私が墓石営業・ネイリストを経て、30歳でWebデザイナーに転職した理由(前編)

何を仕事に選ぶかは、人生の満足度や豊かさに大きく影響します。

仕事は収入に影響するだけでなく、サラリーマンの場合毎日3分の1の時間をどう過ごすかに関わるからです。

好きなこと・やりたいことを仕事にしたいと願う人は多いですが、簡単なことではありません。途中で諦めてしまう人や、挑戦するには年を取り過ぎてしまったと思っている人もいるでしょう。

しかし実は、希望と違う仕事を続けているうちに、本当に自分がやりたかった仕事に役立つ経験や考え方を身につけていることもあるのです。

今日は20代で希望と違う仕事の経験を積んだのち、まったく違う職種であるWebデザイナーに転職した株式会社リスティングプラスのWebデザイナー尾辻涼子さんにお話を聞きました。

20代で墓石の営業とネイリストを経験

NobyNoby(以下N):尾辻さんは今Webデザイナーとして活躍されていますが、具体的には毎日どんな業務をされているのですか?

尾辻さん:今はWebデザイナーとして、主に広告運用の中で発生するWebサイトやデザインの修正業務をしています。

弊社は制作会社ではなく、Webマーケティングや広告運用の会社なので、「広告の成果が良くないからデザインをこういう風に変更して欲しい」とか、「広告審査を通したいからここを直してほしい」という、修正の依頼が日常的にきます。

広告を早く再開させるためにも、早く対応を完了したいので、量が多くて自分だけで対応できない時は社内の他のデザイナーに協力してもらったりして、スピードを心掛けています。

あとはテストをしたいから、別パターンのヘッド画像やページを作って欲しいという依頼もありますね。

N:経歴がちょっと変わっていると聞いたのですが、前職はどのような職業だったのですか?

尾辻さん:学校を出て一番最初に正社員になったのが、墓石の営業でした。

N:墓石の営業ですか?それは珍しいというか、どんなことをするのか想像つかないですね。

尾辻さん:売っているものが墓石なだけで通常の営業と同じなんですよ。お寺の檀家さんを回るルート営業とか。

まずはメンテナンスから入りますね。納骨の時にお墓を開けたり、墓石にお名前を彫ったりする依頼が来るのですが、その時に墓石を見てあまりに古いようなら「そろそろ新しいお墓はいかがですか」という感じでおすすめしていました。

N:墓石というと非常に高い商品のように思いますが価格帯はどれくらいだったのでしょうか?

尾辻さん:墓石にも価格がいろいろあるので、中国産の安いものは30万円くらいから、国産の庵治石(あじいし)のものは1,000万円するものもありました。
3年ほどその墓石の営業をやって、その後はネイリストになりました。

N:ネイリストもまったく違った職業ですよね。

尾辻さん:ネイリストとしては3年ほど勤めて、最後には店長にという声をかけていただけました。

仕事は楽しかったんですが、仕事で使うジェルに対してアレルギーが出るようになってしまったこともあって、長く続けられる仕事をしたいと転職を決意しました。

この時の転職にはその他にも、

  • しばらくは上のポジションが空かなさそうだった
  • 1対1でお客さんと話し続けることが苦手だった

という理由もありますね。

N:長く続けるということが難しいと感じられたんですね。

尾辻さん:そうですね。ネイリストという仕事自体は好きだったのですが、長期的なキャリアを考えると違う職業に転職したほうがいいと思いました。

諦めたWebデザイナーに30歳でもう一度挑戦

N:ここまでのお話を伺うと、あまりWebマーケティングやWebデザインの世界と関わりがなかったと思うのですが、Webデザイナーになろうと思われたのはどうしてですか。

尾辻さん:やっぱり「自分がやりたいことをやりたい」と思ったのが理由ですね。

N:というと元々はデザイナーになりたかったのでしょうか。

尾辻さん:学生時代からデザインやモノづくりが大好きで、だからデザイナーって、実は一番最初になりたかった職業なんです。
クラシックバレエや創作ダンスをしていたりと、自分で表現することも好きでした。

でも、当時はデザイナーという仕事に興味や憧れつつも、それを仕事に選ぶことができませんでした。

N:仕事として選べなかったというのはなぜでしょう。

尾辻さん:自分の成果物が人に見られて、私が思ったような受け取られ方がされなかったり、批判されたりしたら怖いっていう気持ちから、早々に断念してしまいました。
やりたいことを仕事にするんじゃなくて、できることを仕事にしようって。

N:好きだから批判されることが怖いと思ってしまったんですね

尾辻さん:当時はそうですね。

頭では分かっていたんですけど、デザインしたものって、制作者の内面が色濃く反映されているように、制作者本人からは見えるんです。自分が通った制作物に、愛着が湧いてしまって、だから人に批評されると自分自身がダイレクトに傷ついてしまって。

N:それはクリエイティブな仕事をする人にはありがちな感覚かもしれませんね。

尾辻さん:でも、墓石の営業とかネイリストをするうちに、いろいろな人や経験から学んで変わっていきました。
仕事はどんなときも「相手がいてこそ成り立つ」ものだということがわかったんです。

自分目線から見るのではなく、相手目線で物事を見れるようになったのだと思います。
仕事を依頼してくれた相手が満足するように仕事をする、それがプロだとわかったんです。

今はどんなに熱を入れて作っても、どんなに手間暇かけて作っても、完成したら、あとは相手に委ねる、制作者は手を引くことで仕事は完了するんだと思っています。

これができるようになって、初めて仕事としてのデザインができるようになったと、今になって思います。

自分にもできることと思って営業をしたり、ネイリストになったりしましたが、その中で自分と言う人間と、プロとして仕事をする私の区別がついてきたんですね。

それで、ネイリストから転職を考えた時に、「今ならあの時諦めたデザイナーになれるかもしれない」「もう一度挑戦してみよう」と思って、未経験で30歳を超えていましたがWebデザイナーに絞って転職活動をしたのです。

N:墓石の営業やネイリストとしての体験があったからこそ、自分が本当にやりたいことに再び向き合えたのであれば、それらの体験も無駄ではなかったですね。

「ブラック」というイメージに怯えつつ転職活動を開始

N:転職した時は職歴だけでなく、スキル的にも未経験だったのでしょうか。

尾辻さん:そうですね。Illustratorが少し使えるくらいでした。

N:Webデザイナー希望ということは、制作会社などの選考を受けられたのですか?

尾辻さん:制作会社がほとんどで、応募した中でWebマーケティングの会社はリスティングプラス(現 デジタルアスリート株式会社)だけでしたね。

最終的にリスティングプラスを選んだ目的は、研修などがしっかりしていて未経験でも受け入れてもらえると思った所と、率直に言うと給与と福利厚生が制作会社より良かったからです(笑)

N:他にはどんなことを転職活動の時に重視していましたか?

尾辻さん:特に心配したのが、肉体的にあまり負担が重たくなる所は避けようと。

というのも知り合いのシステムエンジニアから「3日間家に帰れなかった」というようなことを聞いていたので、Web業界にはブラックというイメージがあったんです(笑)
「入る会社を間違えたら大変なことになる」と思っていましたね。

だから働く環境についてもいろいろ聞いたり、雰囲気を調べたりしつつ転職活動をしていました。

面接時に聞いた社員研修などの教育にをすごく力を入れているという話に驚いて、それも決め手となりました。

N:会社の雰囲気とおっしゃいましたが、なかなか転職前に感じるのは難しそうですよね。どのように調べられたのでしょう。

尾辻さん:面接が進んだ会社には、業務時間中のオフィスの様子を見せていただきましたね。

他の会社だと、お客様の所に常駐する人が多い、外回りが多いとかで社内にあまり人がいないというところもあったので、困った時にすぐ他の人に聞けなさそうとか、そういうことを考えていました。

リスティングプラスの選考には体験入社という段階があって、その時も実際に執務スペースで選考の課題させてもらいました。

その時に同じデザイナーの方に気さくに話しかけたりしてもらえたりして、他の方も何となく人が良さそうだったので安心できました。

N:実際に入社して見てのギャップはありましたか?

尾辻さん:特になかったですね。入る前のイメージとしては、
比較的自由なイメージで服装も好きなものを着てよくて、会社が全体的にざっくりしてそうと思っていました。

逆に自由な分、逆に仕組みが確立されていなかったり、誰が何をやるという区分にグレーゾーンが広そうという不安もありました。

実際に入ってみると、一番心配していた業務時間や休日についてもきちんと休みが取れているし、私はクライアントと接することがない内勤なので、仕事がしやすいゆったりしたオフィスカジュアルで出勤できて嬉しいです。

業務の領域が明確に決まっていないことは実際あるのですが、自分の立場から良い方法を提案をしていけるということでもあり、逆にやりがいを感じるポイントでもあります。


昔諦めた夢にもう一度チャレンジして、見事Webデザイナーへの転職を果たした尾辻さん。

未経験で入ったWeb業界は思った通りの世界だったのか、プロとしてWebデザインをする上で気づいた大切なことなどを後編でお聞きします。