ストックオプションとは?ビジネスパーソンなら知っておきたい仕組みやメリットを解説

現代の日本では会社を設立するための制度的な障害は小さくなっており、20代の若いころから経営にチャレンジする人も増えています。

ベンチャー企業を自分で立ち上げる、あるいは仲間に誘われて経営に参画する時に理解しておきたいのが、経営者や従業員にあらかじめ自社株購入権を付与する「ストックオプション」制度です。

この記事では「ストックオプション」について知っておきたい基礎知識を解説します。

ストックオプションのおかげで6億円長者に?

日本でストックオプションが話題になった事例で思い出されるのが、2018年の「メルカリ」の上場です。

創業5年で上場したメルカリの株価は、上場当日の終値で時価総額7,172億円にもなり、ストックオプションのおかげで30名以上の社員が一晩にして最低6億以上の資産を手にしたというニュースが流れました。(ストックオプション付与の条件などは考慮していません)

このようにストックオプションは、小さい会社が成長して上場を果たした場合に大きな効果や魅力を発揮する制度なのです。

ストックオプションとは?

ストックオプションとは、あらかじめ決められた一定の価格(権利行使価格)で会社から株式を購入できる権利です。

つまり株を決まった金額で購入できるため、株価がその価格を上回った時に株を購入・売却することで差額を利益として得られるのです。

具体的に考えてみましょう。あるベンチャー企業が、社員に株式1万株を100円で買う権利を与えました。

その会社が株式を公開し、1株当りの株価が5,000円になったとします。

社員はそのタイミングで会社から1万株を100円で購入し、全てを株式市場で売却しました。

社員は100万円で購入した株を5,000万円で売却できたので、差額4,900万円を利益として受け取ることができました。

最終的に手に入る金額が会社の株価と連動するため、ストックオプション制度はインセンティブとしての機能も持っています。

また会社の業績が悪化した場合には、ストックオプションの権利者は権利を行使しなければいいだけなので、損をするわけではありません。

ストックオプションに向いている企業は?

ストックオプションは、権利を行使して入手した株を売却できることが必要なので、

  • 将来的に株式上場を目指すベンチャー企業
  • すでに上場している企業

であることが必要です。

実際にストックオプションを採用しているのは、IT系ベンチャー企業などが多いです。

このような企業の場合、実際に成長スピードが速く短期間で株価が急上昇することもあります。

ストックオプション制度採用事例

米スターバックス・コーヒー社

米スターバックス・コーヒーは、1991年から「ビーンズストック」というストックオプション制度を導入しています。
この制度では勤続期間や労働時間等の一定条件を満たしていればパート従業員もオプションの付与対象者としています。
経営陣によると、従業員のモチベーションを喚起する目的があるとのことです。

米アップル社

創業者スティーブ・ジョブズ氏死後、優秀な幹部社員の流出を防ぐ目的で2011年11月、同社幹部にそれぞれ15万株の制限付き株を認証しました。

同社に残ってもらうという目的のため、半分を2013年、残りを2016年に渡すという仕組みをとりました。

米銀ゴールドマン・サックス・グループ

同グループは、2008年の深刻な金融危機を背景に報酬費用を約半分に減らしましたが、同時に優秀な人材の流出を防ぐ為に3,600万のストックオプションをパートナーに付与しました。

当時約84ドルだった株価は2018年ごろに3倍の260ドル程度になり、パートナー陣はストックオプションを行使し大きな利益を得ました。

ストックオプションのメリット

事例を見てもわかるように、ストックオプションにはさまざまなメリットがあります。

優秀な人材を確保しやすくなる

ストックオプション制度があることで、将来的なインセンティブを広くアピールでき、より優秀な人材を確保できるようになります。

さらに、入社した優秀な人材が「ストックオプションの権利を行使する前に辞めたら損だ」と考えるようになり、人材の流出を防ぎやすくなります。

財務の余裕がなくても人材を集められる。

ストックオプションの最大の特徴は、会社は1円も現金を払っていないのに、社員は、報酬として多額の現金を手に入れていることです。

ストックオプション制度を活用すれば現金を払うことなく、優秀な社員に多額の報酬を与えることが可能です。

従業員のモチベーションがアップする

ストックオプションを付与することで、従業員や取締役のモチベーションアップが期待できます。

自社の業績が向上すればするほど株価が上昇して、ストックオプションでの利益が大きくなります。
そのため、従業員や取締役が、「会社の価値を上げる」という点で一致した目標を持ちやすくなります。

権利付与された従業員のリスクがない

ストックオプションはいわば株式の売買で利益を出すわけですが、通常の株式会社取引と違い金銭的に損をするリスクはありません。

会社の株価の上昇を期待して従業員が自社株を購入していた場合、株価が下落した際には損失を被ってしまいます。

しかし、ストックオプションの場合、万が一株価が下落したら、そのときは権利を行使しなければよいので損失は出ません。通常の株取引と比べてリスクはゼロだといえます。

ストックオプションのデメリット

ストックオプションにはこれら多くのメリットに対して、デメリットもありますので確認しておきましょう。

業績悪化でのモチベーション低下

どんなに成長性がある会社でも、社会状況の変化などの要因で業績が悪化し株価が下落する可能性はあります。

そのとき、ストックオプション制度が目当てで入社した従業員や取締役のモチベーションが下がってしまうことは否めません。

社内で不協和音が発生する

ストックオプションを得ている従業員や取締役と、そうでない従業員や取締役が混在している場合、社内で不協和音が発生することがあります。

会社業績への貢献度、勤続年数などによって、ストックオプションを付与する基準を明確に定めておく必要があります。

権利行使後に社員が離れる

ストックオプション制度を前面に押し出して採用した人材の場合、金銭的な価値に重きを置いていることがあります。そのため、ストックオプションの権利を行使して、多額の利益を得た後はすぐに会社を辞めてしまう可能性があります。

また社内も、直近の株価を重視し短期的な利益を追求する雰囲気になりがちであり、社会貢献の精神ややチャレンジングな新規ビジネスが生まれにくくなります。

ストックオプション制度を作る時にはこれらのデメリットをできる限り避けるため、付与額や行使条件に十分配慮した設計が必要です。

ストックオプションには適切な制度設計が必要

ストックオプションは、従業員や取締役のモチベーションの源泉となり、会社の業績向上に寄与する可能性があります。

従業員としても、会社が成長すれば給与とは比較にならない利益が得られる可能性があり、非常に夢のある制度です。

ストックオプションは、うまく活用をすれば低いリスクで会社をプラスに動かすことができる制度なのです。ただし導入にあたっては、適切な制度設計が必要なので、制度や事例をよく検討しましょう。
また効果的な設計のためには会計・税務上の処理に関する知識も必要です。

今回紹介した内容はストックオプションの特徴のごく一部であり、実は他にもさまざまな種類や制度があります。すでにオプションの付与対象になっていたり、今後対象になる可能性がある場合は、その権利内容や行使のタイミングについて考えておくといいでしょう。