就職活動をしている学生や転職しようとしている20代からよく聞く言葉があります。
それが、「どの会社に行っても通用する人間になりたい」。
つまり彼らは、転職を前提に入社する会社を探しているということです。
終身雇用は保てないと経団連も言っていますし、実際に40代でリストラにあって再就職に苦労している大人たちをメディアなどで見たらそう思うのも当然でしょう。
では実際に、どんなスキルを身につければどの会社でも通用する人材になれるのでしょうか?社会人として絶対に身につけておくべきスキルというものはあるのでしょうか。
今回は自身が複数の大企業に転職経験を持ち、成果を残してきた田端信太郎さんの著作「これからの会社員の教科書」について、いくつかの章をピックアップして、「どこででも通用する人材になりたいなら身につけるべき行動や考え方について解説します。
目次
30歳を過ぎて気づくのでは遅すぎる「仕事の基本」
「これからの会社員の教科書」著者である田端信太郎氏はTwitterでも活発に情報発信をしているビジネスパーソンです。
この本が発売された時、40歳以上のフォロワーの方が「とても勉強になりました!」というメッセージを送ったところ、田端さんは
「40歳を超えてこの内容を読んで、勉強になったと言っているようじゃ、あんたやばいよ」
と返したのです。
「良い意見をくれたフォロワーに対してそんな態度はどうなんだ」と言う意見もあります。
しかし実際に中身を読んでみると、書かれていることは確かに新卒1年目で学ぶべき、もしくは理解しておくべき本当に基本的な内容でした。
一方そんな基本的な内容でも、最初に入った会社で出会う人たちよって、あるいは日本の社会的な状況によって、若いビジネスパーソンが身につけにくくなっているのも事実です。
リクルート→livedoor→LINE→ZOZOでわかったこと
著者の田端信太郎氏は、Twitterフォロワー数21万人、「新R25」「NewsPicks」には仕事論を掲載している、ビジネスインフルエンサーともいえる存在です。
田端氏はリクルートからlivedoor、その後LINE、ZOZOと日本的な大企業から外資系、ベンチャー企業などを渡り歩いてきました。
そんな規模も文化も違う会社を渡り歩く中で、必ず評価される共通項として考えるのが、結局新人時代に教わった仕事の基本だったというのですから、説得力があります。
・仕事の基本を学びたい、入社1年目の方
・自分の仕事の姿勢について振り返りをしたい、 入社4,5年目の方
・”当たり前のこと”の伝え方に悩む、上司・先輩・メンターの方
この本は上のような立場の人向けに書かれたとのことです。
田端さんが考える「プロの仕事マインド」が71個に分けて書かれており、1つ2ページから4ページ程度にまとまっています。
「風邪を引いたら、休むべきか」
「ミスをしたとき、どうすればいいのか」
「これからの時代に生き残るために、なにを学べばいいのか」
この本ではそのような若手社員なら必ず考えたことのある疑問や、普段から抱えている不安について、田端氏の考えが述べられています。
この記事ではその中から7つを紹介します。
①仕事を任されたらまず「ゴール」を確認する
若いビジネスパーソンは、上司の指示を受けて仕事をすることが多いです。
しかし仕事をしている時、急に「その仕事を何のためにやっているか」と聞かれたら、すぐに答えられる人はあまりいないのではないでしょうか。
本には「仕事では、何よりもきちんとゴールを把握しておかなければいけない」とあります。
サッカーに例えると、仕事を振られるというのはサッカーでいうパスが回ってきている状態と考えられます。
当然ゴールを決めて試合に勝つことが最終的な目的なので、ゴールポストはどちらにあるのか、今はどっちが何点差で勝っているのか、残り時間はといった基本的な状況を意識できなければ、プロのサッカー選手とは言えません。
だとしたら、自分が「3週間後にA社に提案をよろしく」と上司に言われたら、
目的は受注でいいのか、以前に提案したことはあるか、いくらまでなら値下げしても大丈夫かなどを依頼してきた上司に確認する必要があります。
「ボールを持ってなんとなくフィールドを走り回って汗をかいているだけで仕事したと勘違いしている人が多い」には納得です。
自分にまかされた作業の部分しか見ずに、全体の目的からしたらずれた、無駄な仕事をしてしまう人が多いのです。
(06 仕事を振られたときに確認すべきこと)
②自分なりの仮説や提案を用意して質問する
わからないことについては、上司に質問をする必要があります。
その時に気をつけたいのが、「クローズド クエスチョンで聞く」ということです。
クローズドクエスチョンとは「はい」か「いいえ」で答えられるような質問です。
たとえば先方に提案する内容を上司に確認する時でも、
「どういう切り口で提案をすべきですか」
ではなく、
「この提案内容で良いでしょうか」
と聞くべきだということです。
この聞き方であれば、上司は「いいよ」「だめだよ」というだけなので答えるのに負担を与えません。
つまり、クローズドクエスチョンで質問をするためには、自分なりの仮説や提案を持っておく必要があります。
上司に答えを教えてもらうのではなく、答え合わせだけお願いするんですね。
返事をもらえるスピードもアップするので仕事は速く進みますし、そうすれば最終的に自分の評価に反映します。
(13 上司への質問は「クローズドクエスチョン」で)
③反論も想定して準備しておく
新人はよく「正しい意見は通るはずだ」「素晴らしい企画は実現されるはずだ」と誤解しています。しかし正しいことを実現するにもそれなりの段取りが必要で、それがビジネスのルールなのだと田端さんはいいます。
正しい意見だとしても、事前に反対者の意見を把握して会議で反論ができるように準備したり、反論できるだけのデータを用意するなどが必要であり、「正しいから大丈夫だ」という思い込みだけでチャレンジしたらそれは失敗します。
ビジネスではこの事前ヒアリングを「根回し」と言います。
根回しという言葉のイメージが悪いようですが、事前に懸念点を把握し反論への対策をしておくための予習なのです。
どんな会社にも人間関係があり、それぞれの事情や考えがありますよね。
それを把握し、目的達成のために誰にどう働きかけるべきか考えることは、どの会社に行っても確実に必要な考え方でしょう。
(21 「正しい意見」が通るとは限らない)
④生活者としての視点を忘れない
情報収集は大切ですが、「一方で生活者として普通に生きることも大事」です。
以前、著者の田端さんがスマホを使ったマーケティングのセミナーに登壇し、大手企業の経営幹部100人ほどの前で講演を行いました。土日の昼間に行われたということで、わざわざ休日に集まって勉強しようという人たちですから、意識の高い人たちだったと言えます。
しかし、ちょうどポケモンGOが流行っている時期だったのでやったことがある人はいるかと聞いたら、ほとんど手が上がらなかったそうです。
スマホでマーケティングがしたかったら、セミナーに出るよりも、まず手元のスマホでポケモンGOをやる必要があります。
実際にやってみると、世間で話題になっているポケモンGo関連のニュースがや、人がなぜポケモンGoに夢中になるかがわかるからです。
仕事に熱心なのは大事なことですが、自分が普通に生活しその中で日々感じることこそが、商品やサービスを使うユーザーの感覚なのですね。
普通の感覚を大事にすることが、優れた商品開発やマーケティング、セールスなどのビジネススキルになっていくのです。
(46 ポケモンGOを語るよりポケモンGOをやれ)
⑤ 決算や税制などビジネスのルールを知る
ビジネスをやるなら、基本的なルールを分かっておく必要があります。
しかし実際には、最も基本的な財務諸表である賃借対照表や損益計算書についても内容を理解できる人は多くありません。
しかしこれらはビジネスにおける点数計算のルールとも言えます。
例えば得意先から、「今季は儲かりすぎているから何か面白い話ない?」と言われた時、すぐに「儲かりすぎているということは利益調整が必要で、その時に税務署が認める費用に計上できるもの」をパッと提案できれば「こいつ使えるな」と思われるのです。
普通の営業マンはこのような話を知らないので、決算や税制について知っているといきなり雲の上のレベルに到達できるということです。
(53 ビジネスのルールを知らない人が多すぎる)
⑥何でも許される新人時代こそがんばる
今の20代は頑張りたいと思ってもなかなか頑張らせてもらえない環境にあります。
確かに、働き方改革などで残業は削減されているし、パワハラが認知されて上司からの指導も以前に比べるとマイルドになっています。
そうだとしたら、今の20代の若手が成長したいと思ったら自発的にやるしかありません。
周りがそんな状況だから、自分で勝手に求められている以上のこと・苦しいことを進んでやれる人は、「抜け駆けできる状態」だということなのですね。
新卒で入ったら、特に最初の2年はマリオのスター状態で何をやっても許されます。
遅くて27、8歳までに「自分はここで勝負する!」という場所を見つけることを目指しましょう。
(60 新人時代にがんばると20代後半で楽になる)
⑦正しい食事や運動をして健康を保つ
「作業」と「仕事」の違いは何でしょう。
作業は時間をかければかけるほど成果物ができていきます。必然的に長時間労働になりがちです。
一方、仕事は時間をかければその分いい結果が出るわけではありません。10秒で最高の仕事ができる場合もあれば、3年かかっても全然駄目な場合もあります。
だからなるべく短時間で、最高のパフォーマンスを発揮できる人が「できる仕事人」だということなのです。
例えば、会社で偉くなって出張の時にビジネスクラスに乗せてもらうのも、贅沢をしているのではなく、ちゃんと寝ていいご飯を食べて最高のパフォーマンスを出してもらうためなのですね。
このように正しい食事や運動をして、健康的で落ち着いた心身の状態を保つことも、仕事で成果を出すための土台として非常に重要なポイントです。
(67 時間に「レバレッジ」を効かせるために)
本の内容はYouTubeでも聞ける
71つのポイントのうちの7つをかいつまんで紹介しましたが、実はこの「これからの会社員の教科書」は、全文が田端さんのnoteで公開されています。
また、実はご本人がYouTubeで内容について1つ1つ語る動画も更新中で、本に載っていないようなエピソードも交えられていて、合わせて見ると理解が深まります。
「どこででも活躍できる人間」になりたい20代は必読
この本の内容は、今回紹介した7つを見てもわかる通り、確かに「30歳になってこの本から新鮮な気持ちで学んでいる用ではやばい」といえるほど基本的なことです。
しかし、今こんなことを教えてくれる会社や先輩も少ないだろうと思うのも事実です。
そして20代のうちに基準が低い会社や人に慣れてしまったら、こんなもんかと思っているとあっという間に30歳になり、その後のリカバリーがとても難しくなります。
だから、この本はやはり新卒入社した社員は一読の価値があります。
その他にも20代のビジネスパーソンの方、自分がどこででも通用するかどうか不安な方はぜひ読んでみてください。