シェアリングエコノミーとは?急成長の理由と問題点
自分の持ち物でも常に使っているわけではなく、時間や期間によっては持て余しているものがありますよね。
近年そんな余っているものや時間を他の人に活用してもらい、自分は対価を受け取るという「シェアリングエコノミー」の考え方が広がっています。
「所有」が中心だったこれまでの価値観を変えつつある、シェアリングエコノミーについて言葉の意味や主要なサービス、またコロナウィルスの影響による今後の変化について紹介します。
目次
シェアリングエコノミーとは
「あまった」時間やものを活用
シェアリング・エコノミーは、個人が所有している資産(時間やスキルなどの形がないものを含む)を貸し出したり提供したりすることで収入を得る一方、資産を利用した側は、本来費用が発生する資産を安価に利用できるという関係性です。
日本で良く知られているのは、都心部ではよく見かけるUberEatsでしょう。
実はUberEatsは出前ビジネスではなく、
・時間がある人
・家に食べ物を届けてほしい人
をマッチングして出前を成立させるサービスです。
飲食店は本来、客席数以上の料理を販売することはできません。それ以外に出前をしようにも、その分の人件費がかかってしまいます。
しかしUberEatsを利用すれば、自前のリソースを持たなくても出前ができます。
時間がある人は、家の近くで出前を希望している人の情報を得て空いた時間に配達をすることで収入を得られます。
また出前を受けとる側は、本来なら出前をやっていない飲食店からも食べたいものを受け取ることができるのです。
このように従来なら余っていたリソースを活用して行われる、新たな経済活動としてシェアリングエコノミーの市場は増加しています。
2013年に約150億ドルのシェアリングエコノミーの市場規模は、2025年に22倍の約3,350億ドル規模に成長する見込みです。
出典:Consumer Intelligence Series: The sharing economy
UberとAirbnbが代表格
シェアリングエコノミーの代表格としては、2008年に創業したAirbnbと、2009年に創業したUberがあげられます。
Airbnbは部屋をあまらせている家主と宿泊場所を探す観光客とマッチングさせ、「民泊」はブームとなりました。
個人・法人を問わずに利用でき、利用できる部屋・物件はマンション内の一室からプールがついている豪邸までさまざまなバリエーションが登録されています。
公式サイトの情報では220国以上の100,000を超える都市で700万以上の宿が提供され、通算の利用人数は5億人を数えます。
Uberは移動したい人とドライバーをマッチングさせるサービスです。
各地域のタクシー会社だけでなく個人のドライバーとも提携し、利用者はスマートフォンから簡単に配車を依頼出来ます。現在、70か国以上の都市で利用が可能です。
シェアリングエコノミーのメリット
今まで活用されていなかった資産が収益を生む
シェアリングエコノミーを行うことで、所有者はそれまで使っていなかった部屋・家や、暇を持て余していた時間を収益に変えられます。
新たな消費やビジネスの拡大が見込める
UberEatsを利用するお客さんは、従来出前を取れなかった店から食べ物を購入できますし、お店は来客数以上の売上が得られます。
従来なら不可能だった方法が可能になったことで、新たな消費やビジネスの拡大が見込めます。
人とのつながりが生まれる
シェアリングエコノミーはいわば一般人同士のマッチングです。
信頼や品質担保するために互いの評価制度を導入し、人と人のつながりが生まれます。
良いサービスを提供するとリピーターが増えるなど、新たなコミュニティの生成にもつながっています。
シェアリングエコノミーのデメリット
安全や品質の保証が十分でない
シェアリングエコノミーで提供するものが食べ物や滞在先であった場合、安全や信頼が重要になります。
実際にUberやAirbnbでは、サービス提供者や利用者による犯罪行為が問題になっており十分な対策が取られているとは言えません。
保険・補償制度の整備が整っていない
企業としても、サービス提供者を「雇用」をしているわけではなく、ただマッチングをするプラットフォームというスタンスです。
そのため企業に責任を追及するには限界があり、通常のサービス提供を受けた時のようにはいきません。安全の確保やリスクの確認、トラブルの対応についても、自分の判断が重要になります。
法律の整備が追い付いていない
新しいビジネスであり、サービス提供者が企業ではなく個人であることも多く、法律的にグレーゾーンになっていることがまだ多いです。良いとも悪いとも言い切れないことが多いのです。
Airbnbに関しては、実際の民泊の運営が本来都道府県知事の許可が必要な旅館業法に違反するということで、2018年、一定のルールのもと住宅宿泊事業法(民泊)の届出が必要になりました。
Airbnb登録にもこの届け出が必要となり、ルールの下では収益が出しにくくなったため多くの人がAirbnbをやめたとも言います。
今後も法律の整備によってはビジネスの状況が変わる可能性があります。
シェアリングエコノミーの種類
場所のシェア
シェアリングエコノミーの代表的なもので、Airbnbなどの宿泊場所や会議室の時間単位での提供から、小さなスペースでもできる旅行客向けの荷物預かりなどもあります。
Airbnb
https://www.airbnb.jp/
スペースマーケット
https://www.spacemarket.com/
移動のシェア
海外では一般のドライバーが運転する車も利用できるUberですが、日本では法規制の関係でタクシーのみで利用可能です。
最近コンビニエンスストアの前でよく見る電動自転車のレンタルも増えてきています。
Uber
https://www.uber.com/jp/ja/
コギコギ
http://cogicogi.jp/
モノのシェア
いらなくなったものを売ることや、そもそもモノを所有せずに最初からレンタルで賄えるサービスです。
以前から不用品の売却にはヤフオクなどが利用されて来ましたが、スマホとメルカリの普及で一気に利用者が増えました。
メルカリ
https://www.mercari.com/jp/
airCloset
https://www.air-closet.com/
時間やスキルのシェア
趣味でやっていることでお小遣いを稼ぎたい、空いた時間でアルバイトをしたいなどの感覚で利用されています。
スキルを販売するものから、時間をそのまま販売するものまでさまざまなバリエーションがありますが、プロに頼むより安価でサービスを受けられます。
CaSy
https://casy.co.jp/
お金のシェア
「お金をシェア?というと驚きますが、ビジネスややりたいことに対してWeb上で資金を調達することも一般的になってきました。
何か面白いことにお金を投資したい、人を応援したいという人から、やりたいことがあるけど予算がないという人にシェアするのです。
FARM Sports Funding(ファームスポーツファンディング)
https://farm-sportsfunding.com/
コロナウィルスの影響は大きいが今後も注目される分野
このようにインターネットを介し、個人間であまったものをやり取りをするシェアリングエコノミーは世界で大きく成長をしていました。
しかしそんな成長産業に大きく影響したのが、コロナウィルスです。
コロナウィルスの影響で人々の消費行動が大きく変わり、同じものを他人とシェアする・気軽に他人と対面することのリスクが大きくなったことで「シェア」が難しい場合も多くなりました。
旅行の需要が激減したことでAirbnbは従業員の25%、1,900人の一時解雇を発表しました。
また、カーシェアリングのようなモノ自体を見知らぬ他人と共有するサービスに対しては、感染に対する恐怖心が大きくなっています。また、自分の空いた時間を使って対面でサービスを提供する家事代行やコンサルティングのようなサービスも当面は難しくなります。
しかし「所有」から離れた消費者の価値観や選択が、今後も得られる結果や体験に移り変わっていく流れは変わらないと考えられています。
モノは所有する、商品・サービスは企業が提供するということが基本だった従来と違う考え方であり、主に法整備の面で遅れていますが、今後も継続的に発展していくでしょう。
コロナの影響は甚大ですが、成長分野のビジネスとして今後も注目が必要です。