「PDCAをしっかり回していこう!」あなたは職場でこのようなことを聞いたことがないでしょうか。
目標を達成できず、年々売上は下がっている…。そうした状況にも関わらず、「もっとPDCAを回そう!」を連呼する上司…。PDCAとは、仕事がデキない上司の「とっておきの決めゼリフ」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、PDCAを回して成果が出ない企業がある一方で、2021年に「日本企業最高の4兆円超の利益」を出したソフトバンク社は、PDCAを効果的に回し続け、大きな成果を上げました。
PDCAを回して成果を出せる会社と出せない会社の違いは、一体どこから生まれているのでしょうか?本記事では、目標達成に必要なPDCAの本質が学べます。
ぜひ、あなたも本記事でビジネスパーソンの基本スキルであるPDCAの本質を学び、スキルアップに役立ててください。
PDCAとは、もともと品質管理の手法
PDCAとはPDCAサイクルとも呼ばれ、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字をとったものです。
PDCAの起源は、戦後間もないころ、アメリカのエドワーズ・デミング博士が日本で行った品質管理に関する講演会と言われています。
「測定できないものは、改善できない」。これは、デミング博士の有名な言葉です。
デミング博士が提唱した品質管理の手法(デミングサイクル)は、日本においてPDCAサイクルとして取り入れられ、経済発展に大きく貢献しました。
今日でも多くのビジネスパーソンの間で目標達成のための基本のツールとして使われています。
PDCAの3つのメリット
まず、PDCAのメリットをご紹介したいと思います。メリットは、以下の3つになります。
①目標達成のスキルが身につく
②継続させることで、成長が見込める
③進捗を管理しやすい
①目標達成のスキルが身につく
PDCAを回すことにより目標達成のスキルが身につきます。PDCAを回すには行動力やスケジュールの立て方など、目標を達成するためのスキルが求められるからです。
PDCAの基本が出来ている人は、習い事や資格取得など、プライベートな目標も達成しやすいのではないでしょうか。
②継続させることで、大きな成長が見込める
PDCAサイクルと呼ばれるだけあって、継続させることで大きな成長が見込めます。あのソフトバンク社もPDCAを継続的に回し続け大企業になりました。
個人レベルであっても同様です。過去の手帳など見て、過去の数字、達成したリストなどを振り返ってみるといいでしょう。
意外なほど自分が成長していることに気づくと思います。まさに「継続は力なり」なのです。
③進捗を管理しやすい
元々、品質管理のために始まった手法でもあり、ミスや異常、進捗を管理しやすいというメリットがあります。
また、組織が大きくなっても、全部門で共通のフォーマットにしておけば、各部門の目標達成に向けた進捗状況を共有することができます。
PDCAのデメリット
さきほど、PDCAのメリットをお伝えしましたが、PDCAにももちろんデメリットがあります。
デメリットは以下の2つです。
①想定外の事態や、前例がないものには向かない
PDCAには、「前例がないものには効率性は見込めない」というデメリットがあります。現在のコロナ禍にしてもそうですが、前例がないものに対しては計画、評価、改善の精度が落ちるからです。
「とにかく手探りで計画を立てて、どんどん手数を増やしていこう」となりがちですが、まったく見当違いな施策になる確率も高く、もしそうなった場合は、時間・お金・人的資源といった貴重なリソースのムダ使いになってしまいます。
このような前例のないものに対しては、PDCAはあまり向きません。
②手段が目的化しやすい
PDCAを回していると、目標の達成には程遠い行動であったとしても、プラスに向かっている感覚になりやすいので注意が必要です。
プラスに向かっているという感覚だけで、何も考えずにPDCAを回している状態が、いわば「手段が目的化した状態」です。
手段が目的化しないためには、目標達成において何がベストな手段か日頃から考えておく必要があります。場合によっては、計画そのものをゼロベースで見直す必要があります。
PDCAの4つのプロセス
では、PDCAサイクルの4つのプロセスについて解説していきます。
(P)目標(年間・1ヶ月・1日)を立て、1日の行動計画を作る
(D)1日の行動計画を実行する
(C)1日の行動計画が達成できたか、改善点はないか確認をする
(A)良い点・悪い点など、チェックした内容を元に改善・是正をする
では、各プロセスを具体的に見ていきましょう。
1.Plan (計画)
目標・目的を定めてPlan(計画)を作るプロセスです。必ずしもPから始める必要はありませんが、通常はここからスタートします。
最終目標・大目標・中目標・小目標(年間、月間、週間、1日単位)などを立てて、具体的な1日の行動計画に落とし込んでいきます。
会社員の方であれば、年間の売上目標を達成するために、そこから逆算して1日の行動計画を立てている方も多いのではないでしょうか。
手帳やスプレッドシート、カレンダー、タスク管理のアプリなどを使って行動計画を記入しましょう。(会社指定のフォーマットがある場合は、そちらを使います)
行動計画を立てる上でのポイントをご紹介します。
数字にしやすいものにする
計画に取り込むのは数字にできるものにしましょう。数字を行動計画に取り込むことは、以下のようなメリットがあります。
- 行動計画が具体的になる
- 改善がしやすい
- 社内共有がしやすい
数字は、一目で良かったか悪かったかハッキリわかるので、PDCAを回し改善をするためには数字ベースが望ましいといえます。
「目標達成の重要なカギ」であるか確認する
多くのビジネスパーソンにとって、時間、人員、お金といった限られたリソースの中で、目標を達成しなくてはいけません。
リソースをムダにしないためにも、「目標を達成する上でカギとなる重要な指標」であるかをよく確認しましょう。
(例)大目標である年間売上達成のカギとなるもの
ネットショップの場合 | 営業の場合 |
・サイトへのアクセス数 | ・新規訪問数 |
・コンバージョン(申込)数 | ・成約数 |
・問い合わせ数 | ・アポ獲得数 |
さらに、これらの重要な要素に対して、具体的な1日の行動計画に落とし込んでいきます。
行動がイメージできる単位まで分解する
行動がイメージできる単位まで、計画を分解するのもポイントです。「今週中にアポを3件取る」だと、なかなか行動イメージが湧きませんよね。これを修正すると以下のようになります。
(修正例)アポ獲得のための1日の行動計画
・Aのリストを使い、トーク内容の〇〇の部分を変えて、午前中までに〇件電話する。
このとき便利なのが、5W2Hです。
5W2Hとは、
- Who(誰が)
- When(いつ)
- Where(どこで)
- What(なにを)
- Why(なぜ)
- How(どのように)
- How much(いくら)
という意味です。
特に、What(なにを)・When(いつ)・How(どのように)は意識しましょう。行動計画が具体的になりやすいからです。
2.Do(実行)
Do(実行)は計画を実行するステージです。このステージではとにかく実行することにフォーカスしましょう。実行しないことには改善しようがないからです。
ただ、あまり目標を意識しすぎると、ストレスを感じてしんどくなることがあります。そんなときは、1日の行動計画を淡々と実行することにフォーカスしてください。
とりあえず実行さえすれば、新たな知見を得ることができますし、自身の成長につながるので、失敗を恐れずに前向きにトライしてみましょう。
実行するのが苦手な人は、日常の小さなルーティーンでもいいので、コツコツ始めてみてくださいね。
3.Check(評価)
行動した結果に対して振り返りを行いチェック・評価をするのが、このCheck(評価)のプロセスです。
チェックする内容は、以下のような内容になります。
・目標の数値に対して、どのくらい到達したか
・予定時間に対して、どのくらいの時間がかかったか
・どのような問題が発生したか
振り返りを行うことで、現状をより正しく把握することができます。その結果、改善や次の計画の質を上げることに役立ちます。
やりっぱなしの仕事で終わらせないためにも、良かった点、悪かった点、行動計画に問題がなかったか、時間を作って振り返りを行ってみてくださいね。
どうしても時間がないときは、◯と✕を使って手帳等にチェックを入れていきましょう。
4.Action(改善・是正)
評価の内容をもとに、改善や是正をするプロセスがAction(改善・是正)です。先述した評価とセットで行ってもいいでしょう。
会社か個人レベルなのかなど、状況によって異なってきますが、主に以下のようなアプローチができます。
(例)会社の大目標
・計画を(上方・下方)どのように修正すべきか
・そもそも計画を継続するべきか
(例)1日の行動計画
・行動のやり方を少し変えてみる
・行動を継続してみる
・行動の量を増やしてみる・減らしてみる
・行動の質を高める努力をしてみる
改善をするときにおすすめの方法は、「カイゼン」で有名なトヨタの「なぜ5回」を使うことです。
「なぜ5回」とは、不良品が発生したときに、「なぜ?」と問いを繰り返すことで、不良品が発生した理由に迫るという方法です。これは、問題解決のためのツールとしても、とても便利です。
たとえば、以下のようになります。
①なぜ作業時間がかかってしまったのか? → パソコンの操作に手間取ったから
②なぜパソコンの操作に手間取ったのか? → タイピングが遅かったから
③なぜタイピングが遅かったのか? → ブラインドタッチができないから
④なぜブラインドタッチができないのか? → タイピングの練習をしたことがないから
⑤★【改善点に到達】タイピングのスピードアップに向けた練習計画を作る
「なぜ5回」は、思考力のトレーニングにもなるので、ぜひ覚えておいてくださいね。また専門家からの質の高いフィードバックが得られる場合は、効率良く改善することができます。
※ここまできたら、またP(計画)のプロセスに進みます。
なぜPDCAが上手くいかないのか?
冒頭にて、会社でPDCAを回しているのにまったく機能していない会社があることにふれました。ここではPDCAを回しても上手くいかない会社の特徴や、あなたがとるべき行動についてお話していきます。
ケース1:P「計画」や目標の設定が破綻しているため
「社長や上司にムチャクチャな目標設定をされた」。これはいわゆるブラック企業などではよくあるケースです。
使い方次第で有用であるPDCAに対して、あまりいいイメージを持たない人は、こういった経営者の元で働いていた経験のある人かもしれません。
経営者であれば「目標は常に高く」というのは当然かもしれません。しかし、現状と照らし合わせてみても、あまりにハードルの高すぎる目標設定をした場合は、当然、組織内の人間にしわ寄せがくることになります。
たとえば、社長の「200のムリな要求をして100の結果が出ればOK」というようなケースです。(もちろん、市場が好調であるなど、正当な理由があるのであればこの限りではありません)。
はじめのうちは、なんとか目標が達成できたとしても、そのうち従業員には社長の手の内を見透かされてしまい、バカらしくなって頑張らなくなってしまうでしょう。
もし、あなたそういう立場にいるなら、転職も視野に入れて「今の会社は、目標達成のスキルを身につけながら、自分の市場価値を高める場」と割り切って仕事をするといいかもしれません。
転職の面接では「どんな目標にコミットして、どんな成果を実際に出したか」がよく聞かれる質問だからです。
成果を出していればあなたの市場価値は上がり、転職にあたって有利な状況になるのは間違いないでしょう。
ケース2:D「実行」に問題がある会社の体質だから
会社の体質に問題があり、行動に起こすことに対して強いストレスを感じるケースです。具体的には以下のようなケースです。
- 「やれと言ったらやれ」など、上司が抽象的なことしか言わない
- 失敗をまったく許さない雰囲気
- 周りに実行力のない人間が多い
もし、あなたがこのような厳しい環境に置かれているのなら、思ったように行動できていない自分を責めないようにしましょう。
このような会社では、短期的には自分にムチを打って行動させることができるかもしれませんが、長期的に見るとメンタル的に悪影響があるからです。
では、これとは対照的な会社をイメージしてみてください。ハードルは高くても目標達成に適切なフィードバックをくれる上司や、新しいアイデアはどんどん実行しようという雰囲気、そして実行力のある刺激的な同僚たち…。そんな活気のある職場です。
自分の行動量が「自然と増えていく」イメージが浮かんだのではないでしょうか。このように人間は周りの環境に影響を受けやすいものなのです。
ケース3:C「評価」がキチンとされないため
振り返りがまともになされないか、まったく機能していないケースもあります。以下の2つのケースです。
①そもそも振り返りをしていない
②検証の仕方に問題がある
①は「仕事が忙しすぎて振り返りをしてチェックをしていない」というケースです。
この場合、振り返りの時間が確保できるよう行動計画の見直しをする必要があります。
振り返りができないと、せっかく得た知見がムダになり、PDCAを回す意味がないからです。スキマ時間をうまく使って、◯✕のチェックくらいはできるようにしたいものです。
②はチェックや評価の基準がハッキリしていない、適切なフィードバックがなされないなど、検証の仕方に問題があるケースです。
そういう場合は、まず会社内で客観的な基準を作ることからスタートしましょう。これでは現状を正しく把握することができないからです。
自社単独で難しい場合は、外部からコンサルタントや専門家を入れる方法もあります。
ケース4:A「改善・是正」にしっかりつなげないから
評価・振り返りをしたのち、そこからうまく改善に結びつけないケースもあります。
以下のような理由が考えられます。
- 問題の本質にたどりつけず、場当たり的な対応になっているため
- まわりからの適切なフィードバックを、本人が受け入れない
質の高い改善につなげるためには、質の高いフィードバックがあり、そしてそれをしっかり実行する必要があります。
上手くいっていないのに、今までのやり方や行動パターンにこだわるのであれば、結果が好転するはずがありませんよね。
これはプロジェクトにおいても同様で、改善の見込みのないものは、スパッと見切りをつけるスピード感も重要です。
PDCAをムダなく回す5つのポイント
PDCAを上手く回せない企業がある一方で、成果を出している企業・ビジネスパーソンにはある共通しているポイントがあります。
ここでPDCAをムダなく回す5つのポイントについてご紹介します。
①基礎となるスキルを徹底的に磨く
何事も基礎が大事です。自分の仕事において基礎となるスキルをしっかり見極めて、磨いていきましょう。
基礎がしっかりすることで仕事のミスが減り、作業スピードが上がるなど、仕事全体の質が高まりPDCAの精度も上がってくるからです。
たとえば、Webライターならタイピングスピード、営業ならセールストークをしっかり磨いておくといいでしょう。
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②生産性の高い人から学ぶ
PDCAをムダなく回すためには、PDCAを上手く回して結果を出している人の行動を真似してみるのもいいでしょう。
結果を出している人は、PDCAの精度を高めるために工夫をしているものです。たとえば、パソコン操作が速い人は、タイピングが速かったり、ショートカットキーを使いこなしていたりします。
もし、あなたの身の回りに、そこまで必死に仕事をしていなさそうなのに、目標を高いレベルで達成している人が周りにいれば、その人のやり方を観察したり、アドバイスをもらえないか尋ねてみたりしましょう。
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③1日単位のスケジュールに集中して取り組む
大目標も大事ですが、それよりも1日単位の行動計画を守れるようベストをつくしましょう。1日単位の行動した成果の積み重ねがあってこそ、ゴールは達成するからです。
行動計画を行動できる単位まで細かくし、それを1つずつ確実にやりきる意識で取り組んでみましょう。
④仮説を立てるクセをつける
「仮説を立てる」というと少し難しく聞こえますが、「完璧ではないけど、とりあえず仮の案」を作ってしまおうということです。
たとえば、明日の売上予測をする場合、「明日は雨だから、売上が減りそうだ」といった仮説を立てることができます。
ポイントは、自分なりに根拠や理由を元にして考えることです。そうすれば、失敗をしたとしても検証ができるので、数をこなすだけ仮説の精度が上がってくるからです。
スピード感の早い現代においては、仮説を立ててサッと行動する人の方が、何も考えないで行動する人と比べると成長が早く有利といえます。
仮説を立てるのは、思考のいいトレーニングにもなるので、ぜひやってみてくださいね。
⑤悩むヒマがあれば、行動する
悩んでいるヒマがあれば、行動してみましょう。悩むのではなく、頭をクリアにして考えるようにしましょう。
悩んでいる時間というのは、何も価値を生まないからです。それでは、1ミリも前に進みません。頭を使って考え、1日の行動計画を決めたら、悩まずにどんどん行動していきましょう。
PDCAは柔軟に使いこなそう
PDCAは、目標達成するための基本のツールです。戦後まもない時期から、製造業を中心にこの手法が使われてきましたが、現在でもソフトバンクのような大企業が、PDCAを効果的に導入して大きな成果を上げています。
P(計画)→D(実行)→C(評価)→A(改善・是正)、この各プロセスの精度を高めて、PDCAサイクルを回していくことにより、より効率的に目標を達成することができます。
行動で止まってしまいがちな人は、目標達成に目を向けすぎるとしんどくなるので、1日単位の行動計画を淡々とやりきることにフォーカスしましょう。
また、数字ベースで検証と改善・是正することと、適切なフィードバックをもとにPDCAを繰り返していくことが大事です。
PDCAのメリットは以下の3つです
- 目標達成のスキルが身につく
- 継続させることで、大きな成長が見込める
- 進捗を管理しやすい
PDCAのデメリットは以下の2つです。
- 想定外の事態や、前例がないものには向かない
- 手段が目的化しやすい
また、PDCAを使う場合は、置かれた環境に応じて、現状確認・チェック(C)からスタートしてもいいでしょう。
PDCAは会社だけでなく、プライベートでも目標を達成するためには便利なツールなので、普段の生活でもぜひ取り入れてみてくだいね。