ワーキングプアとは? 5人に1人 が「年収200万円以下」の現状と対策

マジメに働いているのに、貯金はおろか生きていくのがやっと…。

今、日本ではワーキングプアが社会的な問題となっています。世の多くの労働者と同じように、きちんと働いているにも関わらず、ギリギリの生活をしている人がいます。

ワーキングプアは非正規雇用の労働者に多いと言われていますが、正社員であっても離職をきっかけにワーキングプアになってしまうこともあります。

この問題が深刻なのは、一度ワーキングプアになってしまうと、なかなか負のループから抜け出せないことです。

この記事では、ワーキングプアの意味や以下のことをお伝えします。

  • ワーキングプアになりやすい仕事の共通点
  • 国が取り組んでいるワーキングプア対策
  • ・ワーキングプアからの脱出方法

本記事を読み、ワーキングプアに対する知識を深め、将来に向けた賢明な行動をとるためにぜひ役立ててください。

ワーキングプアとは、一般に年収200万円以下の労働者のこと

ワーキングプアとは1980年頃からアメリカで使われ始めた言葉で「働いている貧困層」という意味になります。

「実際に働いているけど、収入も低く苦しい生活を強いられている人達」のことです。

ワーキングプアに明確な定義はありませんが、一般的には「年収200万円以下の人」を指すことが多いようです。

国税庁の調査によると、令和元年の給与所得者において年収200万円以下の人の割合は22.9%でした。

つまり、給与所得者の“約5人に1人” が年収200万円以下になります。

参考:民間給与実態統計調査

ワーキングプアになりやすい仕事の共通点とは

さきほど、ワーキングプアは一般的に「年収200万円以下の人」とお伝えしましたが、ワーキングプアになりやすい仕事には、ある共通点があります。

その共通点とは、下記のどちらか一方、もしくは両方の条件があてはまるものです。

誰にでもできて、代わりのきく仕事

誰にでもできて代わりのきく仕事は、高い付加価値を生み出すことにつながりにくく、時給が低くなりがちです。

代表的なのが軽作業の肉体労働で、ハードな作業を要求されることはあっても、高度な専門知識を要求されることはありません。つまり、体力さえあれば誰にでもできると思われがちな仕事です。

全ての仕事がそうだとは言い切れませんが、一例としては、仕分け作業、シール貼り、レジ打ち、食品製造、清掃業などが挙げられます。

上記の仕事では、高付加価値を生み出すスキルを身につけにくいため、注意が必要です。

やりがいがあっても、収入の相場が低い仕事

やりがいはあっても、収入の相場が低い仕事も注意が必要です。なぜなら、その仕事にやりがいを感じているため収入が低くても、その仕事を続けてしまいがちだからです。

たとえば、非正規の官公庁の仕事などがあげられます。

非正規雇用での官公庁の仕事は、多くの自治体がコスト削減に取り組んでいるため、賃金が低めに設定されているケースが目立ちます。

ニューズウィーク(日本版)によると、非正規公務員の7割が、年収200万円未満となっています。

参考:フルタイムでもワーキングプア……非正規公務員の7割が年収200万円未満

非正規公務員は公的な仕事なので、非正規とはいえ「安定・やりがい」といった面でいいイメージを持ちやすいですよね。しかし、収入面での実態はイメージとかけ離れています。

フルタイムで働いていても年収が200万を下回ることがあるため「官製ワーキングプア」と言われています。

日本でワーキングプアが増え始めたきっかけは “バブル崩壊”

ここまでワーキングプアの意味や、ワーキングプアになりやすい仕事の共通点などを紹介してきましたが、日本で​​ワーキングプアが増え始めたきっかけは、1990年代のバブルの崩壊といわれています。

1980年代、好景気で企業は正社員を大量に雇っていました。しかし、バブルが崩壊すると、多くの企業が生き残りをかけて人材コストの削減をおこないました。

その結果、当時の多くの若年層が正規雇用で就職できなくなったり、人材コストの安い非正規雇用の労働者(アルバイト・パート・契約社員・派遣社員・嘱託など)が増えたりしました。

同時期には、リストラもおこなわれましたが、企業にとって正社員を解雇するよりも新卒採用を見合わせた方がラクなので、当時の多くの若年層が犠牲となりました。

バブル崩壊の犠牲者となった “1970年代生まれの若年層”

さきほどお伝えしたように、バブルが崩壊後の約10年間は就職したくてもできない若者が増え、このころに社会に出るタイミングを迎えた1970年代生まれが主に犠牲になりました。

当時、求職者1人あたりに対して、どれくらいの求人があるかを示す求人倍率は、大卒では1990年の2.77から、2000年には0.99まで下がり、高卒では1990 年の 2.57 から 2003年の 1.21 まで下がっています。

雇用形態の割合を表すデータを見ても、当時、全体に占める非正規雇用割合の増加は著しく、1995年の12.9%から、2005年の 34.6%まで増加しています。 

当時のバブル崩壊後の就職難の時期は「就職氷河期」といわれています。

参考 厚生労働白書

非正規労働がワーキングプアになりやすい3つの理由

ここまで、非正規雇用が増えた背景についてお話してきました。このような理由で非正規労働が増えるにしたがって「ワーキングプア」という言葉が聞かれるようになってきました。
では、なぜ非正規労働がワーキングプアになりやすいのでしょうか。ここからは、その3つの理由について解説していきます。

理由1:年収で300万円以上もの格差があるから

一番わかりやすいのが、正規雇用と非正規雇用の収入面の格差です。

先述の国税庁の調査によれば、非正規雇用の労働者の平均年収は約175万円(令和元年)で、ワーキングプアの基準の1つとされる200万円を割り込んでいます。

それに対し、令和元年の正規雇用の平均年収は約503万円となっており、非正規雇用とは年収ベースで300万円以上の開きがあります。

また、非正規雇用の男女別で見た場合は、男性が約226万円、女性が約152万円となっています。男性と女性では、70万円以上の大きな開きとなっています。

もちろん、主婦が家計の足しにするために、非正規雇用で働いているケースもあるので、収入が200万円以下だからといっても、かならずしもワーキングプアに該当するわけではありません。

しかし、非正規雇用を望んでいない人にとって、このような大きな収入格差は、ただのワーキングプアの元凶でしかありません。

理由2:非正規雇用では代替可能なスキルしか身につけられないから

2つ目の理由として、代替可能なスキルしか身につけられない点が挙げられます。

なぜ、代替可能なスキルしか身につけられないかというと、非正規雇用での採用は企業の人材コストの削減のために行われるからです。

これは言いかえると、人件費のかかるポジション、つまり重要なポジションには、つけないということです。

たとえば、非正規雇用では「管理職になってマネジメント業務に携わる」といったことは、できません。

また、代替可能だから、自分より安い給料で働く若い人や外国人に仕事を奪われやすいのです。

理由3:一度非正規雇用になると抜け出しにくい構造があるから

非正規雇用から正社員になるにはハードルが高く、なかなか抜け出すこともできないのが現実です。

また、非正規労働になれきってしまうと、そこに居心地の良さを感じてしまい、いたずらに年をとってしまう可能性があります。

その結果どうなってしまうかというと、あるタイミングで正社員になるために転職活動をしても、相当苦戦することが予想されます。年齢とともに、転職市場のハードルも上がっていくからです。

「この状況から抜け出したくても、転職も厳しいから、非正規の仕事を続けるしかない…」

こうなってしまうと、まさに負のループです。

ここまで非正規労働が、ワーキングプアになりやすい3つの理由について説明してきましたが、とくに厳しい状況に追い込まれているのが、次に紹介するシングルマザーのケースです。

シングルマザーは、圧倒的に不利な状況

ワーキングプアになりやすいという点で圧倒的に不利なのが、シングルマザーです。なぜなら彼女たちは「子育て」という大きな制約を抱えているからです。

たとえば、求職活動をするにしても、面接官に「子供が体調崩したら、急に仕事を休みそうだな」と判断され、採用に不利になる可能性があります。

そのためシングルマザーは、時給が低くても子育てのための融通がきくのであれば、「仕事があるだけまだマシ」となってしまいがちです。

なにか市場価値のあるスキルを持っていないかぎり、「収入もよくて、子育てもしやすい、時間の融通が利く」仕事にありつくことは、きわめて難しいでしょう。

また、少しでも収入のいい仕事をするために、何かスキルを獲得するにしても、仕事と子育てと勉強を両立させなければいけません。

以上のことをふまえると、シングルマザーはワーキングプアになりやすいという点で、圧倒的に不利な立場にいるということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

ワーキングプア問題への対策や取り組み

ここまで、ワーキングプア問題の背景や原因について説明してきましたが、国はワーキングプア問題にどのように取り組んでいるのでしょうか。

ここからは、現在、国が取っている対策や検討中の案についてご紹介します。現在自分がワーキングプアだと思われる方は、利用できそうなものがあれば、ぜひ調べてみてくださいね。

求職者支援制度

厚生労働省がハローワークを窓口として行っているのが、求職者支援制度です。

失業中でなくても、パートなどで収入が少ないなど、一定の条件を満たせば、月10万円の給付金を受けながらスキルを身につけることができるシステムです。

訓練コースの中には、基礎的なパソコンスキルだけではなく、営業、IT系、医療事務、デザイン、広告系などがあります。

本来であれば、こうした講座やスクールに通えば、それなりのお金がかかりますが、求職者支援制度であれば給付金をもらいながら、スキルまで身につけられます。

スキルを身につけて、ワーキングプアを脱出したい人は、ぜひ活用を検討してみるべきでしょう。

子育て支援

さきほど、シングルマザーの厳しい状況についてお話しましたが、シングルマザーや子育て世帯へ対して、行政や会社の福利厚生の支援策があります。

たとえば、パートであっても産休や育児休暇をとることができます。出産を理由とする安易な離職は、ワーキングプアにつながりかねないので、ぜひ活用を検討してみてください。

代表的な支援策を以下にご紹介します。

子ども・子育て支援新制度
2019年10月よりスタートしたのが、「子ども・子育て支援新制度」です。「子ども・子育て支援新制度」認定のこども園や、保育所であれば、3〜5歳児の利用料は無償になります。

また、住民税が非課税の世帯の場合は、0〜2歳児の利用料も無償となります。

自分の住んでいる自治体によって、料金やサービスが少し異なるため、お住まいの自治体のホームページなどから問い合わせてみましょう。

育児休業給付金
正社員、パートを問わずに育児給付金を受け取ることができます。ただし、会社で働いていて復職することと、雇用保険に加入していることが条件となります。

支給額は、休業前賃金の67%相当額となります。(育休開始から6ヵ月が過ぎたら50%)

会社への書類提出や、ハローワークでの手続きが必要です。

ベーシックインカム

ベーシックインカムとは、国民一律にお金を給付しようというシステムで、導入に向けて議論がなされています。

自由に使えるお金が手に入るのが、ベーシックインカムのメリットですが、財源の問題や、世界各地からベーシックインカムをもとめて難民が押し寄せてくる可能性も指摘されており、まだまだ議論が必要といえそうです。

生活保護

ワーキングプアの最終的なセーフティネットとなるのが、生活保護です。生活保護というと、何らかの事情で働けない人を対象としたイメージがありますよね。

しかし、働いていても世帯収入ベースで年収が156万以下の場合は、生活保護を受給できる可能性があります。

そのかわり、生活保護を受給するには、手持ちの財産の制限があります。また自治体によって受給条件がことなるため、注意が必要です。

生活保護の相談や申請をしたい場合は、自分の住んでいる場所を担当している「福祉事務所の生活保護課」が窓口になります。

生活保護課では、自分の子どもの進学相談などにも乗ってもらえるので、何か困ったときは、1人で悩まずに、まずこちらで相談してみてくださいね。

ワーキングプアからの脱出方法

さきほど、最終的なセーフティネットとして生活保護が存在することをお伝えしました。

しかし、多くの人は収入が厳しい状況でも、しっかりと自立していきたいのではないでしょうか。

ここからはそういった方のために、ワーキングプアからの脱出方法や、ワーキングプアにならないための方法についてご紹介します。

転職をする

まずご紹介したいのが転職です。状況を変えるには一番手っ取り早い方法ともいえます。

しかし、あなたが現在「誰にでもできて代わりのきく仕事をしている」のなら「同業種への転職」は、問題の本質的な解決にはならないかもしれません。

もしそこで正規雇用で採用され、多少収入が上がったとしても100万円単位の収入の増加はなかなか見込めないからです。

待遇面でより良い条件を獲得するためには、他業種への転職も1つの方法です。他業種も検討したい場合は、以下の記事をぜひ参考にしてください。

※ご参考:あの仕事に転職するには何のスキルが必要?求人情報で求められてるスキルをまとめました。 | NobyNoby(ノビノビ)

転職活動は、誰しもが不安になるものです。しっかりと情報収集をして、後悔しないよう少しでも待遇面の良い会社を見つけてみてくださいね。

副業をはじめる

次にご紹介したい方法が副業です。現在の仕事をそのまま続けたい人はもちろん、副業で新たなスキルを獲得して、より良い条件で転職したい人にはおすすめの方法です。

(ただし、会社の就業規則と照らし合わせて、副業に問題ないか確認が必要です)

副業を選ぶポイントとして、「本業と両立が可能か」「長期的に見て収入アップにつながるスキルが得られそうか」という点をおさえておくと良いでしょう。

上記の条件を満たしやすいのが、Web系の在宅ワークです。

Web系の在宅ワークであれば、空いた時間を有効利用することができるだけでなく、収入アップに最低限必要だと言われているパソコン系のスキルを身につけることができるからです。

特にWeb関連の仕事は高単価になりやすいのでおすすめです。興味のある方は下記の記事もぜひチェックしてみてくださいね。

副業から始めるWebのお仕事!おすすめの副業やスキル習得方法まで解説

まとめ

一般的には、ワーキングプア一とは生活保護を1つの基準として「年収200万円以下の人」を指すことが多いようです。

非正規雇用がワーキングプアにつながりすい理由として、以下の点があげられます。

  • 非正規雇用の労働者はコスト削減の対象であり、平均年収も約175万円と低い
  • 非正規雇用で身につくのは、代替可能なスキル
  • 「収入が低い → スキルに投資できない負のループ」に追い込まれる

とくに厳しい立場なのが子育てと仕事を両立しなければいけないシングルマザーです。

そのため、国は対策として、シングルマザーをはじめとした子育て世帯に対して、保育園の無償化や、育児休業給付金などの子育て支援を行っています。

また、ワーキングプアのため転職ができずに悩んでいる人に対しても、給付金もらいながら、スキルを身につけられる求職者支援があるので、上手に活用してみるといいでしょう。

もしあなたが、低い収入に悩んでいるのであれば、求職者支援制度を利用できないか検討したり、転職活動や副業を検討したりしてみてくださいね。