「転職しよう」と思った時気になるのが、「自分にどれくらいの価値があるか」、つまり転職市場における自分の「市場価値」ではないでしょうか。
日本の場合、普段から転職を意識して働いている人はあまりいないので、「いざ転職!」となった時に初めて自分のスキルや経験を振り返る人がほとんどです。
この記事では、転職時に慌てて間違った選択をしないために、自身の市場価値の確認方法から市場価値を高める方法、また市場価値を上げて高い収入を得るためのポイントまで徹底解説します。
目次
転職における「市場価値」とは
「市場価値」とは、その人のスキルや経験能力に対して転職市場でどのような評価がされるかを示すものです。
企業が求めるスキルや経験を持つ求職者は「市場価値が高い」とされて多くの内定をもらう一方、「市場価値が低い」求職者はなかなか内定を得られない場合もあります。
しかしこの価値には「TOEIC990点なら市場価値が高い」など絶対的な基準があるわけではありません。基準は希望する業界や業種によって変わるので、ある市場では高く評価されるものが他の市場では全く評価されないということも起こります。
つまり市場価値を把握したいなら、どの市場における自分自身の価値を知りたいのかを明確にする必要があります。自分自身の能力や経験が高く売れるかどうかを基準に、市場を選ぶことも可能です。
転職における市場価値はどのように決まるか
転職の際の市場価値には様々な要素がありますが、ここでは比較的幅広い業界で評価される基本的な要素についてご紹介します。
実績、スキル
新卒採用であれば、職務経験がなくともその人のポテンシャルや人間性を評価して採用してもらえます。しかし転職の場合、それまでの仕事でどんな実績を残し、どんな経験をしてきたかが評価されます。
職歴、前職の企業
1つの専門分野で長い職歴を持っている人は、その分野のプロフェッショナルとして高い市場価値を得られる傾向があります。
逆に転職を繰り返し業務の内容が一貫していないような場合は、優れたスキル仕事に対する姿勢を認めてもらえにくく市場価値が低くなります。
また、必ずしも本人の能力とは比例しませんが、前職が名前の知れた大企業であった場合、本人の価値も高く評価されがちです。
転職市場の状況
「市場」と名がつくだけあって、市場価値は「自分」という商品だけでなく状況によっても大きく変動します。
特に需要と供給のバランスには大きな影響を受けます。例えばあなたが非常に高い英語での業務遂行能力を持っていたとしても、同じ能力を持っている人が転職市場にたくさんいたらあなたの価値は相対的に下がってしまいますし、逆の場合には上がります。
どうして自分の市場価値を知る必要があるのか
転職をする時、自分の市場価値を理解する必要があるのはどうしてでしょうか。
転職における市場価値は、社内の評価とは必ずしも一致していません。
社内では仕事ができると評価が高い人でも、実は社内のポジションがたまたま良いだけ、業務フローに通じているだけで、違う会社ではまったく成果を出せないケースもあるのです。
これに気づかずに、自分の価値を客観的に知らずに転職活動をしてしまうと、様々な不利益が考えられます。
①市場価値が高いと思い込んでいる場合
自分の市場価値を実際より高く見積もりすぎていると、転職後の待遇や給与に関して高望みをしすぎ、時間をかけても転職先が決まらないということが考えられます。
また、自分は仕事ができるからすぐに転職できるだろうと見込んで、転職先が決まる前に仕事を辞めてしまう人もいます。結果的に転職活動が長期に及び、選択の余地なく年収も待遇もダウンする条件で転職するしかないケースも考えられます。
②市場価値が思ったより高い場合
自分自身が思っているより市場価値が高かった場合にも問題はあります。
前職での評価や給与待遇を基準に「自分にはこれぐらいでいい」「これぐらいで満足」とより良い転職のチャンスを逃してしまうかもしれません。
自分にとっては当たり前のスキルや経験でも、 転職市場では重宝され待遇や給与がアップ したり、さらに上の役職に上がるチャンスにつながったりするものです。
市場価値を判断する時は、過大評価することなく謙虚にもなりすぎず、客観的な分析が必要なのです。
自分の市場価値を確認する方法
では、そのような客観的な分析はどのように行ったらいいのでしょうか。
ここでは3つの方法を紹介します。
①転職を希望する業界の人と交流する
転職を希望する業界があるなら、そこで働く人たちと交流し話を聞いてみましょう。
どんな人が活躍し、どんな経験やスキルが評価されるのかなど、実際に働いている人だから分かる様々な情報を得ることができます。
また直接「自分はあなたの業界に転職を希望しているのですが、自分の経験やキャリアは強みになりますか」と聞いてみましょう。
②実際に転職活動をしてみる
2つ目の方法は、実際に転職活動を始めてみるということです。
まずは転職サイトに登録し、履歴書や職務経歴書を実際に作成してみます。
すると自分の年齢やスキル経歴で応募できる求人がどれぐらいあるのか、あるいは提示される給与の金額や求められる資格などを確認することができます。
また 転職サイトの求人情報はいつも同じではありません。
社会的な状況や企業の人員の状況によって、内容も量も変わります。いざ転職したいと思った時に自分にピッタリの求人があるとは限りませんので、早めに求人情報をチェックして、応募したい企業があれば、チャンスを逃さず応募してみることをお勧めします。
③転職エージェントに登録してみる
自分の市場価値を把握するという点では、転職エージェントへの登録もおすすめです。
転職エージェントは、転職が決まった時に手数料が発生するビジネスモデルなので、あなたの市場価値が高ければ、「転職を成功させよう!」と連絡や情報をこまめにくれるはずです。
紹介された企業や内容のレベルによっても、自分自身の市場価値を把握することができます。
一方、登録したものの特に接触がない場合、紹介できる企業がない、あるいは市場価値が低く転職が決まる可能性が低いとみなされている可能性があります。
ただ転職エージェントにも専門分野や得意分野があるので、 一箇所で上手くいかなくても落ち込むことはありません。いくつかの転職エージェントに登録し反応を見ることも、より客観的な市場価値の把握につながります。
転職が許されるのは「実質3回」まで!?
市場価値を上げることで、転職によってキャリアや年収をアップさせることができることは可能です。
しかし企業の立場から考えると、当然転職をせずに長く働いてくれる人の方が採用したいと思うはずですよね。企業としては、ただキャリアのステップにされたくはありません。
経営者や人事担当者でも3回以上の転職経験がある場合には、「採用しても長く働いてくれないのでは」と心配になるそうです。
実際に転職回数が多い程、内定率も低くなる傾向があります。
※プロジェクト単位での経営に参画する役員や専門職などの場合はもちろん別です。
このように市場価値を上げながら転職活動をするといっても、無制限に転職回数を増やすことは得策ではありません。
転職回数に実質的な限度がある以上、自分の市場価値を最大に上げるには「今の仕事」で十分に市場価値を高めておくことが重要なのです。
そして、今の仕事で出来ることをやり切った時こそ、転職という手段で新たに市場価値を高めるチャレンジを探すのが最高のタイミングなのです。
市場価値を上げるために今やっておくべきこと
①一貫した専門スキルの習得
英語が喋れる、簿記の資格があるなどの業務に関連するスキルは評価されやすいです。
求人によっては、一定のスキルを応募の条件にしている場合もあります。
重要なことは、そのスキルが新たな業務にとって必須、もしくは役立つ関連性があるということです。また、スキルを資格やスコアなどの客観的な評価にしておくことで、転職時にスキルの信頼性を高め、市場価値も高めることができます。
例えばビジネスレベルの英語が話せるスキルがあったとしても、十分にそれを証明するだけの経歴や客観的な証拠がなければ、信頼性は下がります。転職を考えているなら、普段からスキルは客観的に証明できる形にすることを心がけましょう。
また、一貫したキャリアを積み上げてきたことも市場価値を上げる要因となります。
②自分の力で成果を作った経験
「社長賞を受賞した」「これだけの売り上げを作ってきた」など、わかりやすい実績があるに越したことはありません。
ただこれだけでは転職をした先で、同じだけの成果を残せるとは限りません。
数字などの実績は、個人の実力だけではなく、市場でのタイミングやチームメンバーの働きなど他にも成功した要素があるかもしれないからです。
実績を評価してもらうためには、その実績を作るために自身がどんな取り組みを行い、どんな考えでどんな風に人を動かして業務を行ったか、という取り組み部分の情報が必要です。
数字だけではなく、再現性のある自分自身の取り組みを伝えることで、新しい場所でも高い成果を生み出せる市場価値の高い人材と評価してもらえます。
③新しい発想でチャレンジした経験
近年はさまざまな分野で、新しいテクノロジーやビジネスがどんどん生まれています。
今の子供が大きくなる頃には、今ある仕事のうち多くが AI や機械に取って代わられ、社会も大きく変化するでしょう。
先ほど、専門スキルや実績は市場価値の重要な要素だと言いましたが、実は逆に作用する危険性もあります。専門家は自分の専門分野に閉じこもり、実績のある人は過去のやり方にこだわるという危険性もあります。
今の時代に転職市場で求められているのは、高い専門スキルや実績を持ちながら、決してそこに固執することなく常に新たなことを発想しチャレンジしていける人材なのです。
さらに市場価値を高める行動とは
ここからは、今の業務を通してできること以上に、自分自身の市場価値を高める方法をいくつかご紹介します。
①自分に近い人にアドバイスをもらう
上でも書いたように市場価値とは、自分自身が考えるものではなく自分のスキルや経験に対して客観的に与えられる評価です。
自分の上司や部下同僚、また家族や友人知人などにも自分自身の働き方やスキル・経験に対して、客観的な意見をもらいましょう。
もしかしたら自分が意識していなかった強みを発見できるかもしれませんし、もし苦言を呈されたとしても、それが客観的な意見だと受け止めて市場価値を高めるための行動に活かしましょう。
②市場価値が高い人のスキルを身につける
自分の市場価値を確認するために、希望する業界の人の話を聞くことをお勧めしました。
人脈が出来ていく中で、参考にしたいような「市場価値が高い人」に出会えたら、その人がどんなスキルを身につけどんな経験をしているのか聞きましょう。
そして、自分も同じスキルを身につけるように努力するのです。この場合、お手本にする人は1人とは限りません。複数人に対して「この人のこの部分を自分も真似しよう」「 同じスキルを身につけよう」考えれば、さらに市場価値を高めることができます。
③スキルを掛け合わせて「希少」な人材を目指す
市場価値を高めるために、専門スキルを身につけることは重要です。
一方、専門的なスキルを身につけているから市場価値が高くなるか、と言うとそうではありません。
市場という名の通り、市場価値は需要と供給によって決まるからです。
市場で価値を高めるためには、ありふれた人材ではなく「希少性の高い」人材になることが効果的です。
「希少性の高い」人材とはどういう人でしょうか。
「グローバル企業の日本担当マネージャーとして世界一の売上を作った」「世界初の画期的なシステムを構築した」というような、ずば抜けた実績を残さないといけないのでしょうか。
そうではありません。これからの時代には専門分野を複数持っている人の市場価値が上がると考えられています。
例えば、
・エンジニアだけでなく、開発したシステムのマーケティングまでできる
・商品やサービスの企画ができて、自分でセールスまでできる営業
など、2つ以上の高レベルの専門領域を持っていれば希少人材と言えます。
1つのビジネスを行うには、様々な分野での活動が必要です。
しかし業務の専門性が高まるとともに、社内で業務の分断が起きるとビジネスがうまく回らなくなっている可能性があります。
そんな時、複数の専門分野に通じていて相乗効果を発揮できる人材は非常に貴重なのです。
「高い収入を得る」には業界選びも最重要
ここまで市場価値を上げる方法について話してきましたが、実は市場価値が高いからといって高い収入が得られるというわけではありません。
ここでは市場価値を上げ高い収入を得たいと思った時に、確認すべきポイントをお伝えします。
チェックするべきポイントは、転職先の業界や市場が成長しているかどうかです。
どんなに高いスキルがあり実績や能力があったとしても、 その業界や市場自体が縮小傾向で業界の平均賃金が安い場合には、満足のいく転職やキャリアアップは難しくなります。
逆に新たな分野の商品やサービスで、市場に競合すらいない状態なら、自分の頑張りで大きく成果を出し高い収入を得ることも可能です。
「市場価値を高める」ことが、何のためかを考えることが必要です。
どうしても希望する仕事があり、給与や待遇が第一の条件でないなら、その業界で求められる市場価値を高めることに集中しましょう。
市場価値を高めてより高い給与を得たい、 より大きなビジネスを動かしたいということが目標なら、成長しているマーケットを選んで市場価値を高めて転職することが必要なのです。
市場価値最大化のためにも、現職の成果にこだわる
市場価値を高めるというと、転職を繰り返して給与や待遇を上げていくというイメージを持つ人が多いようです。
しかし実際にそのようにして転職を繰り返していけるのは、他の企業から絶えず声が掛かるような能力や実績のある一部の人です。
一般的な社会人の場合、そのような機会はありません。
そんな場合には、許された転職回数を有効に使って市場価値を高めるためには、今の仕事で最大の成果を生み出すことが最も効率的です。
今の仕事をやり切って転職した場合と、今すぐ就けるような仕事に転職した場合とを想像すれば、その時点での自分の市場価値の違いを実感できるはずです。
そして両方の場合で転職回数は1回を消費してしまいます。
市場価値を上げられる手段は、転職だけではありません。
人生を通じて自分の市場価値を最大に上げるためにも、ぜひ今の仕事で得られる最大の市場価値を手にして転職というカードを切ってほしいと思います。