ハラスメントとは?加害者にならないために知っておくべきポイントを解説

近年、職場における「ハラスメント」が問題になるケースが増えてきています。

従来なら立場の弱い人が我慢するしかなかったものが表面化してきたという意味では良いこととも言えます。しかし一方で「自分は大丈夫」と思っている人でも、知らず知らずハラスメント加害者になり、相手の人生や自分の人生にも傷をつけてしまう可能性があります。

そのような事態を招かないためにビジネスパーソンが知っておくべきハラスメントのポイントをまとめました。

ハラスメントとは

相手が嫌だと思ったらハラスメント

ハラスメントとは相手に対して行われる「嫌がらせ」のことです。
パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシャルハラスメント)などが知られていますが、それ以外にも様々なハラスメントが問題になっています。

また「何をもってハラスメントとするか」についてですが、相手が不快に感じれば、その行為は嫌がらせ・ハラスメントとなります。

つまり、その行為がAさんにとっては不快でなくてもBさんにとっては嫌がらせになる場合もあり、基準が人によって違うのです。

このようにハラスメントになるかどうかは受け手によって決まります。
加害者も自分が「ハラスメントをしている」いう自覚がなく、申し立てられて突然のことに驚くケースも多くあります。

犯罪、また賠償請求の対象になることも

ハラスメントやいじめというと軽い言葉のように感じますが、その印象とは別にハラスメントは内容によっては刑法犯、また民事上の損害賠償の対称になることがあります。

また対応によっては、加害者本人だけでなく企業が管理責任を問われ損害賠償を請求されたり、事実が明るみに出ることで社会的制裁を受けたりすることもあります。

ハラスメントの種類

ハラスメントの種類はたくさんありますが、今回は職場で問題になりやすい8つについて特徴と注意点を記載します。

1. パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメントとは厚生労働省の定義によると、
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」をいいます。

簡単に言うと上司と部下、先輩と後輩というように、職場での上下関係や権力を利用した嫌がらせのことです。

ただしこの「職場での優位性」には単に「職務上の地位」の上下だけでなく人間関係や経験などの優位性も含まれます。例えば中途入社してきた管理職を、古参の平社員がいびり倒すという場合もパワハラと言えるでしょう。

また職場の上下関係においては業務上指示や指導をする必要があります。それが上司の職位・職能に応じて「業務の適正な範囲内」であればパワーハラスメントにはあたりません。

パワハラはさらに6つの行動類型に分けられています。(これに当てはまらないからパワハラではないというわけではありません)

「身体的な攻撃」・・・突き飛ばす、殴る、ものに当たる
「精神的な攻撃」・・・嘲笑する、他の人の前で叱責する
「人間関係からの切り離し」・・・飲み会や必要なミーティングに呼ばない、無視する
「過大な要求」・・・こなしきれない業務量を強いる、時間外労働を強要する
「過小な要求」・・・能力に合った仕事を与えない、まったく仕事を与えない
「個の侵害」・・・プライベートの時間に連絡する、飲み会に強制的に参加させる

難しいのは自分は強制したつもりはなくても、相手がそう思ってしまうケースがあるという事です。

プライベートでも部下を可愛がる良い上司のつもりだった。
→部下にとっては休日も呼び出しに応じることを強いられたと感じた。

成長を期待していたので多くの仕事を任せていた。
→業務時間内にはとても終わらない仕事を、自分だけ長期間負わされて健康を害した。

このようなボタンの掛け違えにはくれぐれも注意が必要です。

2. モラルハラスメント(モラハラ)

モラルハラスメントとは、肉体的ではなく言葉や態度等によって継続的に行われる、精神的な暴力、嫌がらせのことです。

具体的には、相手を貶める言動をしたり、無視したり、威嚇したり、嫌み・皮肉・陰口を言うなどの嫌がらせをすることなどが当てはまります。

パワハラと重複する部分もありますが、モラハラの場合より範囲が広く特に職務上の人間関係を利用して行われていることは条件になりません。

そのため、モラハラは職場だけでなく家庭内でも問題になることがあります。

3. セクシャルハラスメント(セクハラ)

セクシャルハラスメントとは、相手の意に反する性的言動によって、働く上で不利益を被ったり、性的な言動によって就業環境が妨げられたりすることを言います。

セクシャルハラスメントの事例としては、以下のようなものがあります。

  • スリーサイズを聞かれた。
  • 酔っぱらった社員に抱きつかれ体を触られた。
  • 上司から性的な関係を強要され、拒否したために減給された。
  • 人事考課などを条件に性的な関係を求められた。
  • 職場内での性的な発言に対し抗議したら、配置転換された。
  • 性的な好みで雇用上の待遇に差をつけられた。
  • 職場内で他の社員が性的な話題をしばしば口にしている。
  • 恋愛経験を執ように尋ねられた。
  • 宴会で男性に裸踊りを強要された。
  • 用事もないのにチャットを送ってくる。
  • ビデオミーティングで部屋や着ている服を見せろなどという。
  • 異性関係の噂を意図的に流された。

セクハラというと「男性から女性に対して行われる」というイメージがありますが、女性から男性に、また同性同士でもセクハラになる可能性があることに注意が必要です。

またこれらの行為は、行加害者に対して刑法上の強制わいせつや脅迫の罪などが問われる可能性があり、民法上では加害者、また使用者としての企業に賠償責任が問われる可能性があります。

4. ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントとは、男らしく、女らしくなど社会通念上の性区別をもとに、個人の行動や言動に対して圧力をかけることです。

例えば、女性に対して男性の補佐的な仕事しかさせない、女性の年齢に応じて接し方を変える、「女のくせに」というような言動を取る事です。

一方で男性には「男なんだから」とプレッシャーをかけ男らしさを強要したり、肉体的に過酷な業務を集中的に担当させたりします。

近年では多様な性自認が受け入れられつつありますが、一方ではLGBTに対するジェンダーハラスメントも問題になっています。差別的な発言で苦痛を与えることも重大なハラスメントと考えられます。

5. マタニティハラスメント(マタハラ)

マタニティハラスメントとは、就業中の女性が妊娠・出産・子育てなどをきっかけに、職場で精神的または肉体的な嫌がらせ、不当な扱いを受けることを言います。

マタハラは労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法にも違反する可能性が高い行為です。

  • 「育休を取得するなら辞めろ」などと発言し制度を利用しづらい環境にされた。
  • 妊娠でお腹や胸が大きくなったことに対し、男性上司から「腹ぼて」「胸が大きくなった」などの言動をされた。
  • 育児休業から復帰しようとしたら、降格・不当な配置転換をされた。
  • 同僚から「仕事が忙しいのに子供なんかつくってうらやましい」などと皮肉を言われた。

6. アルコールハラスメント

アルコールハラスメントとは、飲酒にまつわるハラスメントを指し、具体的には飲酒の強要、一気飲み強要、意図的に酔いつぶす、宴会に酒類以外の飲み物を用意しない、よった上で悪ふざけ・暴言・セクハラなどを働くことなどを意味します。

酒が飲めない体質にも関わらず、上司のすすめる酒を飲み続けた結果、急性アルコール中毒になり命の危険を生ずる可能性もあります。

ハラスメントの中でも、直接生命に影響する危険なハラスメントです。

7. セカンドハラスメント

セカンドハラスメントとは、ここにあるようなハラスメントを社内で訴えたことによって、ハラスメント被害者が二次的被害を受けることです。

  • 長時間労働を相談したら、「根性がない」「昔はもっと大変だった」と言われた。
  • セクハラの相談をしたのに「自分が誘ったのでは」という言い方をされた。

気づかれず放置されがちなセカンドハラスメントですが、被害者のメンタルをさらに傷つけ、またハラスメントを言い出しにくい職場になることでその他の社員の離職などにもつながります。

8. カスタマーハラスメント

ハラスメントが行われるのは社内の人間関係だけとは限りません。

「カスタマーハラスメント」とは、消費者・顧客の立場を利用して、企業や社員に理不尽な要求や謝罪を強要することです。このような消費者を「クレーマー」とも呼びます。

  • 些細なミスに対して不当な金銭要求をする、代金の支払いを拒否する。
  • 数時間に渡り居座るなど従業員を長時間拘束し、土下座などを要求する。
  • 事実とは異なる内容をSNSで拡散する。
  • 誠意と称して金品を要求する
  • 従業員に暴言を言う、恐喝する

ハラスメントを受けた場合の対応

ハラスメントを受けた場合、我慢したり、無視したり、受け流しているだけでは根本的な解決にならない場合が多いです。

まず、身近で信頼できる人に相談しましょう。
そこで解決することが困難な場合には、社内の相談窓口に申し出るなどの方法を考えます。

それでも満足いく対応が得られなかった場合には、弁護士や担当行政などへの相談も可能です。

相談する時のために、できるだけハラスメントを受けた日時や内容について詳しく記録しておきましょう。

自分自身が被害にあっていない人も、周囲で被害にあっている場面を見かけたら、行為者に対し注意をうながすか、相談窓口等に助力を求めましょう。

理解することで健全な社内コミュニケーションができる

ハラスメントの種類は増加しており、一部には「何でもハラスメントと言いすぎ」「昔はこんなこと問題にならなかった」という意見もあります。

しかし、冒頭にも言ったように従来なら被害者が沈黙するしかなかったことについて、多くの人が声を上げられるようになったともいえます。

ハラスメントについては「自分がどう思うのかではなく、相手が不快に思ったらハラスメント」という定義を理解し、相手の心情について思いやり理解しようとする姿勢を大切にしましょう。

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