パート・アルバイトの違いとは? 社会保険・有給休暇からリモートワーク求人まで解説
「パートとアルバイト…何が違うのだろう」と疑問に思ったことはありませんか?
結論から言うと、パートとアルバイトは呼び方が違うだけで、法的な区別はまったくありません。
それにもかかわらず、【パート急募】や【アルバイト募集】とだけ書かれてある求人広告を目にしますよね。
これは一体、なぜなのでしょうか。
法的な区別はなくても、パートとアルバイトで何か違いはあるのでしょうか。また、社会保険や労働時間などに差があるのでしょうか。
この記事では、こうした疑問にお答えするともに、パートやアルバイトの社会保険や、有給休暇など待遇面について解説していきます。
目次
パートとアルバイト、法律上はまったく同じ
パートは、パートタイム(part time )の略で、短時間労働をする人という意味です。
一方、アルバイトはドイツ語で労働・仕事を意味する「Arbeit」が語源で、明治時代の学生が、隠語として友人たちとの会話で使い出したのがきっかけと言われています。
そして、先述したとおりパートとアルバイトは法的な区別はありません。
ではなぜ、求人広告で2種類の表記がされているのかというと、「パート」「アルバイト」という言葉が、それぞれ異なるイメージで、すでに世間に広く認知されてしまっているからです。
たとえば、パートは(既婚)女性がするもので、アルバイトは学生やフリーターがするものというイメージがなんとなくありますよね。
つまり、求人広告を出す立場としては、パート・アルバイトが法律上は同じであっても、言葉のイメージを利用して使い分けたほうが、よりターゲットに対して、アプローチしやすいという事情があるのです。
パートタイム・有期雇用労働法では「パートタイム労働者」として一本化されている
さきほど、パートとアルバイトには法的な区別はないことをお伝えしましたが、その根拠となる法律が「パートタイム・有期雇用労働法」です。
2018年、第4次安倍内閣の「働き方改革」の一貫として成立したのがこの法律で、2020年の4月から(中小企業は2021年の4月から)スタートしています。
この「パートタイム・有期雇用労働法」においては、正社員と比べて所定の労働時間が短い労働者はすべて「パートタイム労働者として一本化」されています。
また、パートタイム・有期雇用労働法では、パートやアルバイトをはじめとした非正規雇用に関する社会保険や労働時間などに関することが、くわしく定められています。
パート・アルバイトどちらの求人に応募してもOK
ここまでお読みいただいた方なら、「パートとアルバイトは呼び方が違うだけ」ということがおわかりいただけたと思います。
求人に応募するときも、基本的には自身の「主婦・学生・フリーター」といった属性を気にせずに、求人に応募をすることができます。
とはいえ、当然のことながらミスマッチを防ぐためにも、求人内容をしっかりみる必要があります。では、以下の求人広告を見てみましょう。
【アルバイト募集】時給1300円〜 ※ 18:00 〜 21:00ラストまで働ける方、優遇 |
もしあなたが、小さな子供のいる既婚女性であり、この求人が気になったとします。
まず、このケースでは、求人会社が学生やフリーターを積極採用したいために、「アルバイト」という言葉をあえて使っている可能性があります。
なぜなら、「アルバイト = 学生・フリーター」という世間のイメージがあるからです。
このように、求人会社が想定しているターゲットとズレがありそうだと感じた場合は、事前に直接電話やメールで問い合わせておくと、ミスマッチが防げるので安心ですよ。
問題なく働けるのであれば、求められている属性とのズレを認識していることを伝えた上で、アピールすれば問題ないでしょう。
このように、求人広告の内容を見て、求められる属性と自分の属性さえ意識しておけば、パート・アルバイトどちらの求人に応募するときに、とるべき対応がスムーズになります。
パート・アルバイトでも有給休暇・産休・賞与はもらえるのか?
パートやアルバイトの求人に応募するときに、気になるのがパートとアルバイトの違いだけでなく、「有給休暇・産休・賞与」などの待遇面です。
しかし、労働時間・休日・給与面は書いてあっても、それ以外は求人内容に書かれていないことが多いですよね。
では、ここから以下のことについて、解説していきます。
- 給休暇や産休の有無
- 賞与の有無
- 退職金の有無
有給休暇は一定の条件をクリアすればもらえる
「有給休暇があるのは知っているけど、実際はとりづらいし…」
このように思われている方が多いかもしれません。しかし、上記にてお伝えした「働き方改革」によって、以前よりも有給休暇がとりやすくなってきています。
なぜなら、従業員に対して有給休暇を取得させない企業に対しては、罰金などのペナルティが発生するからです。
そのため、現在、有給休暇が取りづらい状況であっても、知識としておさえておくといいでしょう。
有給休暇の取得は、パートやアルバイトであっても一定の条件をクリアすればできることになっています。
一定の条件とは、「6ヵ月以上継続して働いていること」と、「契約上の全労働日の8割以上働いていること」です。
以下に、6ヵ月後に取得できる有給休暇の日数をまとめたので、ぜひご参考ください。
週3日勤務の場合、6ヵ月働けば5日の有給休暇が取得できます。また,週1日勤務であっても1日取得できます。
週の労働日数 |
半年後に取得できる有給日数 |
1日 |
1日 |
2日 |
3日 |
3日 |
5日 |
4日 |
7日 |
産休は申請さえすれば取得可能
産休とは、産前・産後休業のことで、パート・アルバイトであっても取得できます。
産前休業は、出産予定日の6週間前から(双子以上なら14週間前から)請求することができます。通常、産後休業もこのとき、同じタイミングで申請します。
申請をするにあたり、特に要件は必要ありません。
もし、勤務先の社会保険に加入している場合は、パート・アルバイトであっても、休んだ期間を対象として「出産手当金」が支給されます。
くわしくはこちらを御覧ください。
賞与をもらえるかは会社による
パート・アルバイトとして新しく働き始めた勤務先で、気になるのが賞与(ボーナス)の有無です。
しかし、基本的には、パートやアルバイトに賞与は支給されないと思っていたほうがいいでしょう。
「パート・アルバイトであるにもかかわらず、勤務時間、勤務内容などが正社員とほぼ同じ」という例外をのぞいては、会社に支給の義務が発生しないからです。
ただし、会社によっては、寸志などの形で手当が出る場合があります。
パートタイム・有期雇用労働法では、事業主がパートを雇い入れた際に、賞与の有無を文書の交付等により明示しなければならないとされています。
もし現在、パート・アルバイトとして働いている場合は、会社の就業規則をチェックしてみてくださいね。
退職金はもらえないことが多い
退職金(退職手当)は、賞与同様、パート・アルバイトに対して支給されないケースがほとんどです。
しかし、一部の会社では、「中小企業退職金共済」などを利用して、パート・アルバイトに対する退職金制度を設けていることもあります。
こちらも、賞与同様に、事業主がパートを雇い入れた際に、退職金(退職手当)の有無を文書の交付等により明示しなければならないとされています。
気になったことは、面接時に確認をするのがベスト
ここまで、パート・アルバイトの「有給休暇、産休、賞与、退職金」について解説してきました。
会社によっても、これらが「支給されるのか」「支給される場合はどのように支給されるのか」といった点はバラバラなので、やはり面接時に確認しておくと安心です。
面接時に確認できなかったとしても、「パートタイム・有期雇用労働法」(中小企業は2021年4月より施行)では、事業主はパートタイム労働者を雇い入れたときは、以下のことを、文書の交付等により知らせないといけないとなっています。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
面接時はなかなか尋ねにくいものですが、のちのトラブルを避けるためにも、気になったことがあれば、その時点で確認しておくのがベストです。
パート・アルバイトのメリット・デメリット
ここまで、お読みになった方の中には、これからパート・アルバイトとして働く予定の方もいるかもしれません。
パート・アルバイトで働く前に、そのメリットやデメリットについて、ここでおさらいをしてみましょう。
メリットは好きな時間に働けること
パート・アルバイトのメリットは空き時間を利用して、好きな時間に働けるということです。
午前中に子供の面倒を見て、午後から働いたり、資格取得のための勉強をしたりすることが可能です。学生であっても、授業の空き時間に働いたりすることができます。
また、正社員であれば重要な責任をともなう仕事が多いですが、パート・アルバイトであれば重い責任を負わされない仕事が多いのが特徴です。
とくに、金額をたくさん稼ぐことより、自分の時間を大事にしたい人にとっては、空き時間を使って働けるので、パート・アルバイトのメリットを最大限に享受することができます。
デメリットは、スキルや収入が伸び悩むこと
パート・アルバイトの最大のデメリットは、スキルや収入が伸び悩むことです。
もしかしたら「仕事を真面目にしていれば、スキルを伸ばせるし収入も増やせる」と思われたかもしれません。
しかし残念ながら、ここに大きな落とし穴があります。それは「自分の収入につながるスキルとそうでないスキルがある」ということです。
収入を増やすのに一番影響するスキルとは、会社の売上を左右するようなスキルです。
具体的には、売上にかかわる戦略立案やマネジメント業務になります。このようなスキルを持っていれば、会社からの評価が高くなります。
しかし、パート・アルバイトでは、このような業務に携わることはできません。そのため、早い段階でスキルや収入が頭打ちになりやすいのです。
その結果「スキルが伸びない → 収入が上がらない」という流れに巻き込まれやすくなります。
もし、収入を増やしたいのであれば、パート・アルバイトをするにしても「この仕事で得られるスキルは何なのか?」「 それは収入につながるスキルか?」という視点を持つ必要があります。
住民税や税金が発生するラインを知っておく
住民税や税金が発生するラインを知っておきましょう。なぜならこれを知らないと、働いた分と手取りの間にギャップが生まれてしまうからです。
概ね、収入が以下の金額を超えるごとに、給与からの控除、支払う税金などが増えます。
- 93万〜100万円で住民税が発生する(※各自治体でことなる)
- 103万円で所得税が発生する
- 106万円で社会保険料が発生する
ただし、所得税に関しては、1年で金額が収まっていても、月の金額が88,000円を超えてしまうと所得税が源泉徴収されます。
その場合は、年末調整か確定申告で手続きすると、源泉徴収された全額が戻ってきますが、年収で103万円を超えた場合は、所得税の分が引かれてしまうため気をつけましょう。
詳しいことは、勤務先に確認してくださいね。
参考:源泉徴収とは何? バイト代から引かれた所得税が戻ってくる手続きは
リモートワークが可能なパート・アルバイト求人もある
最近はコロナ禍により、リモートワークが可能なパート・アルバイトの求人が増えてきました。
一昔前であれば、在宅でやる仕事といえば内職が主流でした。しかし、現在ではパソコンさえあればできる、内職以外の在宅でのリモートワーク案件が増えています。
リモートワークののメリット・デメリット
リモートワークのパート・アルバイトのメリットは、なんといっても在宅で仕事ができることでしょう。
とくに小さい子供がいる女性の場合、子供をそばで見られるのが大きなメリットです。
デメリットとしては、最低限のパソコンのスキルが要求されることです。
職場とのやりとりは基本的には、パソコン上で「チャット」や「zoom」などのツールを使って行われます。
そのため、まったくパソコンもいじったことがないような人だと、リモートワークに慣れるのには、少し時間がかかるでしょう。
リモートワークには以下のような仕事があります。気になる人はぜひチェックしてみてくださいね。
書類作成
企業に指定された書類を作成する仕事です。ワードやエクセル、パワーポイントといったオフィス系のソフトの扱いは必須となります。
また、書類を効率よく作成するためには、ある程度のタイピングなどのスキルがあったほうがいいでしょう。
書類だけでなく、図面資料などを作成する場合には、CADのような専門系ソフトの使用スキルを求められることもあります。
プログラマー
プログラミングのスキルがある人が対象になります。市場価値の高いスキルの1つなので、在宅であっても、高収入の案件が期待できます。
高収入の案件は、それなりのスキルが要求されます。自分がどんなスキルを持っているのかしっかりポートフォリオを作成してアピールするといいでしょう。
短時間で働くパートというよりは、長めの作業時間が要求されることも想定しておきましょう。
求人用のサイトもいくつかあるので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
テレアポ
電話をしてアポイントをとる仕事です。企業から渡されたリストを元に、トークのマニュアルに沿ってアポイントをとっていきます。
一般的なパート・アルバイトと比べて時給も高めになることが多いようですが、1日に100件近い電話をすることもあるので、人と話したりすることが好きな人には向いています。
ダブルワークでパート・アルバイトをやったときの確定申告は?
パート・アルバイトをしている人の中には、スキマ時間を使って、かけもちでパートやアルバイトの仕事をしている人もいます。
では、ダブルワークの場合、年末調整や確定申告はどうすればいいのでしょうか。
結論から述べると、以下のようになります。
- 確定申告は必要
- 年末調整は、収入の多かったほうの勤務先のみ
会社が個人に代わって確定申告を行ってくれるのが年末調整ですが、ダブルワークの場合は、年末調整を収入の多かったほうの1社で行う必要があります。
そして、年末調整を行わなかった方の勤務先を含め、すべての収入について、改めて確定申告を行います。
確定申告をしないと、所得税法の違反でペナルティを受ける可能性があるだけでなく、源泉徴収された所得税の還付を受け取ることができないので注意してくださいね。
まとめ
パートとアルバイトは、呼びかたが違うだけで、法的にはまったく同じです。
したがって、主婦がアルバイトの求人に応募したり、学生がパートの求人に応募したりしても問題ありません。
ただし、パート・アルバイトの求人内容を見て「どのような属性の人をターゲットにしているのか」を確認しておくと応募からの流れがスムーズになります。
また、2018年の「働き方改革」により、パートやアルバイトに対する福利厚生(有給休暇や育児休暇など)の意識改革が、以前と比べて前進しています。
パート・アルバイトの一番のメリットは、好きな時間に働けることです。空き時間を有効活用して働けることや、学生が社会勉強できるなどの有意義な面があります。
その一方で、早い段階でスキルや収入が頭打ちになったり、伸び悩んだりするというデメリットがあります。
その理由としては、戦略立案やマネジメント業務などの付加価値の高いスキルを身につけることができない点が挙げられます。
もしパート・アルバイトで長期的に、収入やスキルアップにつなげていきたい場合は「この仕事で得られるスキルは何なのか?」「 それは収入につながるスキルか?」という視点を持つといいでしょう。