近年、テレワークの普及とともに「電子契約」のサービスが急速に広がっています。
これは、フリーランスにとって無関係なことではありません。クライアントから電子契約を求められる機会が増えることを意味しているからです。
JIPDEC(⼀般財団法⼈⽇本情報経済社会推進協会)の調査によると、電子契約を利用している企業の割合は、2020年7月の41.5%から、2021年1月には67.2%まで増加しました。
一方で、これまで契約書なしで仕事を受注することが多かったフリーランスにとっては、クライアントに電子契約での締結を提案しやすくなるという状況になっています。
電子契約は、事務処理まで1人で行っているフリーランスにとっては、書類の郵送や管理の手間がかからないので、大変魅力的です。
この記事を読み、ぜひ電子契約について学び、積極的に取り入れてください。
目次
電子契約とは電子文書で交わす契約のこと
電子契約とは、書類の郵送でのやりとりを行わず、アップロードされた電子文書に対して電子署名などをして交わす契約のことです。
2020年6月に国が、契約書に「ハンコは不要」との見解を示したことから、クラウド上で完結できる電子契約サービスが急激に増えました。
通常、電子契約は法的なトラブルを回避するために、電子帳簿保存法の要件を満たした方法で行われます。
紙の契約書と電子契約のワークフローを比べると、以下のような違いがあります。
【紙の契約書】
①紙の契約書が届く |
【電子契約の場合】 ①契約書がアップロードされる ↓ ②契約書に電子署名で承認 契約締結まで、最短で即日 |
上記の例は、クライアントから契約書を受け取った場合の流れになります。このようにスピード感に大きな違いがあります。
フリーランスにおける電子契約のメリット
さきほど、紙の書類と電子契約のワークフローの違いについてご説明しました。ここからは実際の実務上でのメリットについて、さらに具体的に説明していきます。
作業効率がアップし時間が節約できる
電子契約のメリットは、なんといっても作業効率がアップすることです。
特に「事業者型(立会人型)」と呼ばれるクラウド型の電子契約であれば、アップロードされた契約書(もしくはこちらがアップロードした契約書)に対して、電子署名するだけでOKです。
たとえば、割印1つとっても、契約書にハンコを押す作業は意外と神経を使いますよね。こうした無駄に神経を使うことが少なくなります。
また、こちらから契約書を作る場合は、面倒な製本作業や、郵送や書類の受け取りなどをする必要もないため、大幅な時間の節約になります。
フリーランスにとって「時間は命」なので、作業効率のアップは非常に大きなメリットです。
収入印紙代が節約できる
電子契約の場合、業務委託契約書に収入印紙を貼る義務が生じないので、収入印紙代を節約できます。
とくに継続を前提とした契約を交わしているフリーランスであれば、業務委託契約書に収入印紙を貼付する機会があるのではないでしょうか。
収入印紙を貼る機会が多いフリーランスであれば、電子契約のサービスは費用対効果に見合う可能性が高いので、導入を積極的に検討したいところです。
管理が圧倒的にしやすい
上記であげたメリット以外でも、電子契約には「管理のしやすさ」というメリットがあります。
データがクラウド上に保管されているため、パソコンやスマホで、どこからでも簡単にアクセスできるからです。
また、保管するときに物理的な空間スペースを必要としない、紛失するリスクが減るなど、管理にかかるコストを減らすことができます。
電子契約のデメリット
これまでお伝えしてきたように、さまざまなメリットがある電子契約ですが、デメリットもあります。ここでは、電子契約を導入するときのデメリットについて解説します。
サービスの導入に金銭的コストがかかることがある
さまざまな利便性のある電子契約ですが、注意も必要です。
費用対効果を計算しないで電子契約サービスを導入してしまうと、逆に金銭的コストが以前よりもかさんでしまうことがあるからです
たとえば、取引先があまりなく取引金額も少ない状態なのであれば、有料のプランではなく無料のプランで十分でしょう。
セキュリティ面で100%安全というわけではない
セキュリティ面は、100%安心というわけではないということを理解しておきましょう。クラウド上にデータがあるということは、サイバー攻撃にさらされる危険もあるからです。
ただし、紙の書類であったとしてもセキュリティ面でのリスクを完全になくすことはできるわけではないので、紙の書類とくらべて一概に電子契約がセキュリティ面で劣っているとはいえません。
電子契約に必要な電子署名とは
電子署名とは、電子印鑑や文字入力による署名のことで、紙の契約における印鑑やサインがこれに該当します。
電子契約のサービスによっては、自分の名前(姓)を入力すると、自分の名前の電子印鑑が生成され、そのまま押印することもできるサービスもあります。
また、電子契約を締結するにあたっては、「電子署名法の基準を満たした」電子署名が必要になります。
電子署名法の基準をクリアした電子契約サービス上なら、署名のスタイルがなんであれ、法律的にはまったく問題ありません。
仕組みとしては、電子契約のサービス提供会社が、その会社の名義で電子証明書を発行し、署名の証拠力を担保してくれるからです。
こうした電子契約のスタイルは、電子契約のサービス提供会社が、契約にあたって当事者の間に入ってくれることから、「事業者型(立ち会い型)」と呼ばれています。
フリーランスが電子契約サービスを選ぶときの5つのポイント
ここまで電子契約のメリットやデメリットなどについて解説してきました。ここを踏まえた上で、電子契約のサービスの導入について、
では、ここからフリーランスが電子契約サービスを選ぶときの5つのポイントについて解説していきます。
電子帳簿保存法や電子署名法に対応している
まず、電子帳簿保存法や電子署名法に対応しているかどうかを確認しましょう。
上記の要件を満たしていない場合は、クライアントと契約の「真正性」をめぐってトラブルの元になりかねないからです。
とくに海外の電子契約サービスを使う際は、いくら安いからといっても日本の法律に対応していない可能性があるので気をつけましょう。
クライアントに料金が発生しないか?
自分から、クライアントに対して電子契約サービスを提案するとき「クライアントに電子契約自体の費用が発生しないか」気をつけましょう。
手数料がちょっとした金額であっても、クライアントからあなたの評価を下げることにつながりかねないからです。
高額な契約など、証拠力や真正性を強く担保するための「当事者型」と呼ばれる契約システムが必要な場合をのぞいては、極力さけるようにしましょう。
また、電子契約のサービスによっては、契約者の双方に料金が発生するケースもありますので気をつけてくださいね。
シェアが多いか
意外に思われるかもしれませんが、シェアの多さも考慮に入れておくべき点です。
たとえば、双方がことなる電子契約サービスを利用していた場合、「どちらの電子契約サービスを使うのか」ということになりますよね。
しかし、シェアの多いサービスを使っていることにより、そうしたこと自体が減ってきます。
また、クライアントに電子契約サービスを提案したいとき、シェアの多さは説得材料の1つになります。
コスト面で採算が合うか
印紙代が浮くのが電子契約のメリットですが、「トータルで見た場合、コスト面で採算が合うか」を判断することが大事です。
たとえば、もともと契約数もそこまで多くなく、郵送代や印紙代などがかかっていなかったのに、有料の電子契約サービスを使っても、逆にコストがかさんでしまいますよね。
ですので、特に契約数が多くないのであれば「無料プラン」のある電子契約サービスを選ぶようにしましょう。
また、電子契約のサービスは一度使うと中々変えづらいため、きちんと検討して申し込む必要があります。
セキュリティ面
セキュリティ面での安全性も大事です。この点に一切ふれていない電子契約のサービス会社には注意が必要です。
なぜなら、データがクラウド上に保管されるため、サイバー攻撃などに対してきちんと対処し、管理していく必要があるからです。
もちろん、サイバー攻撃などのリスクをゼロにすることはできませんが、どれだけ安全性について配慮しているかをしっかり確認しましょう。
フリーランスにおすすめの電子契約サービス
さきほど、電子契約を選ぶポイントについて解説してきましたが、ここからは具体的なフリーランスのおすすめの電子契約のサービスをご紹介します。
クラウドサイン
まず、最初におすすめしたいのが、弁護士ドットコムが運営している「クラウドサイン」です。
国内シェア数がNO1で、「月5件までの無料プラン」があり、ライトユーザーのフリーランスでも導入しやすくなっています。
はじめて使う人でも、PDFをアップロードするだけなので使いやすく、シンプルな画面設計になっています。
フリーランスの立場として気になるのが、クライアントにどれだけ手間や費用がかからないかということですよね。
その点、クラウドサインの場合、クライアントがアプリに登録する必要や費用も発生しません。
さらに特筆すべき点は契約書のリーガルチェックで、簡易チェックであれば500円で受けられます。
とりあえず電子契約サービスを導入してみたい人は、まずこのクラウドサインを検討してみるといいでしょう。
電子印鑑GMOサイン
電子印鑑GMOサインも、「月5件までの無料プラン」があります。大きな特徴は、印影を登録できる点と、手書きサイン文字の入力ができることです。
フリーランスで、オフラインで対面での営業する機会がある人は、タブレットなどに手書きの契約を求めることも可能なので、手書きサインの機能があるのは便利なのではないでしょうか。
また有料のプランであれば、契約種類が事業者型(立会人型)だけでなく、当事者型とよばれる契約も選べるのも特徴です。
当事者型の契約では、クライアントにも費用が発生してしまいますが、法的な証拠能力が高いとされ、大きな金額の契約では当事者型の方が向いているとされています。
対面営業をするフリーランスには、おすすめの電子契約サービスです。
みんなの電子署名
ある程度の機能がほしいけど、そこまでお金をかけたくない方におすすめなのが「みんなの電子署名」です。
上記であげたサービス同様、相手には費用が発生しません。また、他のサービスでは有料となるような「ワンタイムパスワード」「ユーザー数無制限」といったオプションが無料となっているのが特徴です。
ただ、デメリットは、文書ファイルを長期にわたって保存したい場合に費用が発生することです。
1年間を過ぎると、1〜50文書までで月額で500円(税込550円)かかります。逆にいえば1年間は無料なので削除をした場合、料金は発生しません。
他のサービスの無料プランも、契約数が増えると有料になったりするので、トータルの料金をくらべてみるといいでしょう。
実際に電子契約サービスを使ってみよう
では電子契約サービスの画面を使って、実際にどんなものかを見てみましょう。ここでは、シェア数NO1の「クラウドサイン」で解説していきます。
まず「クラウドサイン」のサイトにログインします。
①ログイン後「新しい書類の送信」をクリック
②書類(PDF)をアップロードするか、テンプレートから選択
→今回は「テンプレートから書類を準備」を選択
③テンプレートが表示されるので、そこから選択
→今回は「業務委託基本契約書」を選択
⑤送信先の会社名やメールアドレス・氏名を入力
⑥空欄に会社名や業務内容など入力
⑦送信内容の確認画面が表れたら「送信する」をクリック
あとはクライアントにメールが送信されますので、クライアントがリンク先をチェック、契約内容を確認後、そこからクリックすれば契約が終了です。
締結が終了した場合、締結済みフォルダへ移動されます。
クライアントから契約を求められた場合
クライアントから、クラウドサインでの電子契約を求められた場合は、自分のメールアドレスにメールが届くので、そこからリンクをクリックします。
そこから「書類の内容に同意」をクリックすればOKです。
電子契約サービスの導入後に考えておきたい2つのこと
ここまでお話ししてきたように、電子契約のサービスを使うことで、契約に関する事務作業を大幅にカットすることができます。
フリーランスとしては、積極的に導入したいところですが、導入後にどのような問題が起こってくるのかをイメージしておくといいでしょう。
よくあるのが、以下のような2つのシチュエーションです。
- クライアントが電子契約のサービスに加入していない場合
- クライアントの使っている電子契約サービスが、自分とことなる場合
クライアントが電子契約サービスに加入していないとき
急速に普及しつつある電子契約サービスですが、クライアントが電子契約サービスに加入していないケースもあるでしょう。
こうしたケースでは、まずクライアントの状況を確認することが大事です。そこでクライアントが電子契約に興味がある場合は、話は早いかもしれません。
電子契約のメリットや、クライアントに費用面での負担が生じないこと、メールアドレスがあれば簡単に契約できることなどを伝えてみましょう。
さきほどご紹介したサービスであれば、クライアントが電子契約のサービスに登録する必要もなく、金銭的なコストも発生しないため、提案をしやすいでしょう。
クライアントが別の電子契約のサービスを使っている
クライアントから、自分の使っている電子契約のサービスとは別の電子契約を提案された場合は、基本的にはそのサービスを使ったほうがいいでしょう。
やはり仕事を受注する側としては、基本的にはクライアントに合わせるのがマナーだからです。
ただし、例外もあります。
具体的には、クライアントの使っている電子契約サービスが電子帳簿保存法に適合していないサービスを使っている場合です。
この場合は、そのことを伝えたうえで、自分の使っているサービスを提案するか、または2通用意し、それぞれに電子署名をするという方法もあります。
まとめ
コロナ禍以降、電子契約のサービスが急速に広がっています。紙の書類でのやりとりとは違い、オンラインですべて完結するのが魅力です。
アップロードされた契約書に、電子署名するだけで簡単に契約を締結することができます。
これからは、クライアントから電子契約を求められたり、自分からクライアントに電子契約提案したりする機会も増えるでしょう。
もしクライアントから、電子契約を求められた場合は、基本的にはクライアントに合わせるのがベストです。
そのときは、クライアントの使っている電子契約サービスが、「電子帳簿保存法や電子署名法に対応しているか」よく確認しましょう。
電子契約は、「時間が命」のフリーランスにとって、作業の効率を高めてくれます。無料プランであれば導入のハードルも低いので、この機会にぜひ導入を検討してみてくださいね。