派遣社員とは?正社員との違い、知っておくべきメリット・デメリットを解説

働く方が多様化し、最近では「派遣社員」という雇用形態で働く人も増えています。

派遣社員は「非正規社員」とも呼ばれます。正社員と同じ仕事をしているのに給与が違う、仕事が安定しないなどのマイナスイメージを持つ人も多くいます。

実際、派遣社員とはどのような働き方なのでしょうか。また、同様に非正規社員と呼ばれるアルバイトとは何が違うのでしょうか。

派遣社員のメリットやデメリット、どのような人に向いているのかなどを解説します。

派遣社員が問題になった事例

2020年のコロナウィルスの問題があった時には、派遣社員がその立場ゆえに不利益を被る以下のような事例が発生しました。

  • 正社員はテレワーク可なのに派遣社員は通常通りに出社
  • 業績が悪化した時に真っ先に契約を切られた
  • 労働時間が激減し、給与も激減した

また通常時にも以下のような不満を持つケースが多いようです。

  • 正社員と比較して立場が下に見られる
  • 社内の備品や施設を使わせてもらえない
  • 正社員と同じ内容の業務を行っても給与に大きな差がある
  • 社内のイベントに参加させてもらえない

どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

派遣社員とは

派遣社員の契約内容

派遣社員は実際に勤務する会社ではなく、派遣元である派遣会社と雇用契約を結びます。

派遣先で業務指示に従って業務を行いますが、給与は派遣元の企業から受け取ります。社会保険や福利厚生も派遣元のものを利用することになります。

このように派遣社員は、派遣元の会社の社員であり、実際に働いている会社の社員ではないのです。

派遣社員は有給休暇が取れない?

派遣社員は有給休暇が取れないと思っている人も多いのですが、実際には有給休暇の取得が可能です。

ただしその際にも派遣元の制度に従うことになります。ある派遣会社のルールは以下です。

  • 年次有給休暇は、仕事を開始した日から6ヶ月継続して勤務した時点で、その間の勤務日数に応じて、7ヶ月目から所定の日数を付与。
  • その後は継続勤務1年ごとに、その1年間の勤務日数に応じて所定の日数付与。
  • ただし、仕事が中断した期間が1ヶ月に達した場合は、仕事に復帰した時点から勤務日数、勤続年数ともに改めて計算しなおしとなる。

仕事が中断する可能性を考えると、正社員より条件は厳しいと言えます。

一般派遣と紹介予定派遣がある

派遣社員には2種類あります。一般派遣と紹介予定派遣です。

一般派遣は私たちが通常派遣社員と呼んでいる形態で、派遣会社との間に契約を結んで派遣先で働きます。

紹介予定派遣も、派遣元と契約を結んで派遣先で働く点は同じです。違うのは、派遣期間終了後、派遣先企業と直接雇用を結ぶことを前提にしているという点です。

この場合、派遣期間はある種の試用期間と考えられます。紹介予定派遣の場合は、通常の転職活動では見つけられなかった企業の直接雇用も狙える派遣と言えます。

アルバイトとの違いとは

無期限の雇用を前提とした「正社員」ではない点で、アルバイトと派遣社員は同じです。

違うのは雇用契約の主体です。アルバイトの場合、企業が直接雇用しています。

アルバイトの場合は直接雇用なので、給与や福利厚生は勤務先企業のものを利用することになります。

派遣社員のメリット

ここまで派遣社員のデメリットになりがちな点を解説してきましたが、では派遣社員にはデメリットしかないのかというと、そうではありません。
派遣社員のメリットと考えられるのは以下の点です。

派遣社員の時給は高く設定されている

一般に派遣社員の給与は、同じ仕事をする正社員と比較して高めに設定されています。

これは採用や教育、雇用に関するコストが正社員よりかからないためです。

通常、企業が人を採用する際には、その人の能力や経験、スペックやスキルを自分たちで見極める必要があります。そのために何度も選考を行ったり、あるいは採用後も教育を行う必要があるので採用にはかなりの費用が掛かります。

しかし企業が派遣社員を依頼する場合には、事前に派遣会社に求めるスペックやスキルを指定できます。すでに必要な能力がある人に仕事を依頼できるので、採用や教育のコストがかかりません。

社会保険や給与計算なども派遣会社が行うため事務処理のコストも少なくなります。
このような理由から、派遣社員の給与は高く設定できるのです。

ライフスタイルに合わせて仕事ができる

正社員として企業で働く場合、業務命令には従う必要があります。残業や出張、部署移動などは時としてライフプランに大きな影響を与えます。

「この分野の仕事がしたい」「残業したくない」「子育てを優先したい」そのような希望があるなら、事前に労働契約の内容を細かく決められる派遣社員という働き方にメリットがあります。

また派遣後の働き方についても、基本的に自分に変わって派遣会社が交渉してくれます。聞いていた状況と違うとなれば、直接自分で交渉する必要はなく、派遣会社を通じて調整することになります。

いろいろな職場を経験できる

派遣社員の場合、普通では働くのが難しいような一流企業から、急成長中のベンチャー企業まで幅広く活躍の場があります。

普通の就職の場合は1社に就職したらずっとその会社で仕事をすることになるので、契約ごとに違う職場で働く派遣社員の方が、幅広い場所で多くの人と働く機会があります。

スキルアップに役立つ

派遣会社としては、就職者がスキルアップして時給を上げてくれた方が会社の利益に結び付きます。そのため派遣元の企業はさまざまなキャリアアップ・スキルアップの講座を開催しており、希望すればそれらの講座に参加することができます。

専門的なスキルを身につけ、さまざまな職場で経験を積めば、派遣社員としてスキルアップ・キャリアップが可能です。

求職活動が簡単になる

派遣会社を通して就職活動をする際、条件面の交渉は派遣元がやってくれます。面接なども何度も行う必要がなく、より簡単な手続きで採用が決定します。

何度もエントリーシートを書いて、面接に赴くことを考えると派遣社員としての就職活動の方が求職者への負担は少ないと言えます。

派遣社員のデメリット

期間が決まっている

正社員として働く場合、無期限雇用といって解約の意思表示がない限りずっと雇用契約は続いていきます。

しかし派遣社員の場合、期限が来たら契約を更新するかどうか検討をしなければなりません。また、同じ派遣先で働けるのは3年が限度となっています。

3年の期間が終わると、派遣先企業が直接雇用することになっているのですが、直接雇用は派遣先にとってはリスクが大きなことです。

そのため3年を超えないタイミングで派遣期間を終了されることも多くなりました。3年で直接雇用に切り替えるルールは、そもそも雇用安定のための施策でしたが、実際には雇用を不安定にしていると言われます。

社会状況に左右されやすい

派遣社員はいわば雇用の調整弁になっています。社会状況が変化、あるいは会社の業績が変化した時には真っ先に影響を受けてしまいます。

直接雇用の従業員を辞めさせるのが難しいので、優秀な派遣社員でも社会状況が悪くなると契約を更新してもらえないということがあります。

雇用が安定しない

そもそもは雇用の流動性を高めようとできたのが派遣社員の制度でした。しかし、根強い日本の新卒採用文化、正社員重視の社会は変わっていません。

そのため一度派遣社員になってしまうと、正社員として雇用してもらうことが難しくなります。

契約が切れるたびに次の働き先を探さなければならず、なかなか雇用が安定しません。さらには生活が安定しない、長期的に人生設計ができないので結婚ができないという影響があります。

派遣社員になることのメリットとデメリットを理解しておこう

このように派遣社員にもメリットとデメリットがあるので、必ずしも派遣社員になることがいけないわけではありません。ただ、事実としてその後の選択肢が狭まるという点は事実です。

そのため、安易に派遣社員を選択せず、将来的なプランを踏まえた上で自分で選択するようにしましょう。

ただし、難しいとはいえ一度派遣社員になったらもう一生安定できないということはありません。自分自身のスキルを磨いて正社員になる、あるいは本当に役立つスキルを身につけて派遣社員として多くの会社に求められることも可能です。

自分の求めるキャリアや働き方を考えた上で、働き方を選ぶようにしてください。