就業規則とは?就職・転職の時に知っておきたい基礎知識
就職や転職をする時、新しい会社のルールはしっかりと理解しておきたいですよね。
一般的に会社のルールを定めるものとして「就業規則」があります。
働いていても就業規則を頻繁に目にすることはないのですが、内容を理解しておかないと業務中や退職時に思わぬ不利益を被ったり、会社とトラブルになってしまったりすることもあります。
今回は、就職転職の際に注意したい就業規則の基礎知識について解説します。
目次
就業規則は会社の基本ルール。でも「無い」会社もある?
就業規則は、会社とそこで働く労働者お互いの守るべき基本ルールを定めたものです。
定められる内容としては、毎日の労働時間や休日がどれほどあるのか、給与の規定、退職時の規定など、雇用契約における重要な内容が含まれ、会社と労働者双方にとって非常に影響が大きいものです。
どんな会社にもこのようなルールはあるので就業規則もどの会社にもあるはずと思いがちですが、就業規則がない会社もあります。
就業規則の作成が義務付けられるのは、会社に「労働者が常時10名以上いる場合」とされるからです。よって、労働者の数が常時10名に満たない場合には就業規則という形で作成する義務はありません。
ただしこの「労働者10人」は正社員に限らず、パートやアルバイト、契約社員や嘱託社員、出向社員などもカウントされます。つまり、常にいるのは正社員1人だけで、他のスタッフはアルバイトで運営しているような事業所でも就業規則は必要になります。
また実際には、労働者数の規定では就業規則の作成が義務ではない事業所でも、80%以上が就業規則を作成しているようです。
事業所内でのルールを明文化して共有することは、法律の規定という以外に、業務の効率化やトラブルの未然防止という効果もあります。
就業規則は労働監督署に届け出が必要
就業規則は社内で作成するだけでなく、行政官庁に届け出ることが労働基準法で定められています。
作成の手順としては、会社が就業規則を作成した後に、労働者の代表から意見聴取を行ったうえで、労働基準監督署に届け出ます。この届け出をしない場合、30万円以下の罰金となる可能性があります。
この時、1点注意があります。
就業規則に必要なのは「届出」であり、行政官庁が内容について厳密に審査をして「承認するものではない」ということです。
もちろんあからさまな法令違反については指摘される可能性がありますが、おおむね問題ないと判断されたら受理されるので、届出が済んでいる就業規則でも内容が法令に違反している可能性はあります。
就業規則を見る方法
就業規則は労働基準法106条で、
「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること、その他の厚生労働省令で定める方法によって、労働者に周知させなければならない」という決まりがあります。
以前は入社時に紙で配布されることもありましたが、現在主流なのは労働者がアクセスできるパソコンの共有フォルダに保管する方法です。つまり、形はどうあれ労働者がいつでも見られる状態になっていれば問題ありません。
もし自分の働く会社の就業規則の場所を知らないのであれば、一度確認してみましょう。
法律に違反する就業規則の内容は無効
一般的にブラック企業とされる会社の多くは、残業代の未払い、休日を与えない、経費の負担を労働者に強いるというような形で法令違反をしています。
この場合、監督庁に提出している就業規則と実態が離れている、または就業規則自体が法律に違反している可能性があります。
労働基準法に違反する内容が就業規則に書かれていたら、労働者は就業規則に従わなければいけないのでしょうか。
そうではありません。先ほど言ったように、就業規則は労働基準監督署に届け出ているからといって絶対に正しいわけではないからです。
就業規則に問題があった場合、労働基準監督署長は職権で労働基準法に違反している就業規則を変更させることができます。
例えば、就業規則に「同月に2回遅刻したら、1日欠勤扱いとして給与を減額する」という規定があったとします。
しかしこの規定は、労働基準法の「賃金の全額払い」規定に違反していますので、労働者は遅刻をしたとしても実際の勤務時間に応じた賃金を受け取ることができるのです。
就業規則でチェックすべき3つの項目
就業規則には多くの項目が規定されていますので、文章が多くどの項目を見ればいいのかわからなくなってしまうでしょう。
ここでは日常の就業に関連する、重要な項目について解説します。
労働時間と休日の規定
毎日の労働時間や休日の規定は、もっとも基本的な項目です。以下のポイントを確認しましょう。
- 毎日の始業・終業・休憩の時間
- 週の労働時間が法定労働時間40時間内に収まっているか
- 年次有給休暇の日数や取得方法を確認する
- 産休、育児・介護休暇、子の看護休暇、生理休暇などの規定があるか
- 慶弔休暇、病気休暇、裁判員休暇など特別休暇の規定があるか
- 振替休日のルールや取得方法
残業の可能性がある場合は、時間外労働についての協定(36協定)を定めた項目が別にあるはずなので、そちらも確認しましょう。
賃金の規定
給与については規定が複雑になる場合があるので、賃金に関する別の規定を設けている企業もあります。以下のような内容を確認しておきましょう。
- 遅刻・欠勤・早退時などの給与の計算方法
- 残業や深夜、休日勤務などをした時の割増賃金の計算方法
- 通勤手当や家族手当など手当の種類
- ボーナスや退職金の規定があるかどうか、またその計算方法
割増賃金については、労働基準法で通常の残業または深夜労働で25%以上、休日労働で35%以上と規定されています。
通勤手当、家族手当などの規定は会社によって大きく違いますので確認しておきます。また自分から申請しないともらえない手当もありますので、疑問に感じたら総務担当者に聞いてみましょう。
退職の規定
- 一般的な退職の手続き方法
- 定年制度はあるか、また何歳を定年としているか
- 懲戒・解雇の規則
- 競合先への転職に関する規定
退職の規定については、希望する退職日のどのくらい前に申し出る必要があるのかなど、確認しておきましょう。
民法では退職届を提出してから2週間で退職可能とされています。
しかし引継ぎのことを考えると2週間では時間が足りない場合もあり、多くの会社では「退職希望日の1ヶ月前」を退職申し出の目安としているようです。
就業規則の規定が法律より労働者に不利な場合、労働者が就業規則を守らなかったとしても罰則などはありません。ただし円満な退職を希望するのであれば、就業規則の退職日や引継ぎ期間は可能な限り守るようにしましょう。
就業規則を理解しておこう
就業規則は社外に公開されないものなので、入社してみるまでは内容を見ることは出来ません。
そのため、入社前にできるのは面接の際や内定を受けた後で、自分に取って重要な項目について口頭で質問をするということくらいです。
入社後には内容を確認して、その会社で予期しないトラブルに巻き込まれないように注意しましょう。