「VUCA」とは? VUCA時代でも不安にふりまわされずに生き抜く方法

現代は予測が困難なVUCAの時代と言われています。

その象徴的な出来事が、冒頭で述べた2020年からの新型コロナウイルスによる者買う情勢の変化です。
このように、突如として予測ができないことが起き、人々の中で新しい価値観に変わり、ビジネスのあり方までガラッと変わってしまうのが、VUCA時代です。

この記事では、そんなVUCAの時代にビジネスパーソンが生き抜いていくための重要な考え方について解説していきます。

VUCAとは

VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとったものです。

元々は1990年代に、アメリカ陸軍大学によって、冷戦後の不安定な状況を表す言葉として使われていました。

2016年にスイスで行われたダボス会議で、「VUCAワールド」として使われたのをきっかけにビジネスシーンでも使われるようになりました。

では、4つの頭文字についてそれぞれ解説します。

Volatility(変動性)

Volatility(変動性)とは、乱高下したり、変わりやすかったりする状況を指します。金融業界では、予測が不可能な市場の乱高下を指す言葉として使われています。

日本においては、2022年(令和4年)の1月のドル円相場の平均は、約1ドル115円でしたが、わずか半年後である2022年7月には1ドル135円を記録しました。

特に輸入企業や輸出企業にとって、円相場の動きは会社の利益に大きな影響を及ぼします。

たとえば、トヨタは1円の円安で「300億円以上の利益」になると言われており、現在の状況がいかに変動性の激しい状況か、おわかりいただけると思います。

Uncertainty(不確実性)

Uncertainty(不確実性)とは、それまで確実と思われた価値観などが、確実なものでなくなることです。

安定の象徴である大企業でさえ、どうなってしまうかわからないほど不確実さは増しています。

たとえば、シャープは2004年頃まで、液晶パネルで世界一のシェアを誇っていましたが、時代の変化についていけず2015年には経営危機に陥りました。

その後、2016年に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業グループに買収されたのは世間に衝撃を与えました。

Complexity(複雑性)

Complexity(複雑性)とは、グローバル化による多様化や、テクノロジーの発達、膨大化する情報などにより、さまざまな要素が複雑に絡み合っていることを指します。

たとえば、かつてはG7とよばれる先進国と呼ばれる国々が、変革を作り出す中心にあり、
追うべき情報はシンプルでした。

しかし現在では、BRICs(ブリックス)と呼ばれる国々の台頭も、地政学的に大きな変化・影響を与えており、より複雑な状況になっています。

Ambiguity(曖昧性)

Ambiguity(曖昧性)とは、文字通り状況が曖昧なことを指します。わかりやすい例が、2021年の新型コロナウイルスのワクチン接種の是非をめぐる状況でしょう。

当時は専門家でさえ意見が大きく割れていて、一体どの意見を信じたらいいのか、非常に曖昧な状況でした。

まだ、ワクチンの有効性や人体への影響が明らかになっていないことを考えると、いたしかたなかった状況とも言えるでしょう。

今後についても、ウイルスと共存していくのか生活スタイルがどうなるのかは、不透明かつ曖昧な状況です。

ここ数年で起こった社会のさまざまな変化

さきほどVUCAの意味についてお伝えしました。VUCAを一言でまとめると、「非常に予測が困難な状況」のことです。

では、ここからはここ数年で実際に身の回りやビジネスシーンでどのような変化が起こったのか、いくつか見ていきましょう。

Zoomなどのオンラインツールの普及

2019年に起こったコロナウイルスの影響により、さまざまな業種においてZoomなどリモ―トツールが活発に利用されるようになりました。

Zoom社によると、日本の中小企業においては、2019 年から2020 年にかけてリモートワークを行う従業員の数は、以前の6倍に増えました。

また、仕事の会議や打ち合わせや、自社セミナー開催、就職活動の企業説明会においてもオンラインセミナーなどがごく普通に行われるようになっています。

参考:コロナ禍におけるビデオコミュニケーションの影響とリモートワークの未来に関する調査結果

ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)の登場

ブロックチェーンと呼ばれる技術を使った仮想通貨(暗号資産)が世界中に浸透し始めています。

ブロックチェーンは既存の金融システムとは、まったく異なる立ち位置にあり、現物の紙幣や硬貨が存在するわけではありません。

まだ一般的には、仮想通貨(暗号資産)はハイリスクな金融商品との位置づけですが、海外に送金する場合は、銀行より手数料が安いなどの特徴があります。

また、南米国家のエルサルバドルが仮想通貨(暗号資産)であるビットコインを法定通貨にしたことで、金融商品としての見方が急速に変わりつつあります。

AI(人工知能)による車の自動運転

2020年の改正道路交通法により、一定の条件において、ハンドル操作を一切行わずに運転を車に任せることが可能になりました。

AI(人工知能)の発達によって自動運転のレベルがかなりの段階まで進んでいます。

今後もさまざまな課題はありますが、将来的には車の教習所すらなくなってしまう時代がくるのかもしれません。

量子コンピュータの登場

量子コンピュータは、現在のコンピュータに変わる高性能のコンピュータとして、開発が進められています。

これまでのコンピュータよりも、圧倒的に計算処理が速くなるとも言われ、これまで解決できなかった問題が解決できるようになるとも期待されています。

量子コンピュータは注目すべき、テクノロジーの1つと言えるでしょう。

VUCA時代の3つの特徴

さきほどお伝えしたように社会をとりまく環境は、目まぐるしいスピードで変化しています。

コロナウイルスなど未知のウイルスよる影響、テクノロジーの発達、グローバル化、地域紛争など、数え切れないほどの複雑な要因が絡み合っています。

こうしたVUCA時代の特徴をまとめると、以下の3つになります。

①: 変化のスピードが早く、スキルや知識が陳腐化しやすい

インターネットが普及して以来、あらゆる情報が爆発的に増え続け、世界中の人々が気軽に情報を手に入れられる時代になりました。

ビジネス的にはより競争は激化し、これまで通用していたスキルや知識が陳腐化しやすくなります。

たとえば、2021年1月ごろ「Clubhouse(クラブハウス)」というSNSが、大ブームとなりました。

数多くの著名人やインフルエンサーなど参入しましたが、わずか1ヶ月ほどでブームが終息する結果となりました。

②: 状況を一変させる出来事が突然起こる

状況が一変する出来事が突然起き、会社に厳しい経営判断を迫られることがあります。

その一例が、2022年の2月に始まったロシアによるウクライナへの侵攻と、同年3月に福島県沖で起きた最大震度6強の地震による原発停止です。

この結果、エネルギー資源の高騰を招き、特に2016年4月の電力自由化以降に新規参入した電力会社は大きな打撃を受けました。

帝国データバンクの調査によると、2022年6月8日の時点で104社の電力会社が倒産か、もしくは電力供給の停止をしたことがあきらかになっています。

③: 現状維持がより望めなくなっている

先行き不透明で目まぐるしく環境が変わるなか、現状維持を望むことが難しくなっています。

たとえば、AIによる業務の代替化が進んでいることです。

世界最大の銀行ゴールドマンサックスは、2000年ごろには600人いたトレーダーを、2017年にはたったの2人にまで削減しています。

また、日本においても、みずほ銀行が2026年までに、1万9000人の行員削減を宣言しています。

以前であれば花形だった銀行員やトレーダーといえども、AIの影響は避けられなくなっています。

フリーランスはコロナ前の1.5倍増の 1,670万人 に

ランサーズ「フリーランス実態調査 2021」によると、2018年には1151万人だったフリーランス人口は、2020年には1670万人と過去最大になったことがあきらかになりました。

2019年の新型コロナウイルスの影響により、リモートワークがより浸透してきたこともその一因と言えるでしょう。

在宅で自由に仕事ができる「Webライター」「Webデザイナー」「プログラマー」などのフリーランス人口は今後も増加する可能性があります。

参考:フリーランス実態調査 2021 – Speaker Deck

会社員でもフリーランス的なマインドが求められる時代

世の中がより不透明な時代、会社も雇用の安定が保障されなくなっている時代の中、どうしたらいいのでしょうか。

結論から言うと、会社に自身のキャリアを委ねるのではなく、主体性を持ってキャリアを積んでいく必要があります。

主体性を持つということは「自分で自分の人生の責任を持つ」ということです。

会社員であってもフリーランス・個人事業主のような自立したマインド持ち、必要な情報やスキルは自ら積極的に吸収し、学び続けていく必要があります。

起業する人にVUCA時代の理解が必須

「自分で人生の道を切り開いていきたい」

VUCA時代の中、自身のキャリアを会社に委ねるのに疑問を感じ、このように起業を目指す人もいるのではないでしょうか。

自身の望むキャリアが会社によって提供されないのであれば、起業も1つの選択肢となるかもしれません。

ただし、自分のやりたいことに固執しすぎると、環境の変化が起こった時に対応できない可能性があるので、その点には気をつける必要があります。

VUCA時代に取り残される企業体質・ビジネスパーソンの特徴

かつて、1970年代後半には「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とも言われたほどの勢いのあった日本企業ですが、現在では、以下のような問題点が浮き彫りになっています。

  • 意思決定に時間がかかる
  • 極端なリスク回避、または極端なリスクテイク
  • 変化に弱い
  • 同調圧力が強い
  • ムダなミーティングや会議がある

上記のような特徴はいずれもVUCA時代にそぐわないものばかりであり、変えていくことが、望ましいといえます。

VUCA時代に生き抜くために重要なこと

さきほど、VUCA時代に取り残される企業やビジエスパーソンの特徴についてお話しました。

では、ここからは、VUCA時代のビジネスパーソンに求められる考え方などをご紹介していきます。

スピードが優位性を生む時代ということを認識する

移り変わりの激しい時代において、優位性を生むのはスピードです。
なぜなら、スピードが速ければ速いほど、経営における貴重な資源ともいうべき「時間」を生みだすからです。

あのシャープが液晶パネルのシェアを落としたのも、中国メーカーと比べて対応のスピード感が圧倒的に欠けていた点が指摘されています。

VUCA時代、スピードが求められる機会はさらに増えていくでしょう。

小さく素早く試す

不確実性が高い時代において、何が結果や成果に結びつくのか誰にもわかりません。

そうであれば、色々なアイデアがあれば、それを小さく素早く試すことが大事です。

なぜなら、許容できる範囲でリスクをとり、スピーディにテストすることで、成功確率を高めることが出来るからです。

あの巨大IT企業である「Google社」も、いくつものプロジェクトを立ち上げ、トライ&エラーを素早く繰り返すことで有名です。

SNSサービスのGoogle+や、音楽配信サービスの「Google Play Music」をはじめ
さまざまなプロジェクトを立ち上げましたが、いずれも終了させています。

新しいテクノロジーに触れる習慣を持つ

日頃から新しいテクノロジーに触れる習慣を持つことも大事です。新しいテクノロジーの登場が業界の勢力図を一気に塗り替える可能性があるからです。

また、新しいテクノロジーの存在が、これまでの状況や物事のあり方を大きく変えることもあります。

例えば、ドローンの認知が世間一般に広まったのはここ数年ですが、ウクライナでの紛争でドローンが大量に使用されるようになりました。

このように、将来何が起こるか予測することは難しいとしても、新しいテクノロジーに日頃から触れておくことで、将来に対する仮説を立てやすくなります。

データ・ファクト・ロジックに着目する

VUCA時代で、先行きが予測困難だからといっても、何らかの仮説を立てて行動する必要があります。

そこで役に立つのが「データ・ファクト・ロジック」に基づいた意思決定で、過去のデータから得られた結果に基づいて行動する、ということです。

もちろん、この考え方は万能ではありませんが、まったく何の仮説も立てないで行動するよりはよほどいいと言えます。

なぜなら、はじめは失敗が多かったとしても、その分データが増え、精度が上がっていくとともに成功確率が高まっていくからです。

リーダーシップを高める

先行きの見えない時代だからこそ、周りを引っ張っていくリーダーシップがより求められています。

不透明な時代で、不安になる人も多い中、リーダーの強いメッセージというのは、周りを一致団結させる力があるからです。

会社で働く人はもちろん、フリーランスであってもプロジェクト単位で仕事をする場合、リーダーシップが求められることがあります。

ですので、どんな立場の人でもリーダーシップは身につけておいて損はありません。

またその結果、周りはもちろん、自分自身に対してもポジティブなエネルギーをもたらすでしょう。

VUCA時代でも、V字回復した「ネスタリゾート神戸」

ではここで厳しいVUCA時代でも、ビジネスパーソンが生き抜くためのヒントとなる事例を1つご紹介します。

コロナ禍の中で、最も打撃を受けた業種の1つが観光業・レジャー施設です。

ネスタリゾート神戸もその1つで、以下のような状況にありました。

  • 立地条件にも恵まれず、創業以来赤字が続く
  • 予算もまったく足りない
  • さらにコロナ禍に見舞われた

この大変厳しい状況の中で、白羽の矢が立ったのが、マーケッターの森岡 毅(もりおか・つよし)氏です。

そのコロナが猛威をふるっていた2020年に黒字化に成功し、V字回復を成し遂げました。
では、先ほどご紹介した事例を踏まえながら、解説していきます。

データを細かく検証した

ネスタリゾート神戸がV字回復を見せた理由の1つが、2020年4月7日の緊急事態宣言による閉園期間中にもかかわらず行った大型投資によるものだと言われています。

非常にリスキーな状況だったにもかかわらず、大型投資に踏み切れたのは、膨大なデータによる検証結果がありました。

細かい需要予測やコロナ感染の広まり方、さらには再度、緊急事態宣言が出されないことまでシミュレーションした上での判断だったと言います。

その結果、コロナ禍にも関わらず、前年比での売上から130%以上も増やすなど、売上を大きく伸ばしました。

VUCA時代、スピードが大事なことはいうまでもありませんが、会社の存亡をかけたケースでは、拙速な答えを出すべきではありません。

判断材料となるデータを幅広く集めることが重要です。

熱量のあるリーダーシップ

不安定な状況の中、「大型投資」や「コロナ禍における早期の営業再開」といった行動を導いたのは森岡氏やオーナーの強いリーダーシップによるものです。

世間で感染リスクが叫ばれていましたが、ネスタリゾート神戸には広大な敷地があるため、あきらかに「密」が発生しにくく、感染リスクの低いテーマパークでした。

とはいえ、テーマパークを通じてコロナ感染が広がったとなれば、世間から大きなバッシングを受けることは確実でした。

そんな状況の中、数々のデータに裏打ちされた判断を元に、ネスタリゾート神戸は、2020年5月23日の緊急事態宣言の解除とともに再開しました。

また、強いリーダーシップのもと、大胆な大型投資を行い、新エリア開発や新アトラクションなど次々と成功させていったのです。

AIをデータ分析に活用

森岡氏は積極的に「AI」を導入して、マーケティングの研究をすることでも有名です。

「コロナ感染がどう広がっていくのか」といったシミュレーションもAIなどを使って予測していました。

ネスタリゾート神戸が成功したのは、大胆な投資だとも言えますが、その判断の元になったのはデータです。

その数々のデータの処理をするのに、AIが積極的に活用されたのです。

AIから得られた結果がネスタリゾートの大きな成果につながったことを考えると、AIというテクノロジーの恩恵は大きかったと言えます。

まとめ

現代は予測困難なVUCAの時代と言われています。コロナショック、各地の紛争、テクノロジーの発達など先行きがまったく分からない時代です。

そのため、ビジネスパーソンにとっては、以下のような能力が必要になります。

  • スピードが優位性を生む時代ということを認識する
  • 小さく素早く試す
  • 新しいテクノロジーに触れる習慣を持つ
  • データ・ファクト・ロジックに着目する
  • リーダーシップを高める

上記のことを日頃から意識しつつ、状況が突然起きようとも、冷静に現状を受け入れて問題に真正面から向き合い、変化に素早く対処する姿勢が大事です。

VUCA時代であっても、自分の行動に責任を持てるようになれば、周りの状況に振りまわされて不安になることはなくなるでしょう。