働きがいとは?基本的な意味や必要な要素、企業の取組みを解説
少子高齢化が進み、転職が当たり前になったこともあり、近年はどの業界も人材の確保が難しくなったと言われます。
社員の意識的にも、従来中心的だった「たくさん働いてたくさん給料を得る」だけでなく、仕事を通して自己成長したい、ワークライフ・バランスを重視したいなど価値観の多様化が進みました。
そんな中で社員の定着を図るため、多くの企業が「働きがい」を意識した職場づくりを進めています。しかし、働きがいとは具体的に何を指すのでしょう。
この記事では「働きがい」という言葉の意味から、「働きやすさ」との違い、また働きがいを生むための企業の取組みについて紹介します。
働きがいのある仕事や職場選びの参考にしてください。
目次
働きがいとは?
働きがい=内発的モチベーション
そもそも「働きがい」とはどういう意味でしょうか。
言葉の意味としては、「働くことによって得られる結果や喜び、価値」と考えられます。
「働くことで得られるもの」のことを「働きがい」と呼ぶわけです。
つまり働きがいが「ある」状態とは、働けば結果が出て、喜びがあり、何かの価値が得られる状態、またそれに満足している状態といえるでしょう。
働くことによって得られる価値に本人が満足している状態であれば、自然にやる気も起こり、仕事に前向きに取り組める状態になります。
ただし、働きがいを感じるポイントは、基本的に人それぞれということになります。
働きやすい=環境など外発的な要因が中心
内発的に発生する「働きがい」に対して、「働きやすさ」にはより外的な要因が影響すると考えられます。
例えば、
・健康的な職場環境で働ける
・人間関係がよく自由に意見が言える
・制度が整っていて休暇を取りやすい
などです。
このように、働きやすさは多くの人に共通する内容なので、働きがいと違って制度やルールで整えることが可能です。
ただし中には「働きやすいけど、働きがいがない」と感じられてしまう場合もあります。
そうなると、いくら働きやすい仕事場であっても仕事に対する不満や不安のもととなり、従業員の離職の一因になってしまいます。
制度やルールを持って職場環境を整えることに加えて、「働きがい」のある職場を目指すことは、企業として非常に重要なテーマになっているのです。
働きがいの要素とは
では働きがいがある仕事・職場とはどんな所なのでしょうか。
働きがいを持って働きたいのであれば何をポイントに仕事を探せばよいのでしょうか。
働きがいにつながる要素としては、以下があると考えられています。
会社を信頼し、帰属意識が持てる
終身雇用が中心だった時代に比べて、近年、企業と従業員との関係はよりドライに変化してきました。
従来の一社に定年まで勤めあげるという考えは古いものとなり、キャリアの途中で転職するのは当然のことになりつつあります。
しかしそんな中でも、
- 会社や上司は自分の頑張りをきちんと見てくれている
- 成果やチャレンジを公正に評価してくれている
- 従業員のことを考えて経営をしてくれている
と感じられる会社であれば、従業員は仕事に安心して打ち込めます。会社の成長を自分の成長と重ね、喜びを感じながら働くことができるのです。
共に働く仲間がいる
会社や上司との信頼関係だけでなく、いっしょに働く仲間との関係性も重要です。
業務の中では、支えあったりミスをカバーしてもらったり、たがいに仕事を依頼したりして業務を進めていくはずで、その中で、
- 仲間との連帯感
- たがいへの信頼感
- 人の役に立っているという自己有用感
などを感じられれば、これも大きな喜びであり、内発的動機づけ、つまり働きがいを感じられる大きな要素になります。
自分の成長を実感できる
人はビジネスの経験を通し、レベルアップして新しい課題に挑戦できている環境では働きがいを感じやすくなります。
ゲームでずっと同じレベルの面をやっていても飽きてしまうように、難しい面をクリアして成長していく実感はやりがいに影響します。
ただ、レベルアップに関しては本人の意欲と能力によって適切なレベルの設定が必要であり、それを大きく超えるような仕事を任せた場合、やりがい・働きがいを感じる以前に、ストレスや精神的な問題を抱える可能性があるので注意が必要です。
ここで上げた3つの要素が、一般的に働きがいにつながりやすい要素と言えます。
ただ、人によっては他の要素に「働きがい」を見出す場合もありますし、複数の働きがいを持つ人もいれば人によって優先度も違います。
一概に「この要素を満たすから働きがいがある会社だ」とは言えませんが、就職や転職先を探す時に自分が何に働きがいを感じやすいか、何を重視しているかを考えるといいでしょう。
働きがいは業績にも影響する
会社の「働きがい」については、毎年、従業員のアンケート調査などを集計して決定する「働きがいのある会社ランキング」が公開されています。
面白いデータとしては、この「働きがいのある会社」に選ばれた会社の投資リターンは平均的な会社より高いというものがあります。
働きがいのある会社=従業員が内発的動機づけを持っており、前向きに仕事に取り組んでいる会社とも考えられるので、このデータの傾向は当然のものと考えられます。
このことから、近年では会社側も積極的に「働きがいの創出」について取り組むようになってきています。
働きがいを高める取組みを紹介
ここでは働きがいのある企業ランキングに登場した企業の実際の取組みを紹介します。
株式会社セールスフォース・ドットコム
セールスフォースには「Ohana文化」と呼ばれる文化があります。Ohanaとはハワイ語で「家族」を意味し、社員、顧客、パートナーなどの関係者がそれぞれの能力を最大限に発揮し、会社や社会に貢献できることを目指しています。
そのため働き方も自由度が高く、また社内ではマイノリティについての勉強会なども積極的に行われ、個性が活きる会社文化の醸成に努めているそうです。
また企業理念・明確なビジョンを示し、目標達成のプロセスにも透明性を持たせることで社員のエンゲージメントを高めています。
アメリカン・エキスプレス
アメリカン・エキスプレスでは女性管理職の割合は40%を超え、女性が活躍している職場ですが、託児所もなく特に女性用の制度があるわけではありません。
それなのに女性がこれほど活躍できるのは、従業員一人ひとりが「ダイバーシティを受け入れる」ことを意識しているからだそうです。
多様性を受け入れるということは、ある種の不便を受け入れるということです。みんなが同じ時間軸で働いていないため、返事が遅くなるなどのデメリットも発生しますが、トータル的に大きな問題にならないのであれば、それをどうすれば受け入れられるか考えるのです。
このように多様な視点を持てることで、男性社会であるクレジットカード業界でも、ユニークなサービスを提供できています。
株式会社コンカー
出張・経費管理クラウドサービスを提供する株式会社コンカーは「社員の働きがいを高めること」を会社の成長戦略ととらえています。
従業員同士の双方向でのフィードバックを定期的に行うことで、社員個人と会社の成長を促進し、一方で働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。
働き方や人事制度の面でも、在宅勤務、育児短時間勤務、ジェンダーフリー採用、キャリアカウンセリング制度など、ライフスタイルや個性に合わせた制度を創設し、社員のワークライフバランスを重視して、社内外業務の効率化にAIを井積極的に活用しています。
サイボウズ株式会社
以前サイボウズでは、次々と人が辞め従業員が定着しない時期がありました。「どうしたら従業員が定着するか」を考えた結果、100人いたら100通りの多様な働き方を実現できるような人事制度を策定することになったのです。
最長6年間の育児・介護休暇制度や、副業許可、一人ひとりが自身の勤務時間や場所を決められる「働き方宣言制度」などがあり、自分のライフスタイル、ライフイベント、仕事で達成したい目標などに応じて働き方が選べます。
働きがいは自分にあった職場を見つける手掛かりに
働きがいを何に求めるのかはその人によって大きく違い、またそこに正解はありません。お金が稼げることに働きがいを見出す人もいれば、人を喜ばせることに働きがいを感じる人もいるでしょう。
価値観は多様化していますが、人が定着することは企業が成長するためには大きな要因であり、だからこど多くの企業が従業員に「働きがいを提供できるように」とさまざまな取組みを行っているのです。
就職や転職の際にはその会社が「働きがい」をどうとらえて、従業員に提供しているのか、授業員が何に働きがいを感じているのかを知ることで、仕事選びの参考になるでしょう。