リードナーチャリングとは? コンテンツ制作者なら絶対に知っておきたい基礎知識

 

Webマーケティング業界において、今注目されている手法が「リードナーチャリング」です。

近年、マーケティングを自動化するMA(マーケティングオートメーション)の導入や、旧来の「刈り取り型」から「育てる型(リードナーチャリング)」へ集客スタイルが変化しています。

Web系フリーランスにおいても、リードナーチャリングの理解が必須の時代になりました。

リードナーチャリングを理解していないと、クライアントから「コミュニケーションが取りづらい人だ」と判断されてしまうリスクがあるからです。

逆にリードナーチャリングが理解できれば、「単なる作業する人」とくらべてコンテンツの品質がアップします。

この記事では、リードナーチャリングの意味や、知っておきたい基礎知識をわかりやすく解説していきます。

リードナーチャリングとは顧客の育成のこと

リードナーチャリングとは、リード(見込み客)をナーチャー(育成)するという意味で、登録フォームなどで獲得したリードに対して、購買層へと育成していくプロセスのことを指します。

リードを流入経路や、購買ステージなどでセグメント分けして、それぞれに適切なアプローチをすることがリードナーチャリングのポイントになります。

たとえば、購買熱の高まっていない見込み客に対して、興味をひくようなコンテンツを提供したり、購買熱の高い見込み客に対しては、より購買につながる施策をとったりしていきます。

リードナーチャリングと似たような言葉でリードジェネレーションという言葉がありますが、こちらは見込み客を獲得するという意味なので、混同しないようにしてくださいね。

リードナーチャリングが重要な3つの理由

さきほど、リードナーチャリングとは「顧客の育成」とお伝えしました。では、どうしてリードナーチャリングが重要になったのでしょうか。

その3つの理由について説明します。

これまでの集客の方法が通用しなくなっているから

リードナーチャリングの重要な理由として、これまでの集客が通用しなくなっている点が挙げられます。

以前であれば、消費者はCMやチラシなどを見て直接お店に足を運ぶのが普通でした。また、法人営業においても対面のみでの営業スタイルが主流でした。

しかし、ネットの普及によりユーザーは、欲しい情報を販売員や営業マンでなく、直接ネットで調べるようになりました。

その結果、企業にとっては、他社との料金・サービスの比較検討をされやすくなり、法人営業においても、以前のような知識差を利用した営業スタイルでは、通用しなくなっているのです。

そのため、これまでの集客のやりかたではなく、新たなネットを使った広告戦略へとシフトしています。

電通の調査でも、2019年にインターネットの広告代はテレビの広告代を超え、初めて2兆円に到達しました。

参考:2019年 日本の広告費 – News(ニュース) – 電通ウェブサイト

MAツールの導入など、マーケティングの複雑化

MAとはマーケティングオートメーションの略です。複雑化したマーケティングに対応するため、マーケティングオートメーションを導入する企業が増えています。

これまでネット広告は「Google 広告・Yahoo!広告・Facebook広告」などが中心でした。

しかし現在では、広告費の高騰や広告審査の厳格化、さらにはSNSや動画、オウンドメディアなどチャンネルが増えたことでユーザーの購買経路は、より複雑になっています。

そこでMAツールを使えば、獲得したリードのアクションに応じてスコアリングしたり、ユーザーが自社ページへどのような経路でやってきたのか、分析したりすることができます。

しかし、MAツールも万能ではありません。ユーザーを細かくセグメント分けするには、やはり人の手によるチューニングが不可欠です。

リードナーチャリングを理解しておくことで、MAツールの導入後も「ユーザーがどのフェーズにいるのか?」といった分析や、分析内容によるツールの改善ができるので、より効率的にPDCAサイクルを回せます。

これまで以上にコンテンツの需要が高まっているから   

今、マーケティング分野で需要が高まっているのが「コンテンツ」です。

有益なコンテンツはユーザーに受け入れられやすく、いきなり購買に至らなくても「ユーザーが欲しくなったタイミングで自社の商品・サービスを買ってもらう」ことにつながるからです。

これまでコンテンツは、広告とくらべて即効性に乏しく、手間と時間がかかるため、集客の手段として目を向けられることは、あまりありませんでした。

しかし、ネット広告費の高騰による広告の費用対効果が悪くなってきたことで、企業の集客の戦略に変化が生じました。

そこで出てきたのが、コンテンツを使って顧客を育てるというリードナーチャリングの手法です。

コンテンツは、関心の浅い層からリピーターまで、幅広いユーザーとの関係性を保持するのに有効で、今後もコンテンツ制作関連の仕事は増えていくことが予想されます。

リードナーチャリングの理解は収入アップにつながる

Web系フリーランスにとって、リードナーチャリングの理解は収入アップにつながります。

なぜかというと、リードナーチャリングを知らない他のWeb系フリーランスと差別化を行うことができるからです。

「木を見て森を見ず」のことわざ通り、リードナーチャリングを理解していないことは、求められた成果物の全体的な位置づけを理解できないまま作業するのと同じことです。

クライアントにとっては、それだけコミュニケーションコストがかかり、コンテンツの質が担保されないことを意味します。

つまり、クライアントにとっては、わざわざフリーランスに発注するメリットがありません。

逆にリードナーチャリングをきちんと理解し、コンテンツの提案までしてくれるようなフリーランスだと、クライアントにとって高いお金を払う価値があります。

このレベルまでくると「ただの作業する人」から、「頼れるパートナー」として、クラアントの上流工程に関わるチャンスが期待できます。

そうなれば、あなたの収入アップにつながってくるでしょう。

Web系フリーランスのリードナーチャリングの制作例

ここまで、リードナーチャリングの重要性についてお話してきました。

では、ここからコンテンツの制作例と、リードナーチャリングの位置づけについてお伝えします。

以下について、表にまとめたので、ぜひ参考にして下さいね。

  • ユーザーの3つのステージ
  • 顧客の商品・サービスへの関心の度合い
  • コンテンツ制作のポイントと必要な制作物

ユーザーのステージ

顧客の関心レベル

コンテンツ制作のポイント

リードジェネレーション

潜在的な顧客 

・興味をひきそうな有益なコンテンツ

(コンテンツ例)
・イベント
・展示会
・無料資料ダウンロード
・オウンドメディアなど

リードナーチャリング

まだ関心が浅い 

・関係性を作るための有益なコンテンツ

(コンテンツ例)
・オウンドメディア
・メール
・セミナー
・SNS
・Web広告など

クロージング

比較検討

・購買につながるコンテンツ、または営業

(コンテンツ例)
・ランディングページ
・ホワイトペーパー
・Web広告
・直接営業など

ユーザーのステージごとに、求められる制作物が異なってくることがおわかりいただけたと思います。

ではここから、上記のコンテンツ制作に関わるWeb系フリーランスについて、解説していきます。

Webライターのケース

Webライターは、コンテンツ制作の現場において、もっとも需要が多い職種の1つです。

特にオウンドメディアと呼ばれる自社メディアに必要なコンテンツ制作に関わることが多くなります。

オウンドメディアは、リードナーチャリングにマッチするだけでなく、リードになる前の潜在層と呼ばれるユーザーまで幅広くカバーするため、大量のコンテンツを必要とするからです。

コンテンツ制作にあたってWebライターにもとめられる視点は、「ユーザーとの関係性を作るための有益なコンテンツ作り」です。

信頼関係があることで、商品・サービスの購入につながってくるからです。

ユーザーとの信頼関係を作るためには、自社の商品・サービスばかり勧めるのではなく、ユーザーの求める情報であれば、他社の情報を取り上げることも必要です。

Webデザイナーのケース

Webデザイナーは、Webサイトやランディングページと呼ばれる1つの商品にしぼった販売ページのデザインなどをします。

Webデザイン1つで、ユーザーのレスポンスが大きく変わることがあります。そのため、レスポンスの取れるWebデザインにするには、リードナーチャリングの理解は欠かせません。

なぜなら、ユーザーのステージや販売ページへの流入経路によって、訴求するポイントがことなるため、デザインも変わってくるからです。

クライアントによっては、デザインの見栄えよりも、レスポンスを重視するのでリードナーチャリングは理解しておいた方がいいでしょう。

Webディレクターのケース

Webコンテンツの制作を管理していくのがWebディレクターです。業務は多岐にわたり、コンテンツの企画から立ち上げ、計画の実行、進捗管理などをおこないます。

フリーランスでここまでのスキルがあれば、かなりの収入が見込めるでしょう。

フリーランスのWebディレクターの場合は、その経験を買われ企業のオウンドメディアなどをゼロから立ち上げることもあります。

リードナーチャリングの最初のステップから、ユーザーの購買後までの導線設計や分析も行い、リードナーチャリングに必要なコンテンツの企画や配置をおこないます。

それぞれのコンテンツに適したライターやデザイナーを見極めて発注するのもディレクターの大事な仕事です。

リードナーチャリングと主なコンテンツの特徴

上記にて、オウンドメディアなどリードナーチャリングのコンテンツについて少し触れましたが、他にもこのような媒体をリードナーチャリングに使うので解説していきます。

  • メール(メールマガジン、ステップメール)
  • ホワイトペーパー
  • 自社セミナー
  • SNS

メールマガジン

メールマガジンは、「ユーザーの抱える課題や悩みなどに訴求した情報」を定期的にメールで配信し、ユーザーとの関係構築につなげる施策です。

メールマガジンを通じて、まだ関心の浅い層からリピーターまで幅広いユーザーと接点を持ち続けるために使われます。

自社にリソースがある場合は、MAツールを導入して、セグメント化したユーザーに対し、それぞれ違ったメールを配信することで、より精度の高いアプローチも可能です。

コンテンツも大事ですが、メールマガジンはそもそもユーザーに読まれなければ、まったく意味がありません。

したがって、コンテンツの内容だけにこだわるのではなく、「ユーザーの興味・関心を引くようなメールのタイトル」「メール配信時間」にも注意しましょう。

メールの開封率や、ユーザーからの返信の多かったテーマなどをチェックして改善していくといいでしょう。

ステップメール

ステップメールは、あらかじめ作成しておいたメールをユーザーに段階的に送る施策のことです。

先ほどのメールマガジンと違い、クロージングまでがパッケージ化されているのが特徴で、「購買熱の高そうなユーザー」に対して、自然にアクションにつながるようにメールを段階的に配信していきます。

ユーザーの課題解決において、自社の商品・サービスがもっとも適している点などをアピールしてユーザーのアクションにつなげていきましょう。

ただしメールの1通目から、いきなりセールスすると、ユーザーに読まれなくなる可能性があるので、自然に購買熱が高まるようなシナリオを作ることが大事です。

ホワイトペーパー

ホワイトペーパーは、主にBtoBと呼ばれる法人向けの商品・サービスの詳細情報が掲載されたコンテンツです。

BtoB向けの商材は、高額なものが多かったり、社内の調整の都合があったりするため、なかなか即購入というケースも多くありません。

「自社の商材に興味があるが、じっくり比較検討したいユーザー」に向けて作られます。

自分達の購入したいタイミングで自社の商材を選んでもらうのには、情報のギッシリ詰まったホワイトペーパーはまさにうってつけといえます。

制作時には、スペック・詳細情報はもちろん、ユーザーのかかえる問題点をリサーチして、それが解決できることや、他社との違いなどがユーザーに伝わるようにするのが大事です。

また、「ただ単に情報だけ欲しい」というユーザーもいるため、ムダなアプローチをしないためにも、自社でデータをとりながらセグメントをわけていくといいでしょう。

自社セミナー

自社セミナーは、オンラインやオフラインの会場で、ネットではあまり出回っていない業界の最新情報などをユーザーに提供するものです。

比較的関心の浅いユーザーから、比較検討をしているユーザーまで幅広く使われるのが特徴です。

セミナーに参加するユーザーは、自社の商品やサービスに興味関心を持っていることが多く、セミナーの場でセールスをして、成約につなげるやり方も多くみられます。

ただし、BtoB(法人)向けの商品やサービスの場合は、成約まで時間がかかりやすく、情報の提供に留めて、営業にバトンタッチすることもあります。

セミナーコンテンツを制作するには、業界の最新情報やユーザーの興味・関心・悩みなどをしっかりリサーチするようにしましょう。

アンケートを取ったり、自社サイトで読まれているページ、ユーザーの流入経路など詳しく分析したりしてコンテンツ作りに反映させていくことが大事です。

SNS

SNSは、ユーザーの使っているSNS(Twitter、LINE、Facebook、Instagramなど)に向けて、有益な情報を発信するものです。

メール媒体と同じように、比較的関心の浅い関係性の弱いユーザーには、有益な情報を届けてじっくり育てたり、顕在層に対しては、商材やセミナーの案内をしたりします。

また、オウンドメディアの記事の投稿と連動させて、オウンドメディアへの流入を補完する役目を負わせることもできます。

SNSの場合、スマホユーザーがメインなので、じっくり読まれないことを念頭に入れ、よりコンパクトで伝わりやすいコンテンツにする必要があります。

ユーザーがSNSを使うシチュエーションを想定しながら、ユーザーに合わせた情報発信をしていくことが大事です。

Web系フリーランスがリードナーチャリングを無理なく学ぶ方法

では、Web系フリーランスが、リードナーチャリングを手っ取り早く学ぶ方法を2つほどご紹介します。

①自分の日々の購買行動を振り返ってみる

自分の日々の購買行動を振り返ってみましょう。特におすすめなのは、価格の高い商品・サービスを購入した時です。

価格の高い商品・サービスはユーザーに比較検討されやすいため、リードナーチャリングの手法が使われていることが多いからです。

以下のようなことをチェックしてみましょう。

  • 購入前にどういう悩みを抱えていたのか
  • 商品を知ったきっかけは何だったのか
  • どういう経路をたどって買ったのか
  • なぜその商品をほしいと思ったのか

このように、日々の購買行動を振り返ることで、ユーザーの購買行動を考える上でのトレーニングにもなります。

リードナーチャリングという視点で、ユーザーから求められるコンテンツを考えたりするのに役に立つので、ぜひやってみてくださいね。

②メールマガジンに登録してみる

誰か気になった人や、商品・サービスを提供している会社のメールマガジンに登録してみましょう。

そして、定期的に届いているメールをチェックして、配信先がどのようにリードを育てているのか調べてみてください。

また、メールのコンテンツだけでなく、件名や配信時間などもチェックしてみましょう。

実際にメールマガジンから何か商品・サービスを購入したのであれば、自身の購買に至った動機などを客観的に分析してみましょう。

③他社のオウンドメディアをチェックしてみる

他社のオウンドメディアをチェックするのも大事です。はじめのうちは、コンテンツのテイストやデザインなどを参考にするといいでしょう。

どのようなユーザーに対して、どのようなコンテンツを提供しているのか分析してみましょう。

分析に慣れてきたら「リードをどうやって獲得して、どのように育てているのか」といったより幅広い視点からもチェックしてみてくださいね。

まとめ

コンテンツの制作者がリードナーチャリングを理解すると、ユーザに対してどんなコンテンツが必要なのかわかるようになります。

Web系フリーランスであれば、より仕事の全体像が見えるようになり、クライアントとのやり取りもスムーズになるため、あなたの評価が上がるでしょう。

さらに経験を積んでいけば、スタートアップのゼロの段階から「どのようなコンテンツを作ったらいいのか」など見えてくるようになります。

そうなれば、あなたの市場価値は上がり、収入アップにもつながってくるでしょう。

リードナーチャリングを勉強するには、自分の日々の購買行動を振り返ってみたり、メールマガジンに登録したりするのがおすすめです。

ぜひリードナーチャリングを意識して、コンテンツを作ってみてくださいね。