民皆保険制度を取っており、全国民が何かしらの公的医療保険に加入しています。
そのため、いざ病気や事故に遭った際にも、高い水準の医療サービスが安価に受けられます。
このような仕組みを「社会保険方式」といい、ドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国でも同様の仕組みを取り入れている国があります。一方、アメリカのように全国民を対象とする医療制度を持たない国も存在します。
会社員とフリーランスの健康保険の違い
一言に健康保険と言っても、会社員とフリーランスでは加入する保険の種類が異なります。
会社員は「健康保険」、フリーランスは「国民健康保険」に入ることになります。両者の違いを比較してみると、以下の通りです。
働き方 |
会社員 |
フリーランス |
保険の種類 |
健康保険 |
国民健康保険 |
保険料の負担 |
会社が半分負担 (労使折半) |
自分で全額負担 |
加入方法 |
会社が手続き |
各市区町村にて自ら手続き |
扶養制度 |
あり (夫 or 妻や子どもは保険料が0円) |
なし (夫 or 妻や子どもの分も人数分保険料がかかる) |
フリーランスの場合、保険料が全額自己負担になる点や、扶養制度が使えない点に加えて、会社員が加入する健康保険にはついてくる「出産手当金」や「傷病手当金」などの制度がない点も大きな痛手となります。
各種手続きも考慮すると、会社員に比べてかなり負担が大きいことが分かります。
そのため、次章で紹介するような選択肢のうち、自分に適したものを選ぶことをおすすめします。
フリーランスが選べる健康保険の種類
フリーランスが加入できる健康保険にはいくつか種類があります。
この章では、4種類の選択肢について1つずつ紹介していきます。
国民健康保険
最もオーソドックスなのは、国民健康保険です。
各市区町村において自ら手続きをする必要があります。
国民健康保険の保険料は前年の所得に応じて決まるため、会社員からフリーランスになった場合、初年度の保険料が高くなる可能性があります。
元の会社の健康保険を任意継続
元の会社で加入していた健康保険を継続できる、任意継続という仕組みもあります。
保険料は労使折半から全額自己負担になるものの、国民健康保険と比べた時に保険料が安くなるケースもあります。
ただし、任意継続をする場合には、退職日の翌日から20日以内に所定の手続きをする必要があります。また、任意継続は期限が2年間までとなるため、その後は別の制度を利用しなくてはいけません。
国民健康保険組合への加入
同じ職種・業種の人が集まる、国民健康保険組合(以下、国保組合)に入るという選択肢もあります。国保組合は所得に限らず保険料が一定のため、国民健康保険に比べて保険料が安くなる可能性があります。
文芸美術国民健康保険組合や、日本デジタルライターズ協会など、様々な職種・業種の組合が存在します。
扶養に入る
フリーランスとしての稼ぎが少ないうちは、家族や配偶者の「健康保険」の扶養に入れてもらうのも1つの手です。扶養に入れれば保険料は0円で済むため、最もお得です。
ただし、扶養に入るためには、
- 年収130万円未満、かつ扶養にいれてくれる人の年収の2分の1未満であること
- 被保険者が三親等以内
という条件があります。
また、フリーランスとして生計を立てていくことを決断した以上、いつまでも扶養に甘んじていては本末転倒です。元々、扶養の範囲内で働くつもりであった場合を除けば、あくまでも一次的な措置として考えるのが健全と言えます。
フリーランスが健康保険を安くする方法
フリーランスとして働くうえで、国民健康保険の負担はなるべく減らしたいですよね?
そんな方のために、健康保険を安くする方法を5つ紹介します。
前提として、国民健康保険は同一世帯内の加入者の所得合計に対して、市区町村ごとに定められている保険料率をかけることで計算されます。簡単な式にすると、以下の通りです。
所得(収入-支出)×保険料率
※実際の計算式はお住まいの市区町村のホームページでお調べください
上記を踏まえて、保険料を安くする方法を説明します。
経費をきちんと計上する
経費を増やすことで所得金額を減らせるため、結果的に保険料も安くなります。
お客様との接待で会食した際の交際費や、移動に使った旅費交通費、あるいは自宅で仕事をしている方であれば家賃や水道光熱費の一部を経費にできる家事按分も適用可能です。
経費を活用することで所得税や住民税も減らせるため、まさに一石三鳥の対策です。
控除を忘れない
フリーランスが支払った社会保険料は、確定申告で届け出ることで全額控除になります。
一度は保険料の支払いとしてお金が出ていったとしても、その後に支払う税金が安くなるため、必ず届け出を出しておきたいものです。
なお、フリーランスの確定申告については、こちらの記事で詳しく解説しています。
保険料が安い自治体に引っ越す
自治体によって保険料率は異なるため、保険料が相対的に安い自治体に引っ越すのも1つの手です。
独り身でしたらすぐに実行できますが、家族がいる場合は家庭内でよくよく話し合ったうえで実行されることをおすすめします。
軽減・減免制度を利用する
全員が使える方法ではありませんが、保険料の軽減・減免制度も選択肢の1つとして挙げられます。特定の理由で収入が減少してしまい、保険料の支払いが困難とみなされた場合、保険料の負担を軽減もしくは支払いを免除されることがあります。
詳しくは、お住まいの市区町村の制度を確認してみてください。
事業を法人化する
法人化して保険料を安くすることもできます。
会社を設立すると健康保険への加入が義務付けられるため、会社から給料を受け取る形にすることで、会社員と同じ健康保険の扱いにすることができます。
また国民健康保険は前年の所得から保険料を算出しますが、健康保険の場合は毎月の給与がベースとなるため、月々の給与額を低く設定することでも保険料の支払いを削減できます。
一方で、法人化すれば法人税がかかり、会社負担分の保険料の支払いも発生します。このように別の費用が発生するケースがあるので、本当に得かどうかはあらゆる要素を複合的に見て判断する必要があります。法人化するとなれば税理士に相談するなど、専門家の力を借りるのがおすすめです。
フリーランスに民間の保険は必要?
健康保険と合わせてフリーランスが検討するべきなのが、民間の保険に入るか否かです。フリーランスは会社員のように保障が手厚くないため、いざという時の備えは自分で対策を講じておく必要があります。
その中でも、特に影響が大きい2つの保険について紹介します。
賠償責任保険
賠償責任保険とは、偶発的な事故などによって発生した、第三者に対する法律上の賠償責任の負担に対して、損害の一部または全部を補てんするための保険です。
例えば、業務上に誤って先方の所有する精密機器を破損してしまった場合など、個人では責任を負いきれないような多額の賠償責任が発生するリスクに対してかけておくものです。
フリーランスの場合、会社員と違って責任も全て自分で負わなくてはいけませんが、財務的な余裕は当然企業に比べて無い場合が大半です。万が一に備えて保険をかけておくことは、適切なリスクヘッジと言えるでしょう。
所得補償保険
所得補償保険は、病気やケガで働けなくなった際に収入が減少することに備える保険です。
フリーランスの場合、会社員が加入する健康保険にはついてくる傷病手当金なども受け取れません。そのため、収入がいきなりゼロになってしまう事態も想定できるため、最悪の場合を考えて備える必要があります。
とりわけお子さんがいる場合など、影響が大きい方はしっかりと検討する余地があります。不要な保険に入る必要はありませんが、キチンとリスクを考えたうえで決めることが大切です。
お金に強いフリーランスは自分も家族も守れる
今回は、病気や事故などに遭った際に本人の医療費負担が軽減される、健康保険について説明してきました。
フリーランスは会社員が加入する健康保険とは違い、個々人の状況に応じて、次のいずれかの方法を選択できます。
- 国民健康保険
- 元の会社の健康保険を任意継続
- 国民健康保険組合への加入
- 扶養に入る
また、保険料を安くする方法として、5つの手段を紹介しました。
- 経費を増やす
- 控除を増やす
- 保険料が安い自治体に引っ越す
- 軽減・減免制度を利用する
- 事業を法人化する
これらの選択肢の中でどれを選べば良いか分からなくなった場合は、社労士や税理士など、各専門家にアドバイスを仰ぐのも良いでしょう。
フリーランスは、何でも自分で決められる分、責任も会社員の比ではない重さです。とは言え、キチンと知識をつけ適切な処理さえ行えば、怖いものはありません。
お金に強いフリーランスになれば自分も家族も守れますので、ぜひこれを気に、健康保険に興味を持っていただけたら幸いです。