現代は転職することがかなり一般的な社会になりました。転職経験のある人は珍しくなく、新卒で入社する際もその後の転職を見越して就職先を決めるのが普通です。
しかし実際に転職するとなると、どのような考え方で臨むべきなのか、明確に答えられる人はいないのではないでしょうか。自分はいつどこに転職するべきか、何を基準に転職先を考えたらいいのか、そもそも本当に転職が正解なのだろうか…多くの人が手探り状態で転職活動をしているのが現状です。
今回はそんな転職活動に対して、「転職を成功させるための基準や思考法がわかる!」「仕事観が変わった」と評判の書籍「転職の思考法」を紹介します。転職をする前に考えるべきことから、転職を成功させるために知っておくべきことまで書かれている中で特に重要なポイントをまとめて紹介します。
目次
誰も正しい方法を教えてくれないから「思考法」が必要
新卒で会社に入って数年経ち、学生時代にはわからなかった社会の現実を感じると、誰でも「このまま今の会社にいていいのか?」と感じることがあるのではないでしょうか。
一緒に働く人たちのキャリアや会社の業績など自分の進む道の先が見え、もう一度自分のキャリアについて考えるタイミングが来るはずです
そんな時、何を考えれば自分にとって一番良い道を選べるのでしょうか。
考えないといけないことはたくさんある、でも何をどう考えれば正しい判断ができるのかわからない。自分自身で決めなければいけないのに、決め方がわからなくて先送りにしてしまったり、転職しても失敗に終わってしまう…
転職の体験記などは今ではたくさんネットで見ることができますが、実際転職のケースは自分に似ている人でもあまり参考になりません。その人のスキルや経験、家庭や社会の状況など人によってやはり違ってしまうからです。
そんななかでこの本が伝えたいのは、「転職に関する思考法」だと言います。
つまり「こういう時はこうするのが正解です」という答えではなく、自分で考えるため方法なのです。
この本を読めば、今の会社を辞めるべきかもう少し頑張るべきか、何を考えて考えて仕事をしていくべきかなどの重要な判断について、人任せにせず、また直感や感情で決めてしまうことなく、自分自身で成功確率の高い転職判断ができるようになるでしょう。
1人のサラリーマンの物語から転職の思考法を学ぶ
この本は、ある平凡なサラリーマンが「転職の思考法」を身につけ、転職を果たすまでのストーリーになっています。
さまざまなエピソードを通じて、主人公とともに転職にまつわる考え方を学んでいくという方式で、メインは先生として描かれているコンサルタントの黒岩との会話です。
この本で伝えたい内容は「思考法」なので、普通に本にすると抽象的な内容になってしまう可能性があったのではと思います。具体的なエピソードを盛り込んだストーリー形式にすることで抽象的になりがちな所も上手くイメージが伝わるようです。
冒頭にある、
・このままでいいわけがないんだけど、実際にどうしたらいいかわからない
・せっかく苦労して入ったのだから、できれば辞めたくない
・モヤモヤするけど、特にスキルもなく他の会社で活躍できる気がしない
などの主人公の気持ちは多くの人に共感できるでしょう。
主人公に感情移入して読め、ほぼ読みやすい会話文で構成されているので、普段あまり本を読まないという人でも気軽に読めるようになっています。
「一生食える」を確保する4つのステップ
この本のメインテーマはをズバリ言うと、実は「いつでも転職できる」自分になるということです。なので必ずしもすぐに転職することが前提の内容ではありません。
大企業をクビになって人生が詰んでしまうのも、嫌な仕事を辞められずに心身を擦り減らしてしまうのも、自分が「いつでも転職できる」状態ではないからであり、本当に自由になりたいならその状態を手に入れなけれはいけないという考え方です。
一般的に想像する「いつでも転職できる」人間というのは、スキルが優れていたり実績があったり、人脈が広かったりで自分とはかけ離れた存在だと思いがちですよね。
しかしこの本の主人公である青野は、とくにスキルや経験もないありふれた法人営業担当のサラリーマンです。
ではそんな平凡な人間が「一生食える」「いつでも転職できる」状態になるためには何を考えるべきなのか?それが第一章の内容なので、端的に4つのポイントを紹介します
①自分のスキルを棚卸して市場価値をはかる
どんな物の価値も、他者との相対的な関係で決まります。
いつでも転職できる状態ということは、社内における自分の評価やスキルが優れているだけではなく、それらが世の中からも評価されている状態だということです。
その価値のことを、この本では「マーケットバリュー」という言葉で表現していますが、これはそのまま市場価値であり、マーケットバリューは以下の要素から決まるといいます。
└専門性(マーケティング、プログラミングなどの「職種」)
└経験 (チームを率いた経験)
②人的資産 自分のために動いてくれる人がいるかどうか
③業界の生産性 業界自体の生産性が高いか
まずは今の自分の仕事をこれらの要素にしたがって棚卸しし、自分にあるもの足りないものを見つけ、まずはこの中の少なくとも2つ、最終的に3つを満たすように働くことで、自身のマーケットバリューを高めることができます。
またここで重要なのは、年代によって優先すべき要素が違うことです。
20代は専門性を身につけることを優先するべきで、理由は専門性があることで経験を得るチャンスが増えるからなのです。そう考えると、現在20代でこのままでは専門性が身につかないと感じている人は仕事に変化が必要かもしれません。
特に女性については、20代に専門性を身につけることで出産や妊娠などのイベントに対して強いキャリアを築くことができるのでおすすめです。
②仕事のライフサイクルから将来を見通す
仕事にもライフサイクルがあり、どんな仕事も生まれてから一定のサイクルを繰り返して消えるという考え方があります。
そのサイクルに照らして自分の仕事が今どの段階にあるか確認しましょう。
もしもうすぐ消える段階にあるなら、最後には仕事を失いたくない人々の足の引っ張り合いが始まるかもしれません。そんな環境では会社も社員ももう成長することができません。
仕事を変える検討が必要になってきます。
③2つの条件から伸びるマーケットを探す
転職先を考える時には絶対に選んではいけない会社の例として、「10年前と全く同じサービスを同じ顧客に売っている会社」が上げられています。
これはドキッとする人が多いのではないでしょうか。いわゆる大企業を選ぼうとするとこの条件に当てはまりやすい気がします、もちろん内部で新しいビジネスを始めていることも多いと思いますが…
進歩のないこのような会社に入っても、代替可能な存在にしかなれずマーケットバリューが上がらないため、転職で選ぶべきではないのです。
では何で企業を選ぶべきなのかというと、伸びるマーケットであることが重要だということです。伸びるマーケットの条件としては以下の条件が役立ちます。
・勢いの強いベンチャーがたくさんあること
・業界の非効率をつく強いロジックがあること
ここで、あるホテルの例(実在はしない)がストーリーに出てくるのですが、客観的に見た「努力をしないことの怖さ」が感じられて本当に怖いです。
倒産が決まったホテルで、何も知らずに雑談をしながら仕事をしている従業員の姿。社長は一生懸命経営を立て直そうとしていたのに、給料をもらうことが当たり前の従業員は努力せず協力的もせず、結局仕事を失うことになるのです。
④伸びるマーケットの中でベストな会社を見極める
伸びるマーケットの中で、自分のマーケットバリューを高めることができ、かつ働きやすく活躍できる会社を探します。
・そのような会社を見つけるためにはマーケットバリューに合っているか
・働きやすさがあるか
・自分に将来的に活躍の可能性があるか
またマーケットバリューが高い人が集まる会社というと「ギスギスしていそう」「競争が激しそう」という印象を持つ人もいると思いますが、実態は逆なようです。
マーケットバリューが高い人が多ければ、そもそもビジネスが上手くいく可能性も高いし、うまくいかなくなった場合にも会社にしがみつこうとはしないために前向きな取り組みができます。
反対にマーケットバリューがない人は、変化を嫌い会社にしがみつこうとして社内政治などを始めるそうです。どちらで働きたいかは一目瞭然ですね。
この第一章には他にも、
・具体的に良いベンチャーを見分ける方法
・転職エージェントのかしこい使い方
などの項目があり、転職の際に考えるべきことややるべきことが詳しく書かれています。
企業やエージェントとのやり取りの場面など、ついやってしまいがちな行動や判断への注意点も参考になると思います。
「転職できる」と思うだけで仕事の成果も上がる
第2章以降は、主人公は転職を本気で考え始め、そのことにより現在の仕事にも前向きに取り組むことができるようになります。
これは「転職が選択肢にある」ことの大きなメリットで、他の会社に行けるなら今の会社の上司の機嫌をとって、自分の心に逆らってまで働く必要はないのです。結果、仕事により主体的に取り組むようになります。
転職を選択肢に持っているというと、勤めている会社の人は良い気はしないかもしれませんが、実は業績にも良い影響を及ぼす可能性が大きいのです。
自分の市場価値を高めることが、長期的に見た転職の「正解」
記事ではメインとなる考えの一部しか紹介していませんが、その他にやりたいことがない時の思考法や、転職すべきタイミングかどうか判断するための思考法なども紹介されています。
これまで自分では確信をもって決めきれなかった、転職で判断すべき内容について、具体的なポイントが書かれているので、自分でやってみることで自信を持てるのではないでしょうか。
ワーク的な内容も多い本なので、実際に自分のマーケットバリューについて、自分の会社についてなどメモしながら進めるといっそう役立つ本だと思います。
平凡なサラリーマンでも使える思考法として、多くの人の役に立つ本だと思いました。
最近もSNSで話題になっていましたが、会社に退職を告げたらそれまで個人的に関係があった人から「あなたは裏切り者だから今後は付き合えない」と言われた人がいたそうです。残念ながら日本ではまだそのような考えの人が多いかもしれません。
(あまり関わらないようにしましょう)
本の中にもあるのですが、
①自分の仕事を失いたくないために変化を許さず会社をつぶす人
②マーケットバリューが高くいつでも転職はできるけど会社を良くしようと頑張る人
どちらが裏切り者でしょうか。
全ての人が高いマーケットバリューを持ち、でも今やっている仕事が好きだからここで働く。
今後はそのような状態が会社にとっても自分にとってもベストだという考えが広まって行くのではないかと感じました。