私が墓石営業・ネイリストを経て、30歳でWebデザイナーに転職した理由(後編)

今回は20代で墓石営業やネイリストという全く違う業種を経験したものの、現在はWebデザイナーとして活躍している尾辻涼子さんにお話を聞いています。

私が墓石営業・ネイリストを経て、30歳でWebデザイナーに転職した理由(前編)

2020.05.20

前編では当初諦めたWebデザイナーに転職するまでの経緯、他の仕事を経験したことがWebデザイナー向きの性格に自分自身が変われたお話をお聞きしました。

後編では、30歳で未経験から入社したWebデザイナーの世界でどうやってスキルを身につけていったのか、苦労したことやこれからのキャリアについてお話しいただきます。

猛スピードでデザインスキルを習得できた理由

NobyNoby(以下N):入社時にはWebデザインはほぼ未経験だったとのことですが、その後のスキル習得はスムーズでしたか。

尾辻さん:弊社(株式会社リスティングプラス、現 デジタルアスリート株式会社)は、未経験のデザイナーに対する研修がとても充実していたので、その点では問題ありませんでした。

最初の2ヶ月は毎日デザインの研修でしたね。
基礎からみっちり教えていただいたという感じで、未経験でしたが着実にスキルを習得できたと思います。

その後は、週に1回のペースでデザインの研修を続けながら、コーディングの研修を受けています。

私の場合デザインのスキルを高めるというよりも、デザインやコーディングの基礎をマスターして日常的な修正作業を担当できるようになることが、会社に求められていました。

今も研修は続いていて、もう1年半くらいになりますが、学べば学ぶだけ「あ、これ知らない…」とできない点が具体的に見えて来ます。

N:最初は本当に研修に集中されていたんですね。実際に成果物を制作するようになったのは、入社からどれくらい経ったころでしょうか。

尾辻さん:自分でページのデザインを初めて作ったのは、入社半年が経ったくらいの時ですね。
自社のセミナー集客ページを初めてイチから作成しました。もちろんこのようなデザインにしようということで、参考にしたページはいくつかあるのですが。

N:未経験から半年で、ページのデザインが作れるようになるんですね!

尾辻さん:いえ、むしろ少し遅かったほうなんです。

私の場合、最初の2ヵ月以降はデザインと並行してコーディングの研修も受けていたので、入社したデザイナーが初めて1人でランディングページのデザインをする時期としては、他の人より遅めのタイミングになりました。

多分ふつうは3ヵ月くらいでページのデザインを作成していると思います。

N:今もデザインやコーディングの研修を受け続けているんですね。

尾辻さん:そうですね。でも研修だけでなく、今も街中でお店の看板を見て、「文字がしっかりと目に入ってくるな」とか、「あの看板はデザイナーが作っただろうな、あっちは素人さんかな」とか、「この図表はすごく見やすいぞ…」とショッピングモールのキャンペーンの張り紙見たりとか、日々目に入るデザインを意識して分析するようにしています。これはもう習慣になっていますね。

あとは、お金をかけている大手企業のWebサイトとかは見るようにしています。デザインにはトレンドもありますから、勉強に終わりはないですね。

これらの研修と日々の学びのおかげで、今では、毎日バナーの修正やページの修正の依頼をもらいますが、一通り自分で対応ができています。もちろん研修の先生に相談することもありますけどね。

デザイナー志望者が勘違いしがちな点とは

N:以前、人事採用の担当者の方にインタビューした時、
「Webデザイナーを募集するとクリエイティブな仕事だと思って応募してくる人が多い。
でも実際には、依頼者や反応が出るセオリーにそって作成する必要があるので、なかなかデザイナーが思ったとおりのデザインはできない。
結局ミスマッチになってしまうこともあるので気をつけている

とおっしゃっていました。

表現することが好きでWebデザイナーになったとのことですが、尾辻さんにとっても、広告制作では思ったようにいかないことも多くないですか?

尾辻さん:そうですね。広告の場合1番は成果が出るものですし、もちろんクライアント様など関係者の方の望むデザインも重要です。
自分が「こうした方がいい」と思っても常に反映できるわけではありません。

それこそ、デザイナーになりたいと思っていた昔の私が今の状況になったら、「思っていたのと違う」と思ってしまったかもしれません。

でも20代で他の仕事をしたおかげで、やっぱり「何事も相手があってこそ」「相手を喜ばせてこそ」だと思っているので、もう自分の中の変なこだわりはありません。

自分の制作物に対して意見があったり、成果が出なかったりしても今は「どうしたらもっと良くできるか」を考えるだけですね。

そして今はデザイナーとして知識やスキルをもっともっと身につけて、誰もが納得できるような提案やデザインができるようになりたいです。

反応がわかるからより高レベルを目指せる

N:Webデザイナーになってよかったと思うのはどんな時ですか?

尾辻さん:デザイナーになって良かったです!
私が制作で関わったものが、Webを通じて広く活躍してるのを日々感じることができるのが、一番のやりがいですね。

ディスプレイ広告とかで、自分が作ったものが出てくると嬉しくもあり、デザインの課題が今になって見えてきたときには恥ずかしくもあり…。見ていて「頑張れ~成果出すんだよ~」という気持ちになります。そして私も「頑張ろう」っていう気持ちになります。

N:やっぱり愛おしい気持ちはあるんですね。

尾辻さん:そうですね。それで言うと、リスティングプラスに入ったから味わえているデザイナーとしてのメリットもありますね。

転職活動の時は制作会社も受けていましたけど、制作会社だと成果物を作って納品したら、基本的にはおしまいですよね。

でもWebマーケティングの会社に入ったおかげで、自分の作ったものがどんな数字を生み出して、売上につなげてということがわかるし、もしダメだった場合もがっかりしますけど原因を考えて改善できるんです。

これは、デザイナーとしてスキルを上達させるためには、かなりのアドバンテージになると思います。

技術的にデザインが上手いだけでなく、売れるデザインのルールを理解して制作ができたり、それにプラスして、論理や実例を用いて、クライアント様を納得させるような提案ができるようになるんです。

これらのスキルや経験は、デザイナーとして1つ上のステージに行くためには、絶対に必要なスキルだと思います。

N:作品に対する反応を恐れるのではなく、自分を高める力に変えるんですね。

社内でデザイナーの影響力を高めたい

N:今後はどのようなデザイナーになって行きたいと思いますか?

尾辻さん:今は、主に広告運用に関する修正案件中心の業務なので、どうしてもコーディングに関する業務が多くなっています。なので今後はデザインスキルの方も強化して、バランスよくスキルを身につけたいです。

現代のWebサイトは、デザインはCSSで行うことも多いので、「コーディングだからデザインではない」というわけでもないのですが、やっぱりしっかりした技術を身につけたいですね。

あとはPHPを勉強して、WordPressを扱えるようになりたいです。国内のサイトの8割はWPでできているので、今後この業界で長くwebデザイナーとして過ごすには、必須だと思っています。

N:デザインスキル以外の部分ではいかがでしょうか。

尾辻さん:デザイナーとしては、やっぱりもっとクライアント様への提案にも関与していきたいですね。
デザインをする時にはコンサルタントからの制作指示書が来るのですが、デザインで対応可能な範囲を超えていることもあるんです。

そうするとまた内容を調整するために時間がかかったり、その分クライアント様の利益に影響する場合もあります。

N:私のようなWebデザインやコーディングを知らない人間が「少しの修正だ」と思っていても、実は結構工数のかかる修正だということはありますね。

尾辻さん:でも、もっとWebデザインに関する情報をデザイナーから社内に発信して、コンサルタントとデザイナーがお互いにスムーズに仕事ができるような土台作りを今後したいなと思っています。

あとは、社内には私のほかにも数人のデザイナーがいて、それぞれ得意分野があるので、お互いに社内研修を行って、デザイナー全体でスキル底上げができないかなと思っています。

デザイナーがクオリティの高いものを効率よく作れるようになれば、広告の回転速度も上がりますし、会社としてもきちんと数字が出せるはずだと思っています!

N:尾辻さんはWebデザイナーとしてだけでなく、会社全体のことを考えられていると思いますが、それもWebデザイナーになる前に複数の他業種での経験が活きているのかもしれませんね。

尾辻さん:そうだと嬉しいですね。
今は、諦めていたWebデザイナーとして活躍する機会をくれたリスティングプラスという会社を、デザイナーという立場からちゃんとサポートできるようにスキルアップしていきたいと思っています。

N:本日はありがとうございました!

未経験転職でも過去の経験は活かせる

尾辻さんは、一度諦めた夢に再度チャレンジしてWebデザイナーとして夢をかなえました。

30歳で未経験からの転職は一般的には難しいと思われます。
しかし夢を諦めていったん別の仕事をしたとしても、その経験を通じて自分を高めて変えていけば、いつか再チャレンジのタイミングが来るのかもしれないと感じました。

もちろん諦めた仕事の内容にもよりますが、Webマーケティングの仕事は過去の経験を活かしやすい業界です。

それは、今後も多くの会社がWeb上での活動に軸足を移していくからです。さまざまな業種の経験者がWeb業界で求められています。

やりたいと思った仕事でなくても、仕事を頑張ることで自分自身が成長できれば決して無駄な経験にはならないと感じたインタビューでした。