心理トリガーとは?マーケティングを加速させる35のトリガーを紹介

これまで生きてきた中で、当初は買うつもりのなかった商品を「ついつい買ってしまった…」という経験は誰しも一度や二度はあるはずです。

後から振り返ってみると、やっぱりいらなかったと思うものもあるかもしれません。
では、私たちはどんな時にものを買いたいと思うのでしょうか?

実は、そこには心理トリガーの存在が大きく関わっています。

普段販売やマーケティングに携わっている人にとっては、心理トリガーを知っているか否かで成果は大きく変わります。

この記事では、売上アップにつながる代表的な心理トリガーを35個ピックアップし、事例も交えつつ解説しています。

ぜひ、今回紹介する心理トリガーを使いこなして、売上アップにつなげてください。

心理トリガーは心を動かす引き金

心理トリガーは顧客が商品・サービスを購入するきっかけや決め手となる、心を動かす引き金を意味します。つまり、私たちが商品・サービスを買う理由です。

例えば、「満足いただけなければ全額返金」とうたっていたら、買ってみてもいいかなと思いませんか?

このように、私たちは日常生活の中で、何らかの心理トリガーによって消費行動をとっている可能性が高いのです。

人は感情でモノを買い、理屈で正当化する

「あなたは自分自身のことを理性的だと思いますか?」
いきなりそう言われると、ドキッとするかもしれません。

実は、多くの人は自分自身のことを理性的だと思っているのとは裏腹に、感情的な消費行動をとっています。

例えば、過去を振り返ってみて、こんな行動をしたことはないでしょうか。

  • 異性や後輩の前だからと見栄を張って、内心キツイと思いながらも全額出した
  • 20%OFFのセールをやっていたので、自分があまり着ないタイプの服を買った
  • 今のままでも問題なく使えるけど、新しいモデルが気になりスマホを買い替えた

これらはどれも、理性的に考えれば間違った行動と言えそうです。

つまり、「人は感情でモノを買い、理屈で正当化する」感情の生き物なのです。

見方を変えれば、顧客の心理トリガーを刺激してあげれば、自社の商品・サービスを売りやすくもなるということです。

心理トリガーを活用するメリット

心理トリガーを活用するメリットは、回り道をせずに結果が出しやすいことです。なぜなら、既に先人たちが効果を実証しているため、あえて一から考える必要がないからです。

例えば、「松竹梅と3つのコースを用意したらようやく売れるようになった!」と喜ぶ個人事業主がいたとします。

仮にそこまでに1年かかっていたとしたら、おとり効果という心理トリガーを知っていれば1年分時間が短縮できたことになります。

一から考えるよりも、既にあるものを活用した方が効率的です。

マーケティングを加速させる代表的な心理トリガー

この章では、マーケティングを加速させる代表的な心理トリガーを紹介していきます。シーンごとに分類していますので、気になるものからご覧ください。

人間の基本特性として覚えておきたい心理トリガー

日常で最も使われている心理トリガーを3つ紹介します。無意識に行動していたという経験もあるかと思いますので、ぜひ自分の行動と照らし合わせて読んでみてください。

一貫性(一度YESと言うと、NOと言いにくい)

人は、自分の発言や行動に一貫性を持たせたいと思っています。言い換えれば、一度YESと言ったことに対しては、後からNOと言いにくいという性質があります。

例えば、顧客との会話の中で、以下のように使えます。

アパレル店員「今日はいい天気で良かったですね」

顧客「はい」

アパレル店員「花柄の服がお好きなんですか?」

顧客「はい。そうなんです」

アパレル店員「この(花柄の)服も似合うと思うんですが、良ければ試着してみませんか?」

顧客「はい」

営業の世界では、顧客がYESと言いやすい質問をして、本当に欲しいYESを引き出す「イエスセット話法」として知られています。

帰属意識(人はコミュニティに属したがる)

人には多かれ少なかれ帰属意識があり、コミュニティに属したがる傾向があります。会社やサークルに所属するのも、1つの帰属意識の表れと言えます。

帰属意識を感じさせる施策としては、SNSでの情報発信などが有効です。楽しそうに活動している姿を発信することで、「自分もこの一員になりたい」と感じやすくなります。

特に、ターゲットとする顧客を想起させる人物の画像を使うことで、自分がそこにいるかのような疑似体験を演出できます。

返報性の法則(与えられると、何かを返さなくてはと思う)

人は、何かを与えられると、何かを返さなくてはいけないと思う傾向にあり、これを「返報性の法則」と言います。例えば、下記のように感じた経験はないでしょうか。

  • バレンタインのチョコを貰ったから、ホワイトデーにお返ししなくちゃ
  • いつもお世話になってるから、職場の同僚にもお土産買っていこう
  • あの人はいつも笑顔だから、こっちまで笑顔になっちゃうよ

駅前のティッシュ配りや初回の無料お試しサービスも、返報性の法則を利用した施策と言えます。

認知拡大に役立つ心理トリガー

認知拡大に役立つ心理トリガーを3つ紹介します。LPやブログなどのコンテンツ制作や、マーケティング施策全般で活用することで、多くの人に興味を持ってもらうことができます。

バンドワゴン効果(周りが皆やっていると便乗したくなる)

周りがやっているとついつい便乗したくなる特性を、バンドワゴン効果と言います。誰しも、人気があるものが好きということです。

例えば、行列店に人が並んだり、いいねの多いSNSの投稿がシェアされたり、至るところにバンドワゴン効果が見受けられます。

マーケティング施策として応用する場合、いかにその商品・サービスが人気なのかを示す必要があります。

権威性(著名人やメディアの権威は強力)

人は、著名人やメディアといった権威には弱いものです。たとえ同じことを言ったとしても、誰が言うかで受け手の反応は大きく異なります。

その代表例が、大企業が俳優や女優を登用して大々的に打ち出すテレビCMです。莫大な予算をかけて広告を打ち出すのも、それだけ効果が大きいことを経験則として理解しているからです。

ターゲットとする顧客にとって、誰からの一言だったらメッセージが刺さりやすいかを考える必要があります。

ハロー効果(社会的なトピックは注目を集めやすい)

ある目立つ特徴に引きずられて、それだけで評価がポジティブ(ネガティブ)に振れる現象をハロー効果と言います。

例えば、SDGsに関する取り組みをしている会社と聞くと、何となく良い印象を持つ人は多いかと思います。

このように、実態は別として、社会的に意義のあるトピックを扱っているだけで評価が上がることがあります。ただし、ハロー効果だけを狙って実態が伴わないPRばかりしているといつか化けの皮が剝がれるので、注意が必要です。

ニーズを強める心理トリガー

商品に興味を持ってくれた人の行動を後押しできる心理トリガーを3つ紹介します。

損失回避性(人はリスクを避けたがる)

人は、得をすることよりも損をしないことを選ぶ傾向があり、これを損失回避性と言います。特に、日本人はこの傾向が強いと言えます。

この損失回避性を利用した施策として有名なのが「全額返金保証」です。満足しなければ費用を全額返金するとうたうことで、顧客の「損したくない」というニーズを満たすことができます。

全額返金保証に限らず、顧客が感じる損失(痛み)を和らげる施策は喜ばれます。

確証バイアス(人は自分の行動を正当化する理由=言い訳を欲している)

自分の意見や行動を正当化するために、それを裏付ける情報ばかりを探す傾向のことを確証バイアスと言います。これは、利用するのに罪悪感をいだきやすい商品を打ち出す際に、よく使われる心理トリガーです。

例えば、栄養バランスが悪いと思われがちなカップ麺も、一日分の野菜が摂れるカップ麺と言われたらイメージは良くなります。言い換えれば、カップ麺を食べても良い理由が生まれたことになります。

顧客は何とかその商品を買いたいと思っているため、売り手側が買うべき理由(言い訳)を用意してあげることが重要です。

ザイアンス効果(何度も触れているものには親近感を抱きやすい)

何度も触れているものに親近感を抱きやすい特性を、ザイアンス効果と言います。

例えば、2人の営業マンがいた時に、あなたならどちらから商品を買いたいでしょうか。

A. 年に1回、商品を買って欲しいタイミングだけ会いにくる営業マン
B. 会って話すだけで楽しいからと、月に1回は何も無くても顔を出してくれる営業マン

答えは明らかでBから商品を買いたい人が大半かと思います。これは営業マンに限った話ではなく、SNSやブログでの日々の情報発信も定期的に行うことで、ザイアンス効果を発揮します。

商品の魅力が増す心理トリガー

商品をより魅力的に見せ、購買行動を促進する心理トリガーを3つ紹介します。

バンドワゴン効果(No.1は皆大好き)

人気が集まるものに興味が湧く効果をバンドワゴン効果と言います。このバンドワゴン効果を利用した施策としてよく使われるのが、いわゆるNo.1商法です。

例えば、「〇〇でNo.1」とうたっている商品販売用ページは、バンドワゴン効果を狙って作られています。

それだけ、私たちはNo.1が大好きということです。

希少性の法則(人は希少なものに価値を感じる)

私たちは、希少なものほど価値を感じやすいです。この特性を、希少性の法則と言います。

  • 先着20名限定
  • 1頭から数キロしか取れない希少部位
  • ここでしか買えない

このような表現をされると、ついつい興味をそそられます。商品の上手い表現が思い浮かばない時は、希少性を持たせるだけで魅力的になります。

緊急性(期日があると行動しやすくなる)

緊急性も、私たちの購買行動を促進する心理トリガーです。人は、期日があった方が行動しやすくなるからです。

同じような表現でも、期日を入れるだけで急に魅力が増します。

  • お申込みはこちら
  • 【あと3日】お申込みはこちら

期日が長すぎると後回しにされやすいため、なるべく短い方が効果的です。

購入を後押しする心理トリガー

顧客に迷いを与えず、購入を後押しできる心理トリガーを3つ紹介します。

決定回避の法則(シンプルで分かりやすい選択肢の方が好まれる)

人は、選択肢が多すぎるとかえって迷ってしまい決められなくなります。これを、決定回避の法則と言います。

例えば、3種類の中から好きなジャムを選んでくださいと言われれば選べますが、30種類からとなると多すぎて決められません。

売り手側は良かれと思って商品ラインナップを増やしがちですが、案外逆効果のケースもあります。そのため、新商品を出す際には、既存商品の整理も同時に行った方が効果的です。

おとり効果(比較対象があると選びやすくする)

比較対象があると選びやすくなる現象を、おとり効果と言います。商品が1つだけよりも、複数あった方が違いが分かって良さが際立ちます。

特に、コンサルティングサービスのような絶対的な価値が測りにくい無形商材に適した心理トリガーです。ライトプラン、ミドルプラン、フルプランのように対比してあると選びやすくなります。

ちなみに、複数の選択肢を用意する場合は、どの商品を一番売りたいかを先に決めます。そのうえで、一番売りたい商品が魅力的に見えるように、おとりとして他の商品を設計するのが定石です。

極端回避性(人は極端なものを嫌がる傾向がある)

人は、極端なものを嫌がる「極端回避性」という性質を持っています。極端であればあるほど、外れも大きくなる可能性があるからです。

例えば、おとり効果のところで紹介したコンサルティングサービスであれば、多くの人は真ん中のミドルプランを選択するということです。

より効果的に心理トリガーを活用するために、あえて最上位プランの値段を大きく引き上げて、真ん中を選びやすくすることもできます。

ライトプラン:10万円
ミドルプラン:30万円
フルプラン:100万円

継続利用を促進する心理トリガー

継続的な利用を促し、企業にとっても長期的な利潤の拡大に貢献する心理トリガーを3つ紹介します。

保有効果(一度保有したものは手放したくなくなる)

一度手にしたものは手放したくなくなることを、保有効果と言います。特に、利用頻度が高く生活に溶け込みやすい商品に適した心理トリガーです。

具体的には、下記のようなシーンで応用されています。

  • 最初の1ヶ月は無料で使えるウォーターサーバー
  • マシン本体は無料で提供し使った分だけお金がかかるコーヒーカートリッジ
  • 解約と同時に過去の制作物が見れなくなるWebサービス

利用頻度が高いほど手放すことへの抵抗感が強くなるため、いかに短期間で多く触れてもらうかがポイントです。

アンカリング効果(必要な回数が指定されているとそれに従おうとする)

事前に与えられた情報や数字が基準となって、後の判断に影響を与えることをアンカリング効果と言います。この心理トリガーを応用して予め必要な回数を指定することで、顧客はそれに従おうとします。

例えば、フィットネスジムで「90日チャレンジ」とうたうことで、自動的に3か月のコースを申し込むことにつながります。

主張と同時に、なぜその回数が必要なのかという根拠もあれば、より強力なアンカリング効果を発揮できます。

サンクコスト効果(続けないと損と思えば継続する)

それまでにかけてきた時間やお金が頭をよぎり、合理的な判断ができずに損失を拡大させてしまうことをサンクコスト効果と言います。この心理トリガーを応用することで、続けないと損だと感じた顧客はサービスを継続利用します。

例えば、一度手間暇をかけて導入した大規模なシステムは、後から欠陥が見つかったとしても変更されにくいです。なぜなら、それまでにかけてきた時間やお金がもったいないと感じてしまうからです。

また、コストが大きくなればなるほど、サンクコスト効果も大きくなります。

その他覚えておくと得をする心理トリガー

最後に、その他覚えておくと得をする心理トリガーを列挙しておきます。

心理トリガー 内容・効果
収集欲求 不完全な状態を不快に感じる
好奇心 知らないものへの興味・関心を持つ
ヴェブレン効果 その商品を購入したことを広めたくなる(ブランド品など)
プライミング効果 特定のアクションが無意識に行動を促す
リンキング 知っているものと紐づけることで価値を感じやすくなる
アンカリング効果 何かの節目では財布の紐が緩くなる
カリギュラ効果 禁止・反対されるとかえってやりたくなる
ジンクピリチオン効果 聞いたことのない言葉の響きが気になってしまう
物語 人はストーリーが大好き
欠点の告知 あえてマイナス面を伝えることで逆に信頼感が増す
ウィンザー効果 お客様(第三者)からの声によって信頼が増す
お買い得感 誰もがお得に買い物をしたい
フレーミング効果 同じ事実であっても表現を変えるだけで印象が変わる
現在志向バイアス 目の前の支払いが猶予されると気分が楽になる(分割・リボ払いなど)
自分事化 商品を所有しているように話されるとその気になる
エンダウド・プログレス効果 小さな目標達成が次の行動につながる
ツァイガルニク効果 人は続きが気になる

最も重要なのはお客様に対する「誠実さ」

心理トリガーは顧客が商品・サービスを購入するきっかけや決め手となる、心を動かす引き金です。「人は感情でモノを買い、理屈で正当化する」感情の生き物なので、心理トリガーを上手く活用することで、商品・サービスが売りやすくなります。

ただし、商売をするうえで最も重要なのはお客様に対する誠実さです。つまり、「この商品を買ってもらえれば、お客様はきっと良くなる」という確信がなければ、心理トリガーは使うべきではありません。

ぜひ、小手先の技術だけに頼らず、お客様と真剣に向き合う気持ちをいつまでも持ち続けてください。

その気持ちがあれば、今回紹介した心理トリガーを最大限に活用できますよ。