経営破綻とは?倒産との違いや手続きの内容について解説

経済状況が大きく変わる時、「経営破綻」という言葉をよく耳にします。

「経営破綻」とは一体どういう意味なのでしょうか。何となく「倒産」と同じ意味だと思っている人は多いと思いますが、その理解で間違いないのでしょうか。

この記事では、経営破綻の意味や実際の手続きについて解説します。

目次

経営破綻とは

実は「経営破綻」とは、法律用語ではなく、よって明確な定義がある言葉ではありません。

経営が行き詰まり何らかの手だてが必要な状態であることは間違いないのですが、必ずしも会社がなくなるわけではありません。むしろそのような状態に陥り、再建が必要になった企業を指す言葉として、マスコミが使い始めた言葉なのです。

これまで「経営破綻した」と報じられた企業としては日本航空やりそな銀行などが有名ですが、どちらも経営破綻した後に公的資金の注入を受けるなどして再建しています。

倒産と経営破綻はどう違うのか

「倒産」も、一般的に会社が潰れることと認識されていますが、こちらも明確な法律用語ではありません。

ただし倒産については民間信用調査団体(帝国データバンク)が以下の6つの基準をもって倒産としているので、経営破綻より明確な判断が可能です。

銀行取引停止処分を受ける

銀行取引停止処分とは、「不渡り処分」や「取引停止処分」とも呼ばれます。
同一の手形交換所管内において6カ月以内に2回、手形や小切手の不渡りを出すと、2年間の取引が停止されることで、中小企業の場合には倒産に至るケースが多いです。

代表が倒産を認めて内整理を行う

企業の代表が倒産を認め、法的な手続きでなく債権者と交渉して事業を整理するケースです。「任意整理」や「私的整理」などとも呼ばれます。

会社更生法を裁判所へ申請

会社更生法は経営困難に陥った「株式会社」について「事業の更生を目的」として更生手続を行うための規定です。

会社更生手続きにおいては、裁判所の選任した更生管財人の主導で、会社債権者等の利害関係者の多数の同意の下に更生計画を策定し、これを遂行することで会社の事業の再建を図ります。

無担保債権者のみならず担保権者や株主の権利をも制約できる強力な手続きですが、株式は全て無価値になり、その代償として旧経営陣は退陣することになります。

これは日本航空が再建のために取った方法です。

民事再生法を裁判所へ提出

民事再生法は、経済的に窮境にある債務者が裁判所によって再生計画を認可してもらうための手続です。

手続を利用できる債務者の範囲について法律上の制限がないため、株式会社だけでなくその他の法人や個人も利用可能です。

裁判所の監督下で再生のための手続きが進められ、債権者の同意を得られれば債務を大幅に減らすことが可能である。

また会社更生法との違いとしては、経営陣の退陣が必須ではないという点があります。

アメリカで欠陥エアバッグのリコールで経営破綻したタカタはこの方法を選択しました。

破産を裁判所へ申請

破産とは、負債と資産を清算する手続きです。
債務超過や支払不能状態となった会社が、手持ち資産によって負債を可能な限り支払い清算を行います。

民事再生と破産の最大の違いは、その目的です。民事再生では「会社を残すこと」を目的としますが、破産の場合会社は「消滅」します。

特別清算を裁判所へと申請

特別清算は破産と目的は同じなのですが、「破産」ではなく「清算」と呼ばれるため倒産のイメージが薄いとされ、また破産より簡易・迅速に手続きが行われるというメリットがあります。

実際にはこれらの動きと合わせて、マスコミによって「経営破綻」と報道されことが多いです。
「〇〇社が東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請して事実上経営破綻しました、などの報道を聞いたことがあるのではないでしょうか。

過去に経営破綻した有名企業

日本航空

日本航空は、2008年のリーマンショックの影響を受けて経営破綻しました。

2010年1月に会社更生法の適用を申請し経営の建て直しが進められ、更生計画に基づいて、金融機関による5,215億円の債権放棄、支援機構からの3,500億円の公的資金の注入を受けました。

京セラ創業者の稲盛和夫氏が会長に就任し、個別の路線における収支の把握を徹底するなどして、幹部を中心に経営感覚の向上を図ったとされます。

また希望退職が数度にわたって募集されるなど大幅なリストラも行われ、残った社員の給与水準も切り下げました。

これらの対応によって日本航空の業績は回復し、2012年には再上場を果たしました。

りそな銀行

りそな銀行はかつて経営破綻の危機に瀕したために、政府から総額2兆円もの公的資金の注入を受けました。

当時の頭取らが退任するなど経営責任は明確にしたものの、株式の上場は維持し株主責任を問うことはありませんでした。

公的資金の投入後には赤字に陥ることなく、2015年6月には借り入れた公的資金をすべて繰り上げ完済しました。

1998年に破綻した旧日本長期信用銀行や旧日本債券信用銀行などでは、10兆円を超す国民負担が発生したことを考えると、予備的に公的資金を投入したことで結果的に国民の負担を軽減し、市場への影響も抑えられたモデルともなりました。

経営破綻の実態を理解しましょう

経営破綻という言葉はテレビなどのマスコミでよく耳にしますが、実際の手続きは1つではありません。

その後の会社の進む方向も複数あることは、ビジネスパーソンとして認識しておきましょう。

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