認知バイアスとは?マーケティングやセールスに利用される「無意識の判断グセ」を解説

私たちは普段の生活の中で、さまざまなことを「自分の頭で考えて判断している」と思いがちです。しかし実は、そこには多くの無意識の思い込みが働いています。

これを心理学では「認知バイアス」と呼びます。
認知バイアスは通常の生活の中にも多く見られ、マーケティングなど人に行動を促す活動に活用されていますが、場合によっては自分たちの判断を大きく誤らせる可能性があります。

ここでは170種類以上あると言われる認知バイアスのうち、特に有名なものを紹介します。またあらかじめ認知バイアスの存在を理解することで、より正しい判断ができるようになるでしょう。

認知バイアスとは「認知のゆがみ」

認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学で使われる用語です。
何かを判断する時など、非常に基本的な統計学的な誤りや記憶の誤りが生じ、非合理的な行動をとってしまうことを指します。

例えば個人の生活習慣、それまでの人生で得た思い込みや固定観念、不安や懸念などが認知バイアスの原因になります。

認知バイアスにより、人は「ちょっと考えればわかるような」簡単な間違いをおかしてしまいます。
そして時として、それは財産や生命に関わる事態を招きます。

認知バイアスを取り除く事はできなくても、それがあるということをあらかじめ知っておくことが重要なのです。

あるあるばかり!生活の中の認知バイアス

損したくないと思うとさらに損をする、コンコルド効果(埋没費用)

コンコルド効果は、ある対象について「これ以上金銭的・精神的・時間的投資をすることは損失にしかならない」とわかっているのに、それまでの投資を惜しんで投資を続けてしまう状態です。

この名称は、かつての超音速旅客機「コンコルド」が、飛ばせば飛ばすほど赤字になるという状況に陥っても、莫大にかかった開発費を無駄にするのが惜しくて飛ばすのを止められなかったことに由来します。埋没費用やサンクコストなどとも呼びます。

日常であるわかりやすい例としては、チケットを購入して見に行った映画がつまらなかった場合です。

映画がつまらないにもかかわらず最後まで見たら、あなたは1,900円のチケット代と2時間の時間をムダにすることになります。

途中で退出すれば、無駄にするのは1,900円のチケット代のみとなり、時間は他の事に使えるわけで冷静に考えればこちらの選択が合理的です。

しかし実際には、せっかく買ったチケット代がもったいないような気がして最後まで見る人が多いのです。

成功者をまねても意味が無い、生存バイアス

生存バイアスとは、現在残っている物だけを調査対象とし、途中で淘汰された物を調査しないために誤った信念を持つことです。

例えば、大学を中退して実業家として成功したスティーブ・ジョブズ氏やビル・ゲイツ氏を見て、「大学を中退しても人生で成功することに影響はない」「大学を中退するくらい型にとらわれない方が成功できる」と考えることです。

実際には彼らの成功は奇跡と言えるもので、大学を中退した人全体の割合からすると、大学中退が人生の成功に影響が無いとは言えません。
社会においては大学を卒業したという経歴はやはり重要で、成功している人の中でも大学を卒業している人の割合はかなり高いのです。

このように、「成功を収める上で必ずしも大学を出る必要ない」という考えは、一部の成功者だけを対象としてとらえ、大学を中退した後ビジネスが上手くいかなかった人を無視する生存バイアスだと言えます。

この点でよく「成功者をまねる事には意味がない」とも言われます。

「最初からわかっていた」と言いたい、あと知恵バイアス

何かが起こった時に、「だから言わんこっちゃない」と展開を前から予想できていたように思いこんでしまうことです。

例えば芸能人夫婦が離婚した時などに、「やっぱりね、最初からあの2人は上手く行かないと思っていた」というような感じです。
そう思う事は多くても、実際に「絶対にこの2人は上手くいかない!」と周囲にまで宣言していた人はいないのではないでしょうか。

「結果」が起きてから「予測」できていたという確信が自分の中に生まれてきて、実際に沿う認識してしまうのがあと知恵バイアスなのです。

一瞬で印象が変わるコントラスト効果

それ自体の数や価値は変わらないのに、何と対比させるかによって一瞬で印象は変わります。

例えばある服が30,000円で売っていて「高い!」と思っても、他の店で同じものが10万円で販売されていたら安く感じて、ちょっと欲しくなってしまうような心理です。

これはマーケティングやセールスの分野で非常に良く利用される認知バイアスで、

・通常価格と割引価格を併記する
・栄養成分をmgなどの単位ではなく「レモン100個分」など多い印象を与える表示にする

などでよく目にします。

自分だけは大丈夫だと思ってしまう、正常性バイアス

正常性バイアスは、「私に限っては大丈夫だ」「そんな大事ではないだろう」と危険を過小評価し普段の生活を続けようとすることです。

大きな台風が来ているのに外に出てしまったり、地震で崩れそうな家から退去しようとしなかったり、詐欺に引っかかってしまったりなど、正常性バイアスが「自分だけは大丈夫」と思わせる力は非常に強いものです。

この点で正常性バイアスは、生命や財産にも影響する重要な認知バイアスです。

都合の悪い事は無視する、確証バイアス

確証バイアスは、自分に都合の良い情報ばかりを集めてしまい、考えに反する情報には目を向けないようになることです。

たとえば今でも地上が平面であると信じている人がいます。
それを証明しようとさまざまな彼らなりの実験をしていますが、そこで出てくるのは「地球は丸い」「地上は平面ではない」事をあらわす結果ばかりです。
しかし、彼らはそれを実験方法や器具のせいにして受け止めようとはしません。

すでに望む結果があり、それに合う証拠だけを集めようとしてしまうので正しい判断ができないのです。

地上が平面だと信じる人たちのケースは極端ですが、自分にとって都合のいい事を言ってくれる人をいい人だと信じるなど、日常にもよくある認知バイアスです。

「これって自分のこと?」と思ってしまうバーナム効果

誰にでも該当する内容にも関わらず、自分に当てはまると思ってしまうことです。

例えば血液型占いや星座占いの内容が自分のことを「ずばり言い当てられた!」と感じる事はあります。

しかし試しに他の星座の内容を見てみてもそれなりに当てはまっていると感じるはずです。
結局は誰にでも当てはまることが書かれているのですが、自分に当てはまっていると感じるのです。

手間がかかると価値も上がる、IKEA効果

イケア効果のイケアとはそのままあの北欧の家具メーカー「IKEA」です。
IKEAで販売されている家具は基本的に組み立て式なので、お客さんは自宅で自分の力で家具を完成させなければいけません。

アメリカ・ハーバード大学の実験では、まず被験者にイケアの家具を組み立てさせました。
そしてそれをプロが組み立てたものと並べ、それぞれいくらまでなら買ってもいいかと尋ねると、被験者はプロより自分が作ったものにより高値をつけました。

商品やサービスは「できるだけ楽に」「簡単に」と考えて設計されがちですが、一方人間は自分が手間をかけたことで愛着を増し、その価値を過大評価する傾向にあるのです。

ホットケーキミックスも当初、本当に粉だけでホットケーキを作れる商品でした。それをより卵を追加して作る、ひと手間かける商品に変更して逆に売上げが伸びたそうです。

情報を都合よく伝えるメディアバイアス

メディアが情報を伝える時、ソースのどの部分を取捨選択して伝えるかによって生じるバイアスを指します。

会話の一部分を取り上げて暴言のように報道された内容が、前後をつないで見ると理にかなっていることもあります。
また動画の一部分だけ見て理不尽な暴行のように見えても、その前に被害者が執拗に加害者を挑発していたこともありました。

このように、情報は切り取り方によって大きく印象を変えます。
メディアから流れてくる情報にはその可能性があると言うことを認識しておく必要があるのです。

認知バイアスの罠に引っかからない方法

ではこのような認知バイアスに引っ張られずに、合理的な判断をするにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか。

以下の3つの点を意識するだけで、自身の認知バイアスに気づき、正しい判断ができる可能性が高くなります。

確率や統計に強くなる

人は認知バイアスにより「何となくそう思う」感覚に導かれます。
しかしきちんと確率や統計で考えてみると、そんな思い込みは間違っていることに気づけます。

例えば、「宝くじを買うとあたりそう」と何となく思っていても、数字を理解できればそれがどれくらい難しいことなのかわかります。
宝くじの払戻率(還元率)は50%を切っており、その他の公営ギャンブルは70%程度。また1等が当たる確率は2,000万分の1で、これは東京の人全員が1枚ずつ宝くじを購入してそのうちの1枚が当たる確率より低いものです。

このように具体的な数字で考えられるようになると、自分の認知バイアスに気づけるようになるのです。

経験と知識を多くする

多様な価値観にふれることも重要です。
狭い世界で限られた価値観だけと接していると、知らないうちにその認知バイアスがかかった考え方になってしまいます。

世界が広く多くの価値観があることを知っている人は、認知バイアスがかかっていたとしても、「この考え方も自分自身がそう感じたに過ぎない」「多くの考え方がある」と1歩引いて物事を見ることができ、より合理的な判断ができます。

その場で判断せず1回落ち着いて考える

重要な判断はその場でせず、いったん家に持ち帰って判断しましょう。
自分自身の思い込みや、物事の良い面だけを見てしまう認知バイアスに、その場で気づくことはかなり難しいものです。

いったん時間と距離を置いて考えることも重要です。

人の意見を聞き入れる

自分の判断に対して誰かが意見をくれた時には積極的に聞きいれ、その角度からも検討してみることが重要です。

客観的な視点を得ることで自分の認知バイアスに気づけるきっかけになります。

複数の視点で情報を集めて検討する

人の意見を聞くということでもそうでしたが、さまざまに視点を変えて物事を検討することで自分の認知バイアスに気づけます。

自分が正しいと思うことだけでなく、反対意見やデメリットに関する情報なども集めて、全体的に検討することが重要なのです。

重要なのは認知バイアスを認識して情報収集・判断すること

認知バイアスは数多く、日常のさまざまな場面で私たちの判断に影響しています。
そして認知バイアスをなくす事は困難です。

つまり、私たちにできる事は毎日これだけの認知バイアスを抱えて生活していると言う「自覚」を持つことが大切なのです。

Webマーケティングでも他のビジネスでも、近年では情報やデータから内容を読み取って判断を下すことの重要性が上がっています。
情報を収集する際も認知バイアスによって偏った情報を集めてしまっていないか、意識する事が必要です。

そして、重要な判断については認知バイアスによって誤った判断をしていないか充分に注意をしましょう。