失業保険は、独立してももらえる!副業をしている人もかしこく受給できる方法

会社員として働いているけど、退職してフリーランスとして独立したい、と考えている人もいるのではないでしょうか。

そこで、気になるのが失業保険です。
できれば失業保険をもらいながら起業の準備をしたいものですよね。

実は、所定の要件をクリアさえすれば、個人事業主として開業する人であっても、失業保険を受け取ることができます。

しかし、所定の要件を満たさなかったり、手続きの順番を間違えたりすると、失業保険やその他の手当が受け取れなくなってしまうので注意が必要です。

また雇用保険関連の制度は変更される場合もあるので、実際に利用する際にはハローワークなどで最新の情報を確認してください。

ぜひ本記事を読んで、失業保険の受け取り損を防ぐとともに、独立するためのいいスタートを踏み出せるようになってください。

失業保険とは退職したときに受給できる給付金のこと

失業保険とは、会社都合や自己都合で退職したときに雇用保険の手当として受給することができる制度のことです。

失業時に受け取ることのできる手当には、さまざまなものがありますが、それらを総称して正しくは「失業等給付」といいます。

失業等給付のうち、退職して独立する人がおさえておくと良いのは、以下の3つです。

  • 基本手当(失業者が受けるいわゆる失業保険)
  • 再就職手当(早期就職した人が受ける手当)
  • 職業訓練の受講手当(職業訓練で受ける手当)

これらの手当を受給するためには、退職する前に雇用保険に加入していることが前提条件となります。

また、必要な雇用保険への加入期間は会社都合か自己都合でことなります。受給資格や受給の仕方について、詳しくはこちらの記事をご参照ください。

失業保険の自己都合と会社都合はどう違うのか? 知らずに手続きすると後悔する理由

独立する時でも失業保険を受け取ることは可能

はじめにお伝えしたとおり、独立を目指す場合でも失業保険などを受給することができます。

基本的に、他の求職者と同じように所定の活動をおこなっていれば、問題なく受け取ることができます。

求職活動することが前提条件

基本的には失業保険の制度は、倒産などによる緊急のケースをのぞいて、退職者の早期の再就職を促すためのものとなっています。

そのため、失業保険や再就職手当のどちらかを受給するにしても求職活動をすることが、受給するための必須要件です。

「求職活動をするということは、起業する人は受給対象外なのでは?」と思われた方もいるかもしれませんが、ご安心ください。

そちらについては、のちほど「起業する人に便利なのが、まとめて受け取れる再就職手当」で詳しく解説します。

独立を目指す人がやりがちな、失業保険をもらえなくなるケース

ここからは、個人事業主やフリーランスとして独立を目指す人が、失業保険などを受け取れなくなってしまうケースを紹介します。

特に失敗しがちなケースは以下の3つです。

  • 退職後にいきなり開業届を出してしまう
  • 在職中から副業をやり、離職してからも副業を続ける
  • 求職活動を行わずにフリーランスとしての起業準備に専念する

では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

退職後にいきなり開業届を出してしまう

起業を目指している人でもっともやりがちなのが、会社をやめてすぐに開業届を出してしまうケースです。

起業に向けて気がはやるのは当然かもしれません。ですが、制度上いきなり開業届を出してしまうと失業保険などがもらえなくなってしまうので注意しましょう。

開業届を提出するタイミングは、自己都合の場合、最短でも7日間の待期期間を過ぎたのち、そこからさらに1ヶ月たってからにしなくてはいけません。

求職活動を行わずに起業準備に専念する

求職活動を行わずに起業の準備だけに専念していて、失業保険などを受け取った場合は、不正受給とみなされます。

起業の準備に該当する主な例としては、開業届の提出をしたり、店舗の賃貸契約をしたりすることなどがあげられます。

ですので、可能な範囲内で起業に関する情報を集めながら、求職活動をしておくといいでしょう。

記事の後半で求職活動の方法についてもくわしく解説していますので、そちらもご参考ください。

在職中から副業をやり、退職してからも副業を続ける

退職後に独立を目指す場合、会社に在職中から何かしら副業をやっている人もいると思います。

ここで気をつけなければいけないのは、失業保険などを受給するためには、いったん副業をストップしなくてはいけないということです。

なぜなら、待期期間の7日間は失業中であることを証明するための期間として、アルバイトもしてはいけないことになっているからです。

ただ、退職前から安定的に仕事の依頼を受けているのであれば、いったん副業をストップするべきなのか、続けるべきなのかは、独立後をみすえたうえで、総合的に判断するといいでしょう。

起業する人に便利なのが、まとめて受け取れる再就職手当

さきほどもお伝えしたとおり、失業保険を受給するためにはいくつかの制約があります。

受給できたとしても月ごとの失業給付で、手持ちの資金が少しずつ減ってしまうようなことは、できるだけ避けたいですよね。

そこでご紹介したいのが、離職後にできるだけ早く事業を開始したい人にとって便利な「再就職手当」です。

再就職手当は、退職して失業保険の受給資格のある人が早期に再就職した場合に、失業保険の残日数分の60〜70%程度のまとまった給付がもらえる手当のことです。

起業で事業を開始した人であっても、再就職手当の受給は制度上可能なので、独立にめどがつく人は活用を検討したいところです。

参考:再就職手当のご案内

再就職手当を受給するための3つの要件

では、ここから再就職手当を受給するための要件について解説していきます。

再就職手当を受給するためには、以下の3つの要件が必要です。

  • 失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
  • (自己都合の場合)待期期間の7日 + 1ヶ月が経過した後に事業を開始する
  • 事業の開始により、自立することができると認められること

では、それぞれ順に見ていきましょう。

失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上ある

再就職手当を受給するためには、失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分1以上あることが必須です。

例えば、自己都合退職で失業保険の所定給付日数が90日だとしましょう。
90日の3分の1は30日なので、60日以上失業保険を受け取ってしまうと、再就職手当の受給資格はなくなります。

所定給付日数は、退職者によってそれぞれ違います。
たとえば、35歳未満の場合、自己都合退職で雇用保険の加入期間が1年以上10年未満であれば「90日」、10年以上20年未満で「120日」となります。

詳しくは以下の記事をご参考ください。

失業保険の自己都合と会社都合はどう違うのか? 知らずに手続きすると後悔する理由

待期期間 + 1ヶ月が経過した後に事業を開始する

事業の開始時期は、自己都合の場合「待期期間の7日 +1ヶ月」が経過した後にしましょう。

経過後はハローワークへ行って開業することを申告し、税務署には開業届を提出すればOKです。

くれぐれも、再就職手当を受給する場合は、待期期間を過ぎてすぐに事業を開始しないように気をつけてくださいね。

事業の開始により自立することができると認められること

独立する人が再就職手当を受給するためには、独立したあと「しっかり事業として自立している」と認められる必要があります。

少しハードルが高いと感じた人もいるかもしれませんが、ハローワークによっては、継続的に発生している事業経費の領収書でも、自立と認められるケースがあるようです。

数ヶ月にわたって売上を証明する入金記録などがあれば、まったく問題ないでしょう。詳しくは、管轄のハローワークに聞いてみましょう。

独立したい人が再就職手当をもらうための7ステップ

では、再就職手当をもらうための7ステップを以下にまとめてみました。さきほどお伝えした受給要件と合わせてご確認してみてくださいね。

  1. ハローワークに行き、失業認定を受ける
  2. 7日間の待期期間 + 1ヶ月の求職活動
  3. ハローワークに開業することを報告
  4. 税務署に開業届を出す
  5. ハローワークに再就職手当の申請
  6. 事業が継続しそうか審査
  7. 振込

上記の7ステップのうち、特におさえておきたいのが、2. で出てくる求職活動です。

なぜかというと、求職活動は独立を目指す人であっても、再就職手当や失業保険を受け取るために、必ず行わないといけないことになっているからです。

ではここから、「求職活動」について、もう少し詳しく解説していきます。

求職活動の実績になる5つのケース

再就職手当や失業保険を受給するためには、4週間に1回の失業認定日にハローワークに行って、求職活動の実績を報告しなければいけないことになっています。

当然ですが、起業準備に関することは求職活動の実績として認められていません。
また、求職活動の実績の回数ですが、初回の認定日に関しては1回、以降は最低2回以上となっています。

では、ここから実績になる求職活動の事例についていくつか紹介していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

①初回講習

ハローワークで初めて受ける初回講習も求職活動の実績になります。

最初の認定日については求職活動を行っていなくても、初回講習さえ受けていれば失業状態と認定されます。

つまり、「待期期間の7日 + 1ヶ月」を過ぎたのち、すぐ起業すれば、実質求職活動せずに、再就職手当を受け取ることも可能です。
もちろん、起業するタイミングは慎重に判断してからにしましょう。

②ハローワークでの求人応募か職業相談

主に再就職する人が使う方法です。ハローワークで求人に応募したり、職業相談したりすると実績になります。

③ハローワーク主催のセミナー

ハローワーク主催のセミナー受講も求職活動の実績になります。

セミナーが定期的に開催されるとは限りませんので、セミナーの日程をかならず事前に確認しておくようにしましょう。

④転職に関係するオンラインセミナー

転職に関係するオンラインセミナーも求職活動の実績になります。オンラインであれば、自宅から受けられるので非常に便利です。

ただし、求職活動の実績にするには、セミナーの参加証などが必要です。セミナーへの参加証がもらえるかどうか、事前に確認しましょう。

以下のようなサイトからチェックするといいでしょう。

転職セミナー・フェア・イベント情報|転職のリクルートエージェント

⑤職業訓練所への参加

失業保険や再就職手当の受給資格のある人であれば、無料で参加できるのが職業訓練所です。

職業訓練所に参加した場合、求職活動の実績になります。また、失業認定日に行く必要もありません。

また、地域ごとによって職業訓練所で開講しているクラスや開講時期がことなりますので、気になった人は管轄のハローワークのHPなどで調べてみましょう。

失業保険を満額もらった方が受給額は大きい

ここまで、再就職手当についてお話してきました。さて、結局のところ、再就職手当と失業保険では受給金額はどちらが大きいのでしょうか。

結論からいうと、失業保険を満額受け取ったほうが受給金額は大きくなります。再就職手当の場合、受給額は最大でも失業保険の60〜70%程度だからです。

ただし、独立する人の場合は、クライアントから仕事を獲得していくことが何より重要になってきますので、一概にどちらが得とはいえません。

たとえば、優良なクライアントから継続案件の依頼があった場合、失業保険を優先してそれを断るのは得策ではないといえるからです。

スキルにまだ自信がなく、起業にゆっくり時間をかけたい人は、失業保険を満額もらうのも1つの方法です。

不正受給をすると「3倍返し」のペナルティ

ルールにのっとってさえいれば、問題なく失業保険を受け取ることができます。
しかし、ルールに違反して失業保険などを受け取った場合は不正受給に該当し、不正受給をした人には、ペナルティが発生します。

これは「3倍返し」と言われるもので、文字通り受け取った金額の約3倍に相当する額を返金しなくてはいけません。

悪質なケースと判断された場合、詐欺罪として刑事告訴される可能性もあるので、絶対にしないようにしましょう。

不正受給に該当するケース

では、不正受給に該当するケースを以下にご紹介します。それは以下のようなケースです。

  • 求職活動の実績について内容を偽った場合
  • 実際には行っていないはずの求職活動を実績として記した場合
  • 内職やアルバイト、または事業を始めたにもかかわらず申告をしなかった場合

きちんとルールを守ってさえいれば、何も問題なく失業保険や再就職手当を受給できるので、不正受給だけは絶対にしないようにしましょう。

参考:ハローワークインターネットサービス – 不正受給の典型例

まとめ

独立をめざす人であっても、失業保険や再就職手当を受給することができます。

しかし、開業届をすぐに出してしまったり、失業中に求職活動を行わない場合は、失業保険などを受給することができません。

また不正受給が発覚した場合は、3倍返しと呼ばれるペナルティがあるので、失業中に収入があった場合は、すみやかにハローワークに報告するようにしましょう。

自己都合退職の場合、失業保険を受給までに約3ヶ月の日数がかかるので、ある程度の蓄えがあるのが理想です。

クラウドソーシングなどの副業は、ハローワークによって対応がわかれますので、確認してみるといいでしょう。

まだ独立に自信がない人は、失業保険を受給しながら、職業訓練を受けてスキルを高めながら失業保険を満額受給する方法もおすすめです。

また、独立をするということは、仕事の獲得がなにより重要になります。失業保険の受給ありきではなく、ビジネスチャンスが訪れれば、それに飛びつく姿勢も大事です。