職場の人間関係に疲れ、友人関係にも疲れてしまって「もうすべてを投げ出したい」と思った事はないでしょうか。
多くの人の場合、そう思いながらも何とか毎日を過ごしているのですが、最近は本当に「すべてを投げ出して」しまい、それまでの人間関係すべてをリセットしてしまう人が増えています。
しかしこれらの行動は周りの人を混乱させるだけでなく、本人のキャリアにも大きな損害を与えるものです。
この記事では「人間関係リセット症候群」とも呼ばれるこれらの行動について、どんな人がなりやすいのか、どんな不利益があるのか、衝動的に人間関係をリセットして後悔しないためにできる事などを解説します。
目次
人間関係リセット症候群とは
治療が必要な病気ではない
人間関係リセット症候群はとは、その名のとおりある日突然、ゲームをリセットするかのように人間関係をリセットしてしまう心理状態です。
仕事をやめて転居し、SNSのアカウントを削除して全く連絡が取れない・・・そんな風に周囲の人間関係をバッサリと切り捨ててしまうのです。
最近、このような行動を取る人が増えていると言われます。
しかしだからと言って必ずしも「精神的に問題がある」という事はありません。
人間関係リセット症候群は治療が必要な疾病ではなく、ある性格の傾向を持った人が現在の環境の中で陥りやすい精神状態といえます。
突然リセットしてしまう原因は?
現代はインターネットやSNSが普及し、求めていなくても他人に関する多くの情報が目や耳に流れ込むようになりました。
距離があっても会う事ができなくても、簡単に人とのつながりが保てるのはSNSの大きなメリットですが、その分以前より多くの人を交える人間関係に疲れてしまう人も多いです。
また、昔も今も転職の最も大きな理由は人間関係です。
職場で受けるストレスが大きくなると、本人が我慢できるレベルを超えてしまった時にすべてを投げ出してしまうのです。
現代は実際に人間関係をリセット出来てしまう
昔のように、対面での関係や家族ぐるみなど他者を巻き込んだ付き合いが多かった時代では、人間関係のリセットは難しかったでしょう。
しかし現代は人間関係の多くがSNSやメッセンジャーアプリなどを通じた関係です。
対面の関係が少ないので、それさえ切ってしまえば人間関係の多くを一気にリセットできてしまうのです。
実際に取られるリセット行動とは
SNS・LINEをブロック
FacebookやLINEなどのアカウントを削除、あるいは関係を切りたい人をブロックして、連絡が取れないようにします。
電話番号を変更する
電話番号を変更して新しい番号を通知しないなどです。
会社を退職する
会社は多くの社会人にとって人間関係の中心になっている場所ですが、働く場所を変えることでその人間関係を断ち切ります。
また転職先や新しい連絡先を教えない、また連絡しても対応しないなどの行動を取ります。
引越しする
人間関係をリセットするために必ずしも引越しは必要ではありませんが、断ち切りたい人間関係の人に自宅の位置や住所を知られている時、本当に人間関係をリセットしたい人は引越しまで行うことがあります。
人間関係をリセットしても根本解決にならない
このような人間関係リセット症候群の問題点は、2つあります。
1つ目はリセットすることで、
・新しい自分として再スタートできる
・本来の自分になれる
・周囲の環境がより良くなる
と考えている点です。
しかし多くの場合そのような変化は訪れないか、最初は良くても長続きしないでしょう。
なぜなら、人間関係をリセットしたいと思うような事態を招くには、本人の性格的な傾向(良い悪いではなく)が影響しているからです。
その傾向を自分自身で自覚して思考のクセを直したり、物事の考え方自体を変えない限り遅かれ早かれ、また人間関係のストレスを溜めることになり、いつかまた限界を迎えてリセットしたくなってしまいます。
確かに環境を大きく変える事は自分自身を変えるきっかけになるかもしれません。
しかし長い目で見ると、根本的に自分自身が変わらない限り、同じように追い詰められて人間関係のリセットを繰り返すと考えられるのです。
リセット思考だと転職を繰り返す可能性がある
リセットによって問題になるのが、2つ目の問題点である「キャリアを築くことができない」という点です。
人間関係リセット症候群の場合、会社での人間関係に行き詰ると退職してリセットをしようとします。
この場合、以下のようなデメリットがあることを理解しておく必要があります。
・人間関係を絶つのでそれまでの仕事関係の人とのつながりが使えない
・辞め方によっては同じ業界で悪い評判が立つ可能性がある
・環境を変えることを目的として安易な転職をしがち
・転職を繰り返し「定着しにくい人材」とみなされるようになる
このように仕事上でリセットをしてしまうと、将来的なキャリアに悪影響を及ぼす可能性があります。
そうならないためには、早いうちにリセットが根本的な解決策にならないことに気づく必要があるのです。
人間関係リセット症候群になりやすい人の特徴
人間関係リセット症候群になりがちな人というと、どのようなイメージを持つでしょうか。
ここでは人間関係リセット症候群になりやすいとされる性格の傾向について紹介します。
生真面目で完璧主義な人
多くの人が急に人間関係を絶つというような極端な行動をする人として、このようなイメージを持つのではないでしょうか。
生真面目で完ぺき主義者のために周りからの要求に応えようと頑張り、それに心と体が耐え切れなくなった時に一気にすべてを投げ出してしまうイメージです。
ネガティブで自己肯定感が低い人
ネガティブで自己肯定感が低いと、日々のちょっとした失敗にも反応して落ち込んでいきます。
上手くいったことには目が向かないため、失敗ばかり気にして「自分には向いていない」「自分にはここにいる価値がない」などと思い悩み、ある時逃げるように人間関係をリセットしてしまいます。
マイペースな一匹狼
追い詰められて人間関係をリセットしてしまう人ばかりではありません。
実はおおらかで前向きだと思われがちなマイペース人間でも、人間関係を急にリセットしてしまうことはあります。
このような人にとってはSNSや仕事上の人間関係が自分のペースを乱す、邪魔なものに映りがちです。多くの人の都合が働き、自分の思ったとおりに動けないと「これなら1人の方がいい」と考えて人間関係をリセットしてしまうのです。
生活習慣が乱れている人
人間関係リセット症候群は生来の性格だけでなく、その時の生活状況にも大きく影響されます。
食生活が乱れたり、睡眠が思うように取れないと、冷静な判断力や思考力が失われます。
女性の場合は生理や女性ホルモンの乱れなどもあり、体調がそのまま精神に影響が出る場合が大きいといえます。
ストレスが多い・疲れている人
生来前向きに仕事に取り組んでいる人でも、仕事でのストレスや疲労が溜まればイライラしたり落ち込んだりします。
そんな時には何もかもが嫌になって衝動的に人間関係をリセットしてしまうこともあります。
人間関係リセット症候群には生来のその人の気質も大きく影響します。しかし環境や状況によっては、どんな人でも陥る精神状態であると言えるでしょう。
リセットに追い込まれる前にやるべき対策
生来の性格であれ、衝動的であれ、先に述べたように人間関係リセット症候群の行動は長期的に見てデメリットが大きいものです。
のちのち自分を不利な立場にしないためにも、追い詰められる前に冷静に自分の思考を整理する必要があります。
自分を客観的に見て自意識をコントロールする
あなたは他の人がした失敗をどれほど思い出せるでしょうか。
失敗を思いだしたとして、その人はいなくてもいいくらい価値が無いと思うでしょうか。
あるいは1年前の失敗を思い出せるでしょうか。
自分では大事のように思っていることのほとんどは、他の人に取ってはすぐに忘れてしまう程度のことです。気にしているのが自分だけなら、自分で自分を苦しめているだけです。
生真面目な人やネガティブな人は落ち込んだ時にはこのように考えて、実際に起こったことを大げさに受け取り過ぎないようにしましょう。
リセットのデメリットをよく考える
先に書いたように、人間関係をリセットすることにはデメリットも多くあります。
今人間関係が苦しくてリセットしたいと思っても、中にはずっと関係を持っていたい人もいるかも知れません。
嫌いな人との関係を絶つために良い人間関係も切り捨てるのは、自分が大きな損をすることになります。
また人間関係リセットに仕事が絡んでくると、先に言ったように転職を繰り返して自身のキャリアに傷をつけたり市場価値を下げることにもなります。
健康で丁寧な生活を送る
忙しい毎日の中でも、睡眠時間を削り過ぎないことや栄養がきちんと取れる食生活を送ることが重要です。
また、部屋が散らかってくるのは自分の心が疲れてきた・乱れている兆候と考えられます。
そのような自分の状態にいち早く気づいて、少し自分のための時間を取るなど早目に対処するようにしましょう。
悩みは自分を見つめなおすチャンス
突然一方的に人間関係をリセットする事は、一般的にデメリットが大きいのでオススメできません。
しかし人生や人間関係に悩むことは、自分の気持ちを見つめなおし、本当はどう生きたいのか・何がしたいのかを考える契機にもなります。
あるいは自分の思考のクセや生活の問題点に気づいて、直すチャンスにもなるでしょう。
衝動的な行動を取って結局自分自身が損をしてしまった・・・ということにならないよう、人間関係を整理するときは慎重に行いましょう。