読解力とは?現代の大人にこそ必要な読解力の鍛え方を解説

現代はメールやチャットなど、文字でのコミュニケーションが多い時代であり、今特にビジネスの世界で「読解力」の重要性が高まっています。
また今後多くの仕事においてAIが人間にとって代わるとされますが、そこで生き残る仕事のキーワードとしても「読解力」が重要だと考えられています。

この記事では読解力に注目が集まっている理由の詳細や、大人になってから読解力を鍛える方法について解説します。

読解力に自信がない、人とのコミュニケーションが上手くできない、そんな人はぜひ参考にしてください。

実は多くの人が正しく文章を読めていない?

まずは、以前にも話題になった読解力のテストをご紹介します。
以下の文章を読んで、その後の簡単な質問に答えてください。

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

問題:
この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

セルロースは(  )と形が違う。

(1)デンプン (2)アミラーゼ (3)グルコース (4)酵素

引用元:Yahoo!ニュース|大事なのは「読む」力だ!~4万人の読解力テストで判明した問題を新井紀子・国立情報学研究所教授に聞く

この問題の正解は(1)デンプン です。
しかしこの問題で、実際には多くの人が(3)グルコース と答えました。

間違えた人でも改めてしっかり読んでみると、「なるほど、そうか」と思うかもしれません。しかし日常の文章では自分の理解が間違っていることに気づくことはなく、誤解したままになるでしょう。

ちなみにこの問題では、新聞社の論説委員や経済産業省の官僚など文章を読むことに慣れていそうな人も間違えてしまったそうです。

読解力とは

読解力は、言葉通りの意味と考えると「文章を読んでその内容を理解する力」のことです。

また、OECD(経済協力開発機構)が実施している「PISA」(15歳児の学習習熟度調査)ではこのように定義しています。

自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力

引用元:PISA調査における読解力の定義,特徴等

つまり文章を単に理解できるだけではなく、その内容を理解し自分の頭で考えて生活に利用できる能力が「読解力」であるといえるでしょう。

読解力がない日本人が増えている

OECD調査における日本の読解力ランクが下落

小学生の読解力は、2015年度のPISAにおいて日本の読解力は516点でした。
これは前回から22点も下がった点数です。

OECD加盟国中でも、順位が1位から6位に転落しており、子どもの読解力の低下が問題視されています。

言葉を追わず飛び飛びで読んでいる

文章がきちんと読めていない人の読み方をチェックすると、文章読むのではなく単語を拾って自分自身で内容を構成していることが多いです。

このような読み方だと、自分自身の解釈や思い込みが入る余地が大きくなります。
当然文章が本来伝えたかった内容と自分が理解する内容が食い違います。

またこのような読み方をする時に問題なのが、自分が知らない単語や漢字については「まったくないものとして」理解を進めようとすることです。

つまり自分にわかる言葉だけで内容を理解しようとするので、やはり文章の本来の意味を完全に理解できるかといったら難しくなります。

このような読み方をしているのでは、どれだけ読書量を増やしても、新しい知識を得たり物事の見方を身につけたりすることは困難です。

SNSに「クソリプ」が氾濫

SNSが広がり、顔も知らない人と文章だけでコミュニケーションを取る機会が増えています。

しかし、中には投稿内容に対してかみ合わない返事(リプライ)や、内容を勝手に誤解・拡大解釈したようなリプ、いわゆる「クソリプ」も多く見られます。

例えば、
「柴犬は可愛い」と投稿した人に、
「猫は可愛くないっていうんですか」
「秋田犬を飼っている僕をバカにしているんですか」
という風に寄せられるリプライです。

当然ですが、投稿では柴犬以外の動物には触れていませんし、ましてその飼い主にも触れていません。

このようなメッセージを受け取る人は困惑しますし、タイムライン上で見ている人もいい気持ちはしないでしょう。

このように読解力がないと相手の真意を理解できず、人と気持ちの良いコミュニケーションを取るのが難しくなります。

読解力のない人間は仕事を奪われる

読解力が低くても生活していくだけなら問題ない!と思う人もいるかもしれませんが、今後問題になるのが「AI」と仕事の問題です。
読解力がない人、読解力を要しない仕事をしている人は、いずれ仕事がAIに代替されてしまう可能性があるのです。

今後多くの仕事がAIに代替されるとして注目されているのが「AIは読解が苦手」だという点です。

「東ロボくん」という人工知能(AI)が東大に入学できるかというプロジェクトにて、東ロボくんはいわゆる「MARCH」の大学における一部の学科については「合格率80%以上」という模試の成績をマークしました。

そんな優秀な東ロボくんも結局東京レベルの偏差値には届かなかったのですが、その弱点は「読解力」だったそうです。

つまり読解力こそが今、AIと人間の能力を大きく分けているのであり、逆に言うと読解力以外の分野では、すでにAIは人の標準的な能力に追いついていると言えます。

今後、そんな苦手分野でもAIが発達する可能性はあります。
しかし決まった条件にしたがって判断をするという単純な仕事ではなく、文章や言葉の裏にあるさまざまな事情を理解して総合的に判断するような、読解力が必要な仕事についてはAIにはしばらく代替される心配はなさそうです。

大人でも今からできる読解力を鍛える方法

このように大人にとっても改めてその重要性を増している読解力ですが、どうしたら磨くことができるのでしょうか。

子供のころからの積み重ねしかないなら諦めるしかありませんが、大人になっても読解力を高める努力はできます。

意識して語彙を増やす

自分の語彙は十分だと言えるでしょうか。また漢字は正しく読めているでしょうか。
読書の時間が取れない位忙しい現代人は文章を飛ばし読みする傾向にあります。

上でも言った通り、このように読んでいると、せっかくの読書もそれまでの自分の語彙や考え方の範疇に収まり、新しい発見もなく語彙を増やすこともできません。

語彙は知識等建物を作るための、基礎となるレンガのようなものです。
「子どもにもわかるくらい」簡単な文章が良いとされていますが、やはり必要な言葉は意味を理解していないと物事を理解するレンガが足りないと言わざるをえません。

意味がわからない言葉だけでなく、「何となくこんな感じ」と思っている言葉についても正しい意味を調べるなど意識的に語彙を増やす努力をしましょう。

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内容を要約する習慣をつける

本に書いてある文章にしても、ネットに公開されている文章にしても、今はとても読みやすいものが多いです。

そのため、読んでいる時はするすると頭に入ってきて「わかっているような気持ち」になります。特に読むのにひっかかったり理解できないところがないからです。

しかしそんな読みやすい文章だからこそ、読んだ後に何も残らないこともあります。
文章をきちんと理解できているか確認するためにも、自分が読んでいる文章のテーマと結論をつかみ、要約する癖をつけましょう。

今読んだ所はこういうことが言いたかったんだな、と自分の頭の中でまとめなおすだけで内容への理解はずっと深まります。

音読や線引き読書で飛ばし読みを直す

飛ばし読みをしていると、本の情報を自分の解釈の範囲に収めがちです。飛ばし読みを直すためには、次の2つの方法が有効です。

それは音読することと、線を引きながら読むということです。
こうすると文字を追って1つ1つ読むことになるので、読み飛ばすことがなくなります。

すでに読んだことがある本でやってみると、それまで読み飛ばしていた情報が理解できることで受ける印象も変わるかもしれません。

これまで何十冊と読んできた自分の専門分野の本ならまだ、飛ばし読みしても問題ないのですが、新しく何かを学びたい時や自分の世界を広げたい時には、飛ばし読みをしないようにしましょう。

あえて自分の意見と違う角度で考えてみる

文章を読んだ時に、自分なりに感想や意見を持つことがあるでしょう。

それ自体は非常に良いことですが、理解を深め読解力を高めるには、自分の意見を疑い、あえて他の考えはあり得ないか、違う角度からも考えてみることが大事です。

例えば、

ある話を聞いて自分はこう感じた

自分はなぜそう思ったのだろうか

自分は過去にこういう経験をしたからだ

ではその経験をしていない人は違う感想になるかもしれない

だとしたらこういう意見もあり得る

というような考え方です。

自分の意見は常に正しく思えるものですが、あえて視点を変えて同じ文章から導ける他の解釈まで考えることで文章への理解が深まります。

短くてもSNSなどにアウトプットする

読解力を高めようと思うと読むことに意識が向きがちですが、自分が要約した内容、文章に対して感じたことを、口頭でもSNSなどででもアウトプットすることが読解力アップには効果的です。

頭の中で要約したとしてもそれを改めて文章にしようとすると、よく理解できていない部分に気づけるからです。
ほんの数行のアウトプットだとしても、より深い理解をするために効果的です。

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読解力が上がると仕事もうまくいく

読解力=コミュニケーション能力

ここまで書いてきたように読解力というのは、言葉から相手の考えや気持ちを理解できるという点でコミュニケーション能力と言い換えられます。

仕事上でも読解力があることで、同じ指示を上司から受けても、

・指示通りのことだけをやる(AIでも代替できる)
・指示から相手の状況ややりたいことを理解して先手を打てる(AIでは代替出来ない)

という差が生まれ、評価や給与にも差がついていくでしょう。
効率的なインプットができる

同じ本を読むのでも、読解力が高い人と低い人では理解度が違ってきます。
これからの社会ではどんどん出てくる新しい情報をキャッチして自分の物にしていく力が求められます。

その点でも、きちんと新しい情報を自分のものにできる読解力が求められるのです。

アウトプットの質が上がる

読解力が高い人は内容の本質がつかめるため、それを自分の仕事に応用して活用することができます。
また自分の仕事に対するフィードバックも正しく理解して改善していけます。

つまり読解力によりアウトプットでも大きな差が生まれます。

大人でもトレーニング次第で読解力を改善できる

最近はスマートフォンの普及にともなって、読書習慣を持つ人も減り活字離れとも言われます。

一方SNSなど短いメッセージを使ったコミュニケーションは増えており、顔も知らない人と文字だけでコミュニケーションを取るのですから、読解力の重要性は高くなっています。

子どもの時から本をよく読み、「自分は読解力に自信がある!」という人は、今回紹介したようなトレーニングを改めてする必要はないかもしれません。

しかし普段から、自分の意志が上手く伝えられない、上司や会社とうまくコミュニケーションが取れない、仕事が上手くいかない、SNSやネットでうまくメッセージが送れないという人は、少しの心がけで読解力が改善し、仕事や生活が快適になるケースもあります。

読解力に不安がある人は、ぜひここに書いてあることを試してくださいね。